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フィニの過去2

「あー疲れた……」


 キッチンに立って最初に出てきた言葉はそれだった。1週間ほぼ執務室で地図と睨めっこをし、頭の中でシミュレーションをしていた。そりゃあ疲れる。

 ぶっちゃけ1週間ずっと人を殺すよりもよっぽど疲れる気がする。

 

 暗殺するときは何も考えなくていいし、自分が思うまま体を動かして任務を遂行すればいい。だからこっちの事務作業の方が疲れるかも。


 そんなことを考えながらも夕飯を作って、主様が食べられる状態にする。この屋敷に越してきてまだ数日だがかなり慣れてきた。構造は大体把握したし、いざという時のためのトラップなども仕掛け終わった。……強いて言うなら、住人が未だ2人だけのことぐらいか。


「フィニ、終わった?」


「お、ちょうどできましたよ」


「ありがとうね」


 おそらく音を聞いて駆けつけてきたのだろう。ここだ、というタイミングで降りてきた。


「フィニー、私個人の疑問なんだけどさ、フィニはどうして暗殺者になったの?」


「そうですね……主様のような上官なら、私の軍歴ぐらいすでに見ているのでしょう?」


「一応ね。軍に入ったのは97年前。初期の方から活動は割と活発に活動していたみたいで、入った当初から暗殺者界隈では有名だった。その活躍が認められて70年ほど前から暗殺者を束ねる役職についた。その後は若手の育成や自身の任務を遂行し、今は私つきの護衛となっている」


「そうです。……せっかくなのでお話ししましょうか。あまり無闇に話したくはありませんが、上官に隠すほどの話でもありませんしね。まず初めに、私は今110歳ぐらいなので、入隊したのは13歳ぐらいですね」


「13歳⁈それって結構早い方なんじゃ……」


「まあそうなりますね。というか私は特例で入隊したので入隊試験というものを受けたことがないんですよ。冷静に考えれば、従軍できるのは20歳からなので完全にアウトですよね」


「そうだね…。でもなんでそんな特例で認められたの?」


「私は昔、孤児だったので、とある男に引き取られていたんです。その男は孤児を集める変わり者で、拾ってきた子供にナイフを持たせては人殺しの術を教えていました。子供に殺しを犯させ、盗みを行わせる。自分の手は汚れないんですよね。表面上は孤児を引き取って育てている男ですから。そんな小さな子供に何をさせているんだ、と今になったら思いますが、言っても20人ほどで人殺しをおこなっていたので大人の1人や2人は数の暴力でもみくちゃにできたし、男の命令に逆らえば何が起こるかわからなかったんです。それでも、返り討ちにされる子供は毎回のように居て、多いときは半分以上が死んだ時もあります。そんな中、私はたまたま暗殺者に適性があり運良く生き残り続けました。すごいですよ、周りの子供は大抵3回保てばいい方だったのに、私は10回以上も生き残ったんですから」


「しかし、そんな日も終わりを迎えます。私たちがいつものように殺しを行っていたんですけど、そのタイミングで軍の警察に見つかったんです。そこからは急展開でした。私たち子供は軍に預けられ処遇を待ち、男は逮捕され処刑されました。自由……になったんですかね。私はその時、少なくとも自由になったと感じましたが、それと同時に寂しくもありました」


「寂しい?」


「はい。その時点で既に、私は殺しに対して遊戯的意味を見出していたのです。だからもっと殺しをしたいなーって思ってました。もちろん合法的にですよ?そこから軍の偉い人にお願いして、暗殺者師団に入れてもらいました。私の事情や身体能力は考慮されたんですけど、まあ子供ながらに大人に近い身体能力をしていたので無事に入ることが出来ましたね」


「もしかして、フィニって結構やばい?」


「そんなことないと思いますよ。暗殺者の中には私のように殺しに飢えた者がごく稀にいるので。まあ私のように首を切断して殺す人はあまりいませんが……」


「やっぱりそこはおかしいよね?今までの話から察するに、フィニってその男の元で動いていた時から首を刎ねたりしていたんでしょ」


「さあ?まあ今更誤魔化さなくてもいいんですけど、一応、誤魔化しておきますね」


「それ実質答え言ってるじゃん……」


「あはは。そんな私のことなんてどうでもいいんです。しかし主様。あなたの側にはいつもそのような護衛がいることをお忘れなく」


「やっぱりフィニは、最高の護衛さんだね」



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