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第八話

「回復魔法"ヒール"。この魔法は光属性による癒しの魔法です。光と闇の属性は少し特殊で、単体で発動するには五大属性に比べて威力が低い為、不遇の属性だと一般では思われておりますが、実はこの2属性の本領は五大属性と混合させることにより真価を発揮します」


「私の使用したエア・ヒールは風と光の混合魔法であり、風の特性を活かした遠距離での回復を可能としております」


「なら各属性を組み合わせた回復魔法は、その特性毎に回復形態が違ってくるって事ですか?」


「流石ユート殿。飲み込みが早くて助かります。仰る通り各属性で回復魔法の特性が変化します。例えば火属性と光属性の混合魔法"ヒート・ヒール(灯火の癒し)"は対象者に癒しの炎を灯し、消えるまで回復効果が持続すると言ったように」


ほうほう。俺が仮に全ての属性の回復魔法を覚えたら、状況に適した回復ができるという訳か。それは是非とも覚えたいぞ。


「まぁ、そのような事が出来るようになるにはまず下級魔法を覚えてからですな」


「・・・ごもっとも」


そうして俺は村長の教えを基に魔法の修行を続けるのであった。



それから数日。

俺は五大属性の下級魔法をなんとか放てるまでになった。


魔法には各属性特有のコツというものがある。

まずは火属性魔法"ヒート"。

初めは俺の手から火炎放射器の様に形なく放出されるだけだったのだが、火を()()イメージで集中すると円形の火球へ形を成した。


次に風属性魔法"エア"。

これは村長の適正属性ということもあり、一番早く習得できた。コツは風を()()()()()()()ようにイメージすること。


次に土属性魔法"サンド"。

これも比較的簡単に覚える事ができた。

コツは発現させた土の塊を()()()()()こと。


次に雷属性魔法"エレキ"。

この魔法の習得は少し特殊な方法で習得した。

初めは俺の周りを放電するだけだったのだが、村長から対象を()()()()()イメージを持つ事が大切だと教えられ、最終的に編み出した方法は、構えた右手を銃の形にし対象を狙う事で直撃させることに成功した。


最後に水属性魔法"アクア"。

この魔法が正直1番手こずった。

村長から教えられたコツは、とにかく()()が大事との事。

水玉を発現させる事は容易であったが放つとなると途中で散ってしまい目標には届かない。火属性の様に()()イメージで放っても意味なし、風属性の様に()()()()()してもたちまち弾け、雷や土属性のコツは参考にすらならなかった。

とにかく勢いよく打ち出すようにひたすら練習し、なんとか形にする事ができた。


「この数日間修行をしてお気づきにはなられたと思いますが、魔法は体内の魔素を消費して具現化させるもの。当然魔素は消費されてゆき、尽きれば使えなくなります」


「何度か使うととてつもない疲労感に襲われますね・・・」


「それは魔素と共に気力も消費するからですな。戦闘中に乱発すると確実な隙となります故、ご注意下され」


確かに使いどころは見極めなければいけないな。

戦闘中にこんな頭がボーッとした状態でいるとすぐに死ぬ。


「私がお教えできるのはここまでです。混合魔法については説明が非常に難しく、自分で感覚を掴んでいくしかないと思います。私もどういうイメージで"エア・ヒール"を発動させているのか言語化出来ないので・・・お力になれず申し訳ない」


「いや、十分です! ありがとうございました。これからの旅に役立ちそうです」


「それは何より。明日の朝までには次の町"パダワン"へ向かえる準備が整います。本日は十分に身体を休めて下さい」


「何から何までありがとうございました」


「それは私が思う事ですユート殿。それでは村に戻りましょう」


俺と村長が村に戻ると、村人全員が俺達を待ち望んでいたかのように声が上がった。


「みんな! 勇者様と村長が帰ってきたぞ!」

「勇者様は明日この村を出立なされる! 今日は宴だ!!」

「勇者様! 俺達は感謝してもしきれねぇ! ありがとう!!」


感謝されるのは嬉しいが、勇者様はやめてくれ。何故だか背中がむず痒くなる。


「み、皆さん! ご存知かどうか分からないけど俺はゴーティア国の元魔王の息子なんです! 勇者なんかではありませんよ!?」


「ユート殿。勇者というのは称号であり、血筋では御座いませぬ。弱きを助け悪しきを挫くその行動の結果が、我々にとっての"勇者"像そのものなのです」


「それに魔族の国ゴーティアの王だとしても決して邪悪な国家では無かった事だけは保証致しますぞ。魔族というのは人間という括りの中の一種族でしかないのですから」


「そうですね・・・ただやっぱり勇者ってのはむず痒いのでやめて貰えると・・・」


「ならば・・・魔王の息子であり勇者でもある・・・"魔勇者"様なんてどうでしょう?」


・・・もっと悪くなった。


それから村長が村人達に魔勇者の名を広め、この日の宴はより一層盛り上がった。

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