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第四話

魔物が存在し、戦闘という言葉に慣れて育ったこの世界の人間にも、目の前で繰り広げられている光景に絶句していた。


「ふっ!!」


俺は再度振り下ろされた斧を躱しながら腰に下げているサバイバルナイフを取り出す。


アルデバランは無駄のない流れる様な動きで斧を構え直し、横薙ぎで追撃。


「当たっっるかよぉ!」


横跳びで斧を避け、すぐさま体勢を立て直す。


「はぁっ!!」


「いっ!?」


アルデバランは斧を俺に向かってぶん投げるが、咄嗟に上体を後ろに逸らし、ヘルメットの頭先を掠めたがなんとか避けれた。


くっ、首、繋がってるよな?? っぶねぇー・・・

ふふ。だかな。これで武器を失ったぞバカめ


「お前、武器なんか手放しちゃっていいの? 武器頼りのお前が殴り合いで俺に勝てるとでも思ってる?」


煽ってはみたが正直思ってるだろう。この体格差だし。


戯言(ざれごと)を」


俺の煽りをアルデバランは意に介さず、左手を眼前に突き出す。


「武器召喚"槌"!」


へぇ〜。そりゃそうだったね。そりゃ投げ捨てようが壊されようが召喚さえしちゃえば関係ないもんね。

要は奴の手元には無限に武器があるってことね。


「反則だろ・・・」


奴を倒す為にはまるで演舞の様な、無駄のない動きで繰り出される攻撃を交わしつつ俺の攻撃を通すことが絶対条件だ。

奴の突っ込んでくる勢いを利用したカウンターが効果的だろう。だが、流れる様に斧を扱っている今の奴ではカウンターはとれない。

その為には第一打みたいな、単純で直線的な攻撃をさせる必要がある。


「はっ! やっぱ手に何か持ってないと不安か? そりゃそうか! 人間如きに素手で負けちゃ他の神達にバカにされちゃうもんなぁ!」


「まぁ、必死こくのも分かるよ! 俺はこのちっこいナイフでお前をぶっ飛ばした後、神達に アルデなんとか君は大きな武器を生み出すだけの馬鹿で最高に弱かった って言って回ることにするよ!」


「・・・貴様ぁ・・・黙って聞いていれば・・・」


ブチっと聞こえそうなくらい身体中に血管が浮かび上がり、ワナワナと震えている。もう一押しだ。


「おいおい。言い返すだけの知能が無いからって怒るなよ・・・馬鹿なのは自業自得だろ? ・・・泣くのか?」


「殺すっっ!!」


来た!!さっきよりも数段早い速度で突っ込んでくるが動きは単純!真っ直ぐ突っ込んでくるだけなら合わせられるぜ!!


「くらえ! カウン――」


バキンッ


――え?


俺は確かに斧を避けながらナイフを奴の胸に突き立てた。

奴の突っ込んでくる力と俺の全身の筋力を総動員した力を合わせたカウンターを当てる作戦に、一つだけミスがあった。

それは()()()()()()()()()()ということだ。

巨岩をナイフで突いた様な感触。

硬すぎる。

俺の唯一の武器であるサバイバルナイフが折れてしまった。


「くそ・・・」


これが神なのか? いくらなんでも強すぎるだろ・・・

父さん・・・こんな奴らと戦争してたのか・・・? そりゃ勝てねぇよ。


「ふむ・・・ 我を逆上させ単調な攻撃を誘った訳か。人間の浅知恵にしてはまぁまぁだな」


「・・・そりゃどうも」


「だがそれは対人間であればの話。我には一切通じぬ。所詮は猿知恵よ」


「その猿に泣かされても文句言うなよ?」


そうは言ったものの、状況は非常に悪い。

唯一の攻撃手段を失ったのだ。


「どうやら貴様は悟った様だな。我に絶対敵わぬということを。貴様では我にかすり傷一つつけられずに殺されることになる」


うるせぇクソ野郎が!! と言いたいところだが、ごもっともだ。

俺に残されているのはもう神具(アトリビュート)しか――


神具(アトリビュート)・・・」


が、あるじゃん!!


「では・・・さらばだ!」


アルデバランは両手で握った巨大なハンマーを俺目掛けて垂直に振り下ろす。


斧よりも攻撃面積の広いハンマーを俺は辛うじて避ける。


だが地面に直撃したハンマーのとてつもない衝撃で俺の身体は吹っ飛ばされ、後方に建てられた民家に衝突し、家の中まで突入した。


「がっ・・・あっ・・・」


まずい。息ができない。


「・・・まだ息があるか・・・もう飽きたぞ。さっさと死ね」


俺にとどめを刺そうとアルデバランが接近してくるのが、ボヤけた目でなんとなく理解出来た。


身体もいうこと聞かないしここまでか―― と思った瞬間。


「――諦めちゃだめ――」


どこからともなく聞こえたその声は、透き通る様な綺麗な声だけど、どこかで聞いた事があると思える程聞き馴染みのある声だった。


「ぐっっ!!」


少しだけ生気を取り戻した俺は力を振り絞り、アルデバランの重撃をなんとか躱わすが、ハンマーの衝撃で家は粉砕し、俺の身体が投げ出された。


「・・・カヒュッ・・・カヒュッ・・・」


肺から空気が漏れているのか、変な呼吸音が出る。


次の攻撃はもう避けられそうにない。今の攻撃によって辛うじて保てていた気力も、もう持ちそうにない。



「お、おいあの旅人・・・立ってるのもやっとだぞ」

「まずいな! このままじゃアイツが死んじまう!」

「なんとか出来ねぇのかよ・・・!」


村人達が旅人のピンチをどうにか出来ないかと慌てふためいている中、村長が口を開く。


「私はあの方に最大限の支援を行う! お主らもあの方の戦いぶりを見て感じるものがあろう! 私の準備が整うまであの方から気を逸らしてくれ!」


「村長・・・そうか! おいみんな! この村で唯一魔法が使えるのは村長だけだ! 村長の準備が整うまでアルデバランさま・・・アルデバランの気を逸らせ!」


「よ、よし! やってやるぞ!」

「奪われた娘の仇を取ってやる!」

「俺の妻の恨みを晴らさせる時が来た!」


そうして村人達は最初で最後の反撃をしに、神の元へ駆け出すのだった。

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