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最終話【前編】 新しい世界


「そしてウンポコ様は自分を犠牲にして、世界樹を直し、世界は平和になりましたとさ。おしまい」


ワー!!パチパチパチパチ…!


多くの人で賑わう街の一角で、紙芝居屋に大きな拍手が送られる。その紙芝居屋、頭にツノが生えた魔人族の男が嬉しそうに頭を下げる。


「やっぱすげーよな、ウンポコ様!」


「ね!本当はイケメンなのに変な格好になっちゃうのもいいよね!」


「はあーっ!ロックバレット!」


「てやあ!メテオスウォーム!」


大人達もその話に聞き入っていたが、やはり子供達の方が楽しそうだ。この街では精霊ごっこ、というかウンポコごっこをする子供が後を経たない。彼は憧れの的なのだ。



歴史に残るあの戦いから200年。世界樹の下に現れた精霊郷はタケハニヤス国と名を変え、時を経るごとにさまざまな人種が集まってきた。

差別を受けていた魔人族、小悪魔族を中心に、人族、亜人、獣人…本当に様々な種族が集まった。

その理由は、この国がもともと精霊の国だった事が大きい。魔物を駆逐する存在として、精霊は大事にされている。

各国や小さな街にも精霊はいて、魔物から人間を守ってくれている。何なら小さな農村などでは神として崇められていることもある。


そんな精霊が多く住まうこの国は、世界で一番安全な国だ。事情がある種族が集まるのも必然であった。


ちなみにこの国の国旗は、象徴的な形の茶色いアレが白地の背景に描いてある、というデザインのものである。

あの日以来、「ウンコ」は蔑みや下品の対象から外れ、むしろ神聖的なモノとして概念付けられた。この世界ではもう誰もウンコをバカにしない。ウンコのユートピアがここに誕生したのである。



「お〜懐かしいな。超アニキの話じゃねえかよ〜」


そこにゴリラのような赤い精霊が通りかかった。この街の守備隊長こと、“紅きピャイアン”だ。


「あっ!ピャイアン様だ!」


「すっげー!かっけぇ〜!」


「へへっ、おいおいガキどもくっつくなよ〜」


子供達はそんなピャイアンに目を輝かせている。文句なしの人気者だ。


「ピャイアン。もう城に行く時間だよね。今日は油を売ってる暇ないよね」


「ゲッ、ポロック。いや今から行くとこだっつーの〜」


「ああーポロック様だ!!すごい!今日はツイてるぞ!」


「ポロック様ー!またあの芸術的な建築構造の指南をして下さいよー!」


今度は大人、それもごつい職人たちが声を上げる。ピャイアンと同じく守備隊長のポロックは、この街では各種職人達に大人気なのだ。


「ん、何だよ二人ともまだこんなとこにいたのか。早く行かねえと女王様に怒られんぞ」


と、そこに今度はタヌキのような精霊がやってきた。二足歩行で歩くこのタヌキは元大精霊のギョウブ。力を使い果たし、今はほとんど戦う力は残っていない。


「何だ…ただのギョウブ様か…」


「私あの精霊様、あんまり推せないんだよね。タヌキだし…」


「すげー!ギョウブ様金玉でっけ〜!」


そのギョウブを見て、市民達がそんな反応をする。元大精霊といっても、今はただの口が悪いタヌキなのだから仕方がない。


「ぐぬぬ…!おいてめえら、いい加減にしろよ!ぶっ殺すぞ!」


「まあまあギョウブさん、落ち着いて下さいよ〜」


「気にしない方がいいよね」


そんな怒り心頭のギョウブをなだめる二人だが、そこでアハハと笑い声が響いた。


「アハハハハ!相変わらずギョウブは人気者じゃのう、見ているだけで楽しくなるワイ」


大笑いしているのは元大精霊にして元魔王、イズナだ。あの戦いの後も狐形態は変わらず、ギョウブと同じく戦う力を無くしている。


「イ、イズナ。別に俺は怒ってなんか…」


「はあ〜…いやいや分かっておる。あんな事じゃお主は怒らん。何せ私の愛するダンナ様なんじゃからの」


「バッ!お前、こんなところで…」


「何じゃ、本当のことなんじゃから照れるでないわ」


「ギョウブ様、イズナ様、ヒューヒュー!」


二人のいつものやり取りにヤジが飛び、温かい眼差しが向けられる。

伝記には、イズナが元魔王であるという内容は記載されていない。ギョウブとイズナは元大精霊として力を使い果たした、という記録が残るのみである。ちなみに伝記の著者はベル・ラインハーツとなっている。


「おう、ところで今日があの日だよな。お前らこんなとこにいていいのか?」


顔を赤らめながらギョウブがポロック達に問いかける。


「うん、その通り今日だよね。確か女王が昼過ぎくらいって言ってたから、今から行くところなんだよね」


「ギョウブさん達はどうするんですか〜?一緒に行きますかい?」


「ああいや、俺たちは街で見てるわ。魔道具で薄めてるとはいえ、さすがに俺たちには世界樹の根元はマナが濃すぎるからな」


「そうじゃのう、街で流れる映像を二人でゆっくり見物しとるかの」


そんな話をしながらイズナがギョウブの腕に絡みつく。

「バッ!おめえ、また…」と顔を赤くしているそんなギョウブ達に別れを言いながら、ポロックとピャイアンは王城へと急ぎ向かうのだった。



タケハニヤス国の都は、世界樹の下に建国された。だがあふれるマナが強烈なため、人間や一般精霊はマナに当てられて長時間世界樹の近くにいる事ができない。故に民が住む街は、世界樹から少しだけ離れた場所にある。

そしてタケハニヤス国の王城は、そんな街から離れた世界樹の根元にあった。


そんな普段は人気の少ない王城だが、今日は様子が違う。特殊な魔道具によりマナは薄められ、招待された人間や一般の精霊などにより賑わっている。


「おおベジタル王よ、久しいな。健勝であったか」


「む、ナッツ公国の。お主の方も元気そうじゃな。やはり来たのか」


「当然よ。世界にとって重要な日となれば、来ないわけにはいくまい。歴史に残る参列者の中に、我が国の名が入らなくなってしまうではないか」


「それはそうじゃな。何せあのミートムートの皇帝ですら来とるんじゃからの」


「ううむ…しかし本当に今日なのであろうか。所詮これは予言に過ぎないのでは?」


「む…あまり滅多な事を言うものではない。この今日の予言はタケハニヤスの女王が触れ回った事なのじゃからな」


「そうであったな。だが今日何も起こらんかったらどうする?忙しい中、皆遠方より来ておるのだぞ」


「好きに抗議せい。じゃがベジタル王国は関与せぬぞ。精霊達を敵には回せんからな」


今日ここに集められた人間は、その全てが各国の王や権力者である。みな忙しい中呼ばれて来ているのだ。


「この世界の救世主であり王となる者が、世界樹より帰還する」、それがタケハニヤス国の女王が100年以上前に広めた予言である。

そして今日がその日。主要な国の王は疑いながらもこうしてタケハニヤスへ集い、そして一応であるがその時を待っているのだ。


「ご心配なさらず。王は必ず現れますよ」


と、そこで上等なスーツを身に纏った若い女性が国の王達へと声をかけた。王達は自分たちに気安く声をかけた女性を見て、不愉快そうな顔を作った。


「何だ貴様は。我がナッツ公国の王と知ってその口をきいておるのか」


「え?はい、そうですが。どうかされましたか?」


「女よ、こういった場では直接王に話しかけるものではない。身分をわきまえろ」


「む…いや待てナッツ王よ、こやつは…」


「おうどうした、何か揉めてんのかあ?」


「っ…!!」


そしてそんな時、騒がしい王達のもとへ一人の精霊がやってきた。

王達はその姿を見て顔を青ざめさせ、後退りする。何故ならその精霊はあまりにも有名。この200年の間各国の危機を救い、英雄…生ける伝説とも呼ばれている存在。まさに力の権化。


「き、鬼神レオ・ギルボルド…!」


そこにいたのは紅いタテガミの眼帯精霊、レオ。その眼光は鋭く、今にも人を射殺しそうなほどである。

そんなレオを見てガタガタと震え出す王達であるが、先の女性の反応は違った。


「あっ、レオさんおかえりなさい!帰ってきたんだね」


「ああフェリクスだったっけ。ジイさんバアさんは元気かあ?」


「うん、いつもありがとね!帰りにウチ寄ってってよ!」


「あーわりい、今日はダメだな。今日は大事な日だからよ」


その女性が英雄たるレオ・ギルボルドと親しげに喋っている。その様子を見て王達はさらに顔を青ざめさせた。


「あ、あのレオ殿、その女性は一体…」


「ああ?こいつはフェリクスだよ。フェリクス・アーヴァイン」


「ア、アーヴァイン…!精霊取りつなぎ役のアーヴァイン家…!」


アーヴァイン家。それはかつて精霊の王たる精霊を最初に召喚した者の血筋。

その孫は、現在の英雄であるレオ・ギルボルドをも召喚したという事もあり、今やアーヴァイン家は最も精霊に信頼される人間として、精霊と人間の橋渡しをしている存在である。

彼らと対立する事は、精霊との縁が切れるという事でもある。


「し、失礼しました〜っ!!」


ピューと効果音がしそうな走り方で逃げていく王様達。それを横目に、さして気にした様子もなく二人は会話する。


「何だありゃ…。まあいいや、さあ…そろそろ時間だぜ」


そしてちょうどその時、リーンゴーン…と大きな鐘の音が鳴り響いた。皆が背を正す中、ギイィと大きな扉が開く。そしてそこから入ってきたのは、凛とした佇まいの男精霊と、眼帯をした美しい女精霊。


「えーワシは水の精霊レイン・マクスウェルじゃ。皆、今日はこうして集まってもらい、感謝する。特に戦争なんぞのトラブルもなく今日という日を迎えられた事に感謝するぞい」


「私は火の精霊ナビ・ワンダーゲート。同じく集まってくれた事に感謝する。では早速だが、女王陛下の挨拶を聞いてもらいたい」


そう言ってナビは手元の紫水晶を台座にセットした。が、まるで拒否するかのようになかなか映像が始まらない。


スタッフ精霊も出てきて何やら色々と操作していたが、ナビが手元の水晶でゴニョゴニョと話をした後、コホンと咳払いをして皆に向き直った。


「コホン。女王陛下は人見知り…じゃなくて気分が優れないらしい。よって代わりに私が代弁させてもらう」


頭を押さえるレインと、大きくため息をつくナビ。関係者もみな苦笑いをしている。


「皆知っていると思うが、今日は世界にとって重要な日である。200年前に世界を救い、そして自身を犠牲にして世界の理を修正された我らが精霊の王、タケハニヤス・ウンポコノミコト様が今日復活されるのだ」


オオーーーッ!!


歓声と拍手が湧き起こる。ほとんどの歓声は精霊達だが、どの精霊も歓喜に満ちた表情をしている。


「王の妻たる女王陛下は、王と繋がりを持っていらっしゃる。その予言ではあと半刻ほどで復活されるという。そして復活場所は世界樹。それでは迎えよう、我らが王を!」


ワアアアアァ!!

更なる歓声と共にナビの後ろにある大扉が開かれた。扉の外にはすぐ世界樹がある。その場にいる者たちは皆、一様に世界樹の根元へと集まった。


「おお、あれが…!」


「何と神々しい…」


集まった精霊、人間たちが皆同じ場所へと視線を向ける。それは人間大の白い果実のようなもの。枝からぶら下がったその果実は、まるで生き物のようにドクンドクンと脈打っている。


きっとこの果実から王が誕生するのだろう。そう期待しながら集まった者たちは、その時を待った。


カーンカーンカーン…!


しかしそこで突然けたたましい鐘の音が鳴り響いた。この鐘は時刻の合図ではない、何者かの襲撃の知らせだ。


皆が集まったこの時を狙ったかのように、何者かの襲撃があったのだ。


いつもありがとうございます。これで残り一話になります。ぜひ最後までお付き合いくださいませ、

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