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第七話

夜が明け宿屋を出た俺は村長と待ち合わせをしている村から少し離れた平野へ向かっていた。


待ち合わせ場所には既に村長が待っており、俺は待たせてしまったかと小走りで近寄る。


「すみません、教えてもらう立場なのに待たせちゃいましたか?」


「いやいや、私も今来たところです。それでは早速始めましょう。それではまず、この世界のことについて」


ごほん、と村長は喉の調子を正すと話し始める。


「この世界には4つの大陸があり、北方のミュートス大陸、東方のフェルド大陸、南方のシエル大陸、そして最後に西方のフォルクローレ大陸。この4大陸には様々な国や街があり、大陸毎に独自の文化を築いております」


「我々が今居るこの村は、南方のシエル大陸中央部に位置するロイファー国という名の国の領地になります」


「他にも有名な国は、北方にはロワ王国、南方のクニンガス王国、西方のケーニヒ王国、そして・・・」


「・・・東方のゴーティア王国」


父さんの国。俺が生まれた場所か・・・いつかは行ってみたい。


「ゴーティア国は17年前に起こった大戦で代替わりをし、今は新たな王が国を納めております」


「戦争が起きた原因ですが、表向きは領地や資源の奪い合いという事になっておりますが実は違ったのです」


「と言うと?」


「あのアルデバランがここに来たばかりの時、こんな事を口走っておりました」


――ちっ。やはり奴らと"戦争盤"をするものではないな。まぁ良い・・・まぁ、少なくとも勝ち取ったここらで自由気ままに過ごすのも悪くはないか――


「戦争盤?」


「戦争盤とは盤上に自分と対戦相手の駒をいくつか並べ陣地を取り合っていく遊びの事です」


ふぅん。俺の世界で例えるなら将棋やチェスみたいなもんか・・・陣取りゲームなら囲碁が一番近いか?


「その遊びと戦争になんの関係が?」


「神々の言う戦争盤とは盤上で遊ぶものではなく()()()()()()()()()()()()()()()なのです」


「神々は暇つぶしの為に各国の王を操り、戦争を起こさせて陣取りゲームを行っていたと言う事です・・・!」


神々の事を聞けば聞くほど、俺の中の神々へのクソ度が増してくる。


「好き勝手する神々ですが、一部の神が人間に恩恵を与えていたとの噂も聞いていたので、アルデバランの降臨に最初は喜んだものです・・・」


「そして現在に至るまで神々が地上でふんぞり返ってるってことですね」


「左様です。ユート殿はアルデバランを討ち倒したこの世で唯一の人間なので、もしかしたら他の神に狙われるやも知れませぬ故、魔法を習得しましょうぞ」


魔法とは。

この世に存在する全ての生命には魔素という魔法の基となる不思議な力が宿っており、知識のある者は体内にある魔素を様々な属性へと変え具現化させる事を魔法と呼ぶ。


「その属性とは主に火・風・土・雷・水の5種類からなり、これを五大属性といいます。更に後2種類、光と闇がありますがこれらを扱える者は多くいません」


「魔法には適正と言うものがあり、人それぞれ具現化できる属性が違ってきます。私なら風属性と、幸運にも光属性の適正がございました」


「その適正はどうすれば分かります?」


「ユート殿はこの世界で生まれているので魔力はあるはず・・・あぁ魔力とは体内の魔素量と属性に変換する気力を総称してそう呼びます。早速試してみましょうか」


村長は懐からソフトボール程の大きさの水晶みたいな物を取り出した。


「それは?」


「これは魔素を取り込んで性質を教えてくれる特殊な鉱石を加工したものとなります。ではコレをお待ちになって少々お待ちください」


村長から水晶を手渡され、数秒待っていると水晶の色が徐々に変化してきた。


やがて水晶は様々な色がまだらに混ざり合い、なんだかよく分からない模様になっていた。


「まさかっ・・・! まさかこのような事が現実で起きようとは・・・」


村長のあまりの狼狽ぶりに俺は少し不安を感じたが、村長は興奮気味に結果を伝える。


「水晶は触れている者の魔素の適正を色として認識し、それを映し出すのですが・・・ユート殿には各属性全ての色が見えます・・・一般的には1色のみ見え、魔法の才能がある者は2色映ることもありますがまさか7色全て映るとは・・・」


「へぇ。それって7属性の魔法に適正があると言うことです?」


「仰る通り。流石は魔王様のご子息でありますな・・・」


「まぁ、魔法についてはある程度分かったので早速使い方についてお願いします」


「そ、そうですな。それではまず自身に宿る魔素を感じてみる事から始めますぞ」


「よし! 気合い入れて頑張ります!」



――それから数時間後。


「くっおおぉぉ!! 出でよ! 風ぇっ!」


前にかざした右手へ自身の魔素を収束し、強く"風"をイメージする。

するとビュアァッと前方へ突風が吹き周辺の草葉が舞い上がる。


「や、やった・・・出ましたよ! 村長!」


「確かに。やりましたな、ユート殿」


魔法・・・そんなもんに触れて育っていなかった俺には自信の魔素を感じるところから難題であった。


「だが、それを魔法と呼ぶにはまだ程遠いですな。そのくらいのことはこの世界の人間は皆出来ることです」


「具現化した属性を効率的な状態へ形成し操る事で初めて魔法と呼ばれるようになります。ここからは魔法についてもう少し踏み込んだ説明をしましょう」


「魔法には下級・中級・上級の等級が存在し、威力・効力・持続力等が強力なほど高い等級となります。」


「風魔法を例に挙げると、下級魔法"エア"・中級魔法"ウインド"・上級魔法"ストーム"がありますが、私は中級までしか使用出来ませぬ。上級は魔素を多量に宿した一部の天才のみ行使可能な魔法です」


なるほど。そう言えば俺がアルデバラン戦で瀕死になった時、村長が魔法を使ってくれて痛みが引いた事があったな。


「村長、俺が戦っている時援護してくれた魔法はなんて魔法だったんですか?」


「あれは、お教えするのはまだ早いと思い言いませんでしたが・・・まぁ良いでしょう。あれは各属性2つを組み合わせた混合魔法と呼ばれるものです」


「混合魔法は五大属性魔法と比べて極端に難易度が高く、仮に2属性の適正があり修練を積んだ者でも簡単にできるものではございませぬ」


「村長はあの時、()()・ヒールと言ってましたが、風魔法の一種なんですか?」


「あの状況下でそのような事まで覚えておられるとは流石ですな。それを説明するにはまず回復魔法について説明します」


その魔法は是非とも覚えておきたい。

難しかろうがなんだろうが絶対魔法を習得してやる!

そう心に決めながら村長の説明を理解する事に集中するのだった。

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