001 俺は死んだ
俺の名前は運野小太郎、32歳。田舎生まれの田舎育ちで、一応父の農業の手伝いをしている。趣味はラノベとアニメ、そして何といってもネトゲだ。
俺はそこらの廃人とは格が全く違う。世界的に有名なMMORPGのあのゲーム内において、『傭兵』の異名を持っている。
金さえ払えば俺は何だってする。不意打ち、闇討ち、罠、ネガキャン、裏切り、依頼された事は何でもやってきた。そして付けられた異名が『傭兵』だ。
まぁ悪評が凄すぎて「クソ傭兵」とか「ゲリ便傭兵」とか色々言われているが、鋼の心を持った俺には一切響かないのだ。
昔は名前のせいで「うんこ太郎」等とよくからかわれていたが、その経験が俺を強くしてくれたのだろう。
カチャカチャカチャ…(ッターン!)
「よし、これで任務完了っと…ふぅ、もうこんな時間か。そろそろ“我が最高なる畑”《マイサンクチュアリフィールド》に向かわねば」
時計を見ると朝の3時過ぎ。俺は毎日傭兵稼業をこなした後、この時間から畑へ仕事に行くのだ。ニートとは違うのだよニートとは。
その日は朝から小雨がポツポツと降ってた。俺はさして気にすることもなく、いつものようにジャガイモ畑へと向かった。
作業着の下にはもちろん、お気に入りの魔法少女キャラのプリントTシャツ。
俺はちょっとだけ身長が小さく横幅があるので、ピンク髪ツインテールの可愛いお顔が「ゆっくりしていってね」と言い出しそうなお顔になってしまう。が、これは仕方がないことなのだ。ああ、尊い。
車が何とか一台通れるほどのあぜ道を歩いていると、前方の地面に何かが落ちているのが見えた。
ふむ…あれは犬のフンだ。
「春雨や 濡れてしっとり おとしもの」
俺は即興で一句詠んでみせる。フフ…どんなものにも風情ってもんはあるもんだ。
俺はヒョイと軽やかにステップを踏み、おとしものを回避する。
スタスタ…
しばらく歩くと、またもや前方に何かが落ちているのが見えた。
むむ、あれはまたも犬のフンじゃあないか。
しかも今度はピラミッドのように高く、立体的に折り重なっているではないか。漫画みたいなアレ、初めて見たよ。
むむ…、あれは唐沢さんちのタカヒロの仕業だな。やけに大量のフンをすることで有名な犬なのだ。
俺は被弾すまいと、フワリと軽やかに回避した。
だが、着地音は「スタッ」ではなくーー
「うわあああぁーーっ!!」
グニュリという感覚を足裏に感じると同時に、俺はビチャーンと派手に転倒した。
「いたた…。ハッこれは…!」
そう、俺が踏んだのはフンだった。しかも牛のやつだ。
むむ、これは牛島さんとこのキャオルちゃんのフンに違いない。やけに薄くそして伸びのあるステルス形状が特徴なのだ。
そしてその踏みしだかれたうんこは、俺の背中から尻にかけてべったりと付着し、キラキラと星屑のように輝いていた。
「まったく…なんて日だ…!」
仰向けに倒れた俺は、腰と背中に痛みを覚えつつも、ゆっくりと頭を上げた。
ーそして俺の目に映ったのは、世紀末武装した軽トラの高速回転するトゲトゲタイヤだった。
こ、これは加澄さんちのケンシロウおじさんの軽トラ!
来たる世紀末に向けて着々と準備をしている、48歳フリーアルバイターの名物ガチ勢おじさんなのdーーーーグシャアアァ!!!
こうしてうんこを踏んで転んだ俺は、軽トラにヒャッハーされて死んだ。
ここまて読んで下さってありがとうございます!
初めての作品なので、割と好きにやらせてもらってます。一応最後までやる予定。
初日5話投稿、明日からの5日間は3話投稿になります。