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第三話

翌朝。


月に一度の捧げの日がもうすぐ行われる為、村人達と共に俺は社へ向かっていた。


皆一様にこの世の終わりを悟ったかの様な表情で歩いている。


今日捧げる為の若い女性はもう村には存在しない。

薄々気付いているのだろう。全員殺されると。

そりゃ死刑台に向かう道中だと思えばそんな顔にもなるか。


社に到着し、その豪華な両開き戸が開け放たれる。


その奥に鎮座していたのは、筋骨隆々で身長が3mはあるだろう大男だった。

袴を履いているが上半身は何も着ていない事で、こいつは筋力特化型だと一目で分かる。


そうこう考えていると村長が声を出した。


「アルデバラン様! もう我々には捧げられるものがございませぬ! 誠に勝手ながら私めの命をもってご容赦願えませんでしょうか!」


「そっ、村長!?」

「何を・・・」

「そんな・・・」


村人達は村長の言動に困惑するが、心に決めていたのだろう村長の決意の表情に気圧されている。


「どうか! どうかこの命一つで御慈悲を――」


「たわけが」


そいつから発せられた一言で村長含め村人全員が押し黙る。

俺は生まれて初めて殺気というものを肌で感じた。


「矮小な人間如きの指図を我が受けろと? まだ神である我と貴様らとの格差が分からぬか。人間の知能の低さにはほとほと呆れるわ」


「まぁ、どちらにせよここにはもう利用価値はない。全員殺して終いだ」


そう言い終えると神様、アルデバランはゆっくりと立ち上がりこちらに向かって歩を進める。


村人達の諦めと絶望の声が聞こえる中、俺は前に出て口を開いた。


「ちょっと待って下さいよ神様。アルデバランだっけ? お前に聞きたいことがある」


「・・・あ?」


敢えて舐めた態度をとってみたが効果抜群のようだ。

顔中に青筋が浮き出ている。


「貴様・・・この村のものではないな。我を神と知ってその態度とは」


「まぁ落ち着けよ。お前さぁ、神は神でもこの村の疫病神なんだから今すぐ出てってくれよ。俺は威張り散らしてるだけのクソ野郎が1番嫌いなんだよね」


「・・・決めたぞ。貴様を1番に殺す。後の人間はそれからだ」


よし、これでヘイトが俺に向いた。

村長に視線で村人全員をここから離れさせる様に合図する。

村長は俺の行動に困惑しつつも意図を汲んでくれ、この場から離れる様に皆を誘導してくれた。


「始まる前に一つ聞きたい! この仮面について知ってる事を教えてもらおうか!」


そう言って俺は仮面を前に突き出す。

仮面を見た神、アルデバランは怒りの表現から一変して、幽霊でも見たかの様な驚きの表情へと変わった。


「な、何故貴様がそれを持っている!? まさか生きているのか!? いや、ありえない! 彼奴は我々12柱全員で殺したはず・・・!」


「誰だ貴様!!」


「俺は萩原有斗! 魔王の息子だ」


「魔王だと・・・? あぁ、思い出したぞ! 先の大戦の際敗北を悟り、自軍を見捨てて逃亡した奴のことをな! そういえばガキもいたな! それが貴様か? 既にのたれ死んでいるかと思っておったぞ」


「・・・なんだと?」


「我々の前で自分の妻が殺された時も、無様に泣き喚くだけだったぞ。くくく。あの醜い顔は傑作であった」


「何故貴様がその仮面を持っているのかはこの際どうでも良い。わざわざ我のところまで持ってきてくれたのだからな。ま先ずは貴様を殺し、村を灰に変えてから考えるとしよう」


・・・こいつ。

魔王の妻ということは俺の生みの母親を殺したということ。

顔も名前も知らないが母親は母親だ。

こいつをぶちのめす理由はもう十分過ぎるほど出来た。


「覚悟しろよ、クソ野郎!」


俺は声を荒げ仮面を付ける。


仮面は形状と材質を変え、ヘルメットの形を成した。


「っ!? なんだと!? 何故装衣(そうい)できる!?」


何故って? 知るか! そんなことよりお前をぶっ飛ばすのが先だ!


「つべこべ言ってないでかかって来い!!」


「人間風情が・・・神の力を思い知るがいい!! 装衣(そうい)!アルデバラン!!」


アルデバランが左手を天にかざすと、その手に金色の装飾を施したグローブが身につけられた。


「それが13個ある神具(アトリビュート)のうちの1つか・・・仮面同様に厄介そうだな」


「行くぞ人間。 武器召喚"斧"!」


アルデバランの左手からエネルギーが溢れ出し、斧の形状に変化していく。

やがて形を成した斧は一振りで大木をも薙ぎ倒せそうな巨大なものとなっていた。


身体は言わずもがな、ヘルメットに当たっても衝撃までは防げない。多分一発でもまともに喰らえば即死だ。


俺は全神経を視力と思考加速に集中させる。


斧を振りかざし尋常ならざる速度で接近したアルデバランは、そのまま振り下ろす。


だが、俺はその動きを追えていたので身体を横向きにしてギリギリの位置で躱す。

斧は地を直撃し、もの凄い衝撃音と共に地面が割れる。


「どうした? そんなもんか?」


正直威力が半端じゃなくて内心ビビったが、ここは虚勢を張ってでも顔に出さないよう努めた。


「ほう。我の一撃を躱した者は数える程度しかおらぬ。これも神具(アトリビュート)の成せる業か」


「今のは単純にお前の攻撃が遅すぎたから避けたまでだ。神具のせいにするなよ、のろま」


「貴様・・・!」


アルデバランの顔面に青筋がビキビキと浮かび上がる。


へへっ。怒れ怒れ。頭に血が上るほど動きも単調になるってもんだ。


「さぁて、反撃開始だ!!」

【能力解説】

神具(アトリビュート)

神具は装備した部位の力を何倍にも増幅させるだけでなく、一つ一つに非常に強力な能力が備わっている

なお、どの神具も並大抵の衝撃では傷一つ付かない程強固

誰がどの様に生み出すのかは未だ不明


〈一つ目の神具〉

神具"名称不明"(木製の仮面)

①動体視力/視野/視力/視界/聴力/声量/味覚/嗅覚/思考速度が飛躍的に向上し感覚的に調節可能。

② 固有能力不明

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