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作戦会議

 この屋敷の2階にある執務室。そこは主様の主な仕事場として使うことになった。まあ逆にここを使わなくてどうするんだ、というのは真っ当な意見だが。


 執務室は特に変なものが置いてあるわけではなく、割と暖かい雰囲気を持つ部屋だ。机は少し暗めの材質だが、足や横の細工は明るい雰囲気を醸し出している。暗い材質でも暖かくみえるようにする彫刻師の腕はまさに一流だ。


 私はその執務室の机の隣にある、主様が使うものより一回り小さい机を使うことになった。本当に少し小さいだけなので仕事をするだけなら十分な大きさだ。


 主様は執務机の椅子に近づき、ポフッと可愛らしい音を立てながら座る。


「フィニ、早速私が考えていたプランを説明していくね。基本ベースは前も言ったように村々への奇襲。それが絶対的な基本。だけど、時々大きな都市も滅ぼす。例えるなら土台となる小さなパーツを取っていって、上にある大きなパーツを崩していく。それが一番効率的だし人間にも効く」


「まず最初に攻めてもらうのはアンドレ王国にかなりの領地を接しているヴァルト王国。ヴァルト王国周辺の地図出せる?」


「こちらに」


 棚の中から1枚の地図を取り出し、主様の前に広げる。


「そうだね……まずはここら辺からかな。このアンドレよりちょっと離れた村から」


「なぜですか?最初なんですし安全を取ってアンドレに比較的近い場所から始めた方がいいと思いますが…」


「逆だね。アンドレに近いとかえって危険だ。考えてみてよ。民の意識っていうのは身近じゃないものには向かないんだよ」


「……つまり、アンドレ王国に接しているような地域では元より我々がせめてくる、という共通の認識が備わっていると」


「そう。だから必然的に武装をしていると思うし、正規兵も多数駐在している。フィニも見たことあるんじゃない?多分人間の国に行ったことあるのフィニがトップクラスに多いし」


 実際、私は暗殺者としての仕事で人間の国にはかなりお世話になった。合計すると年単位で。だから武装集団の多い村は見たことがあるし、言われてみればそういう村はアンドレ王国に近かったかもしれない。


「言いたいことはわかりました。ではそうしましょうか。たしかに先程言ったような地域では民衆の意識はこちらに向いていなく、なおかつアンドレには近いエリアです」


「うん。じゃあそれは決まりで。そのエリアで3つぐらい狩ったら次のエリアにしよう」


「ここなんてどうですか?この王国にかなり近い場所は」


「それはどういう意図で?」


「おそらく、人間側はそのエリアで多数の村が無くなったら少しは疑問に思って兵を派遣するはずです。その時派遣されるのは首都からではなく、国境沿いのどこかの村にいる駐在兵です。でしたら、その裏をついて元々駐在兵がいた村を襲わせましょう」


「いいね、それ。そこからなら色々なところに誘発ができる」


 

 私たちはその後も作戦の詳細を詰め、気づけばとっくに1週間が過ぎていた。お互いに疲れてはいたが、それはあくまで脳が疲れているだけで『楽しい』という感情はまだまだ残っていた。


「どうしますか?まだやります?」


「うーん、もうちょっと詰めたい箇所があるけど……。こことか」


「同感です。しかしそれは現実の話でかなり先の話でしょう。とりあえず1ヶ月弱の予定は出来上がったので今日はこの辺にしましょう。おそらく、明日には第三軍の紋章も完成して隊員に通達することも可能でしょう。それが終わったら、少しの間休憩期間を取ってもいいですよ」


「やったー!何をやろうかなー!」


 ワクワクと存在しないはずの尻尾を振りながら早速本に手を伸ばした。


「しかしとりあえず、明日のうちに1週間ほどの作戦詳細を手紙に書きますよ。もちろん暗号化して、ですけど」


「分かってるって。明日の朝までにやればいいでしょ。ならご飯食べた後にやるよ」


「わかりました。では夕食を作って参りますので」


「はーい」



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