第二十四話
俺と囚われていた様々な種族が少年のもとに到着し、少年はこちらに気付くと駆け寄ってきた。
「み、みんな!! ・・・あれ? アーミ? アーミ!?」
少年は誰かを探すが、姿が見えないようだ。
「あ、あの女の子なら・・・君が逃げたすぐ後、団長が連れていった・・・やってもらう種目が決まったからって・・・」
1人の男性が少年にそう告げる。
「そ、そんな・・・」
少年から全身の血の気が引いていくのが見ていて分かった。
くそ・・・すれ違ったか。
だけど今ならまだ間に合う・・・!
そう思った俺は助けに行く為大テントへ身体を向ける。
「お兄ちゃん、また、行ってくれるの・・・?」
少年の言葉に俺は明るく答える。
「言ったろ? 全員助けるってさ」
俺は安心させる為少年に微笑みかけた。
あとはそのアーミとかいう女の子1人を助ける為、再びサーカスへ戻るのだった。
舞台裏に誰もいない事を知っている俺は敢えて正面から堂々とテントへ入った。
「なんだテメェは。今日のショーはもう終いだから帰んな!」
・・・よし。6人全員居るな。これで俺が倒したのを合わせて10人だ。全て倒して女の子を救い出す!
「おい! 聞いてんのか!? これ以上ここにいるとただじゃ済まさねぇぞ!!」
「雷中級魔法"サンダー・チェーン"!」
構えた右手からバチバチと大きな音を立てながら近くの男へと電撃が走る。
「あががっ!!」
男に命中した電撃は、近くにいる男に渡っていく。
その男も直撃したらまた近くの男へ、その男から別へと、次々に電撃が渡る。
そして6人全員が感電し、皆がその場に倒れたので一旦アウストラリスを右手に戻す。
「おやおや、随分と熱心なファンになって頂けて光栄ですよ。ほほほ」
ハマルが手枷を付けた女の子と共に舞台袖から出てくる。
「お楽しみに頂けたでしょう? 醜い人間が必死で芸を披露する姿を! ・・・芸のためだけに生き、芸のためだけに死ぬ。それが彼ら彼女らの生きる意味なのです! だから芸に使わないところは邪魔なだけ。無駄を削ぎ落とし、芸に特化させた身体にする事こそがあの者共の存在価値となるのです!!」
「・・・勝手に決めんなよデブ」
「はい?」
「人の存在価値を勝手に決めんなって言ってんだ。なら俺もお前の役割を決めてやるよ」
「お前の役割は玉乗りだ。勿論"球"の方な」
「ほほほ。可笑しな事を仰いますねぇ。貴方もこのサーカス団のメンバーにして差し上げましょう。種目は的当てのマトなんてピッタリじゃないですか?」
「四肢を根本から切り離すので、頭の上に果物を置いてじっとしているだけで良いんですよ! 貴方みたいな頭の悪そうな方にお似合いです! おほほほほ!」
「お前の妄想に付き合ってる程俺は暇じゃねぇんだ。さっさとその女の子を解放しろ」
「・・・ところで貴方の頭のそれは・・・神具ですよね?」
俺の身体が一瞬ビクッと反応してしまった。
まさか・・・コイツも・・・
「形状は仮面だった筈ですがその動揺を見る限り、やはりそうでしたか。私はあの方の物をどうして貴方が持っているのかお聞きしたいですな」
「それを教える前に、お前の正体から教えろよ。まぁ、薄々気付いちゃったけどな」
「良いでしょう。私はハマル。"神"でございます。さぁ、貴方もお教え下さいますかな? 何故我々が直々に抹殺した神の魂をお持ちなんです?」
「神の魂・・・?」
「おやおや、ご存知ない? 神具とは神の魂が具現化したもの。よって神と神具は一身一体であり、切り離せいものなのです。そんなものを何故貴方如き人間が持っているのです?」
「・・・貰ったんだよ。ある人に。お前みたいなクズを殺すためにな!」
「ほほっ、ほほほほほ!! 面白い冗談ですね! 下等な人間が神である私を殺すなどと!」
「そんなに信用出来ないなら見せてやるよ。装衣"アルデバラン"! "アウストラリス"!」
そう言って俺は両手にグローブを発現させる。
「・・・・・・アルデバランにアウストラリスですか・・・どうやらただのハッタリでは無いようですね・・・」
ハマルが先程のニヤついた表情から一気に真剣な表情へと変わる。
「貴方、まさか・・・2人を殺したのですか? そうだとすると・・・」
「あぁ、俺もやっと気付いたよ。神が死ぬ時、神具がその場に置いてあるのは、ただ使っていた神の道具が落ちていた訳じゃない。神自身が神具と成っていたって事だ」
「なぁ、お前も神具持ってんだろ? 俺が使い倒してやるぜ」
「・・・人間の貴方に3つもの神具を扱えるならば、私にだって扱えるはず。私が根こそぎ頂いてしまいましょうか!」
そうして俺と"神"ハマルの戦いが始まった。




