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第二十三話

次々と出てくる種族のパフォーマンスに沸く観客達。

ここは戦闘や事故、病気によって身体の一部を失った者たちが集められた見せ物小屋なのではないかと思い席を外す。

本来ならば普通に生活ができない人たちをサーカス団員として雇用して生活を支えている、所謂慈善事業というものだと最初は思った。


だがエルフ族や、その後に出てきた種族に対しての扱い方が、まるで物の様に雑に扱われている。

鎖で引き摺りながら出される者、片足で歩きにくいであろう人を急かすように蹴飛ばす者、その他にも人間に対してではない様な扱いがされている。


「胸糞悪い・・・コイツらそれを見て喜んでたし、イカれてるな、ここの奴ら全員」


成程。だから()()なのか。


俺は早くここから去ろうと大テントから出る。

王都までの道は大テントの裏側に続いている為大テントにそって歩いていると、ちょうど舞台裏になっているだろう場所から怒声と何かが壊れる音が聞こえた。


俺は気になりこっそり中を覗く。


「テメェ!! また同じとこでミスしやがって!! 殺されてぇのかクズが!!」


「ご、ごめんなさい・・・次こそ上手くやります・・・だから殺さなーー」


「上手くやるのは当たり前だろうが!!」


バキッ


その男が女性の顔面を思い切り蹴る。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


そこ以外にも辺りには同じ様な光景が広がっている。

なんなんだコイツら・・・


そんな時、1人の少年が裏口に向かって走り出す。


「なっ!? おい!! 待て!!」


その少年はそのまま森の中へと入っていき、追っかけた男も森へ入っていった。

こんな状況を見て放って置けるわけがないと俺は思い、俺も後へついて森に入る。


俺は2人を見失ってしまい、仮面を付けて耳を澄ます。

ーーいた。

何か揉めている声が2つ聞こえるのですぐにそこへ向かった。


「い、いやだ!! 離して!!」


「テメェ・・・! こんな事してただじゃ済まさねぇからな! 大人しくしてれば()()()()()()()()()!」


「いやだぁ!! た、助けて! 助けてぇー!!」


「こんなところ誰も来やしねぇよ! お前はマト係決定だ!」


暴れる少年を担ぎ上げ、戻ろうとする男の目の前に俺は立つ。


「何してんだお前。その子嫌がってるだろ。離せよ」


「あぁ? なんだテメェは。いいからそこどきな。これ以上関わろうとしたら命はねぇぞ」


「言葉が通じないのか? 離せって言ってんだ」


「・・・おいガキ。次逃げたら地の果てでも追っかけて必ず殺すからな」


そう言って男は少年を地面に投げ捨てる。


「そこまで言うなら殺してやるよ。余程死にたい様だしな!」


男が腰に刺した剣を抜き放ち俺へと向ける。


「装衣"アウストラリス"」


俺は右手にグローブを発現させ、すかさず魔法を発動させる。


「雷魔法"エレキ・ショット(電気の弾丸)"」


右手を銃の形で構え、男の顔目掛けて魔法を放つ。


極小の雷の球がバチッと奴の額に命中し、男は口から泡を吹いて倒れた。

魔力の扱いが以前と比べ物にならない程向上した俺は、威力を上げることばかりではなく、逆に抑える事によって速度等に重きを置く方法も身に付けていた。


「コイツはしばらく起きないだろう。大丈夫だったかい?」


俺は少年に歩み寄り、膝を地につけて少年と同じ目線で優しく語りかける。

すると少年は俺の胸に飛び込みわんわんと号泣した。


少し落ち着いてきたころ、少年はあのサーカスの真実を語り始めた。


「あそこは普通のサーカス団なんかじゃない。皆んな元々はちゃんと元気な体だったんだ。でも、攫われてここに着くとどこかを()()()()()()()無理矢理舞台上に出されるんだ・・・」


「取られちゃうって・・・まさか・・・」


「うん・・・手か、足・・・」


なんて事を・・・攫ってきた者の手足を奪って見せ物として扱っているなんて、人間のする事じゃない。


「僕の友達が僕を逃がしてくれたんだ! お兄ちゃん! 僕の友達を、いや、皆んなを助けて!! このままじゃ皆んな死んじゃう・・・お願い、助けて!!」


この子の他にも沢山の子供達がいた。その子供達の中には既に失っている子もいた。

許せる訳が無い。


「あぁ。必ず皆んなを助けるよ。子供達も、大人達も全員ね」


「うん・・・! ありがとう・・・!!」


「君はここで隠れて待ってて。俺が皆んなを連れて来るまでは絶対に出てきちゃ駄目だよ?」


「分かった!」


俺は少年に自分の荷物とパンを渡して大テントへと戻る。


先程まで居た裏口に再び戻ってきた俺は物陰に隠れて中の様子を伺う。


「アイツ戻ってくんの遅いな。まさか逃げられたか?」


「そうならアイツは戻ってこねぇな。バレたら団長に殺されちまうからよ」


「とりあえず報告しにいくからよ。俺が担当してる奴らを見ててくれ」


「分かった。くれぐれも俺達には関係ない様に説明しろよな?」


「分かってる。そうしないと俺らまで殺されちまう」


そう言って1人の男が裏口から出ていった。

俺はそいつの後を追い、人目がない事を確認してエレキ・ショット(電気の弾丸)を放つ。

それは男の後頭部へと命中し、そいつの意識を失わせた。


舞台裏に居た奴らは全部で4人。

皆を少年のところまで連れて行くには後3人を無力化させる必要がある。

今すぐ広範囲の魔法をぶっ放して一気に制圧したいが、他の奴らに気付かれるし、囚われた人達も巻き込みかねない為、1人ずつ慎重に無力化していくしかない。


「ちょっとトイレ行ってくるわ。誰かコイツら見ててくれよ?」


そう言って1人がこの場から離れる。


俺は近くにいたもう1人の背後に忍び寄り、俺から1番遠い1人に向かって雷を撃つ。

そいつは頭に直撃しその場に倒れ、何事かと俺の目の前にいる奴が声を上げようとした瞬間、口を開かせないように手で塞ぐ。


「しー・・・命が惜しければ声を出すな。少しでも音を立てたらお前を殺す。お前らが捕らえている人達はこれで全員か?」


男はコクコクと首を縦に振る。


「仲間の数は?」


両指を全て立てて10の数を示す。


「そうか。ご苦労さん。"エレキ・ショット"」


男の首に右手人差し指を押し当て魔法を発動。

そいつは気絶し膝から崩れる。

俺は2人を物陰に隠し、最後の1人を待った。


数分してトイレに行っていた男が戻ってきたが、そこには誰もいない。


「は? おい! 見とけっつったろーー」


バチッ


「うぐっ!?」


よし。この場にいる全員を無力化できたな。

さっさとここから皆んなを連れ出そう。


「皆さん、助けに来ました! ここから逃げましょう!」


そう言って俺は檻に入れられている者、鎖に繋がれている者を次々と解放していく。


「あ、あなたは・・・?」


「そんなのは後! 今は向こうの方面に逃げる事が最優先です! 足が不自由な人はそこにある台車に乗せて連れていきます! さぁ早く!」


各々が俺を指差した方向へよろよろと向かっていき、俺も台車に数人乗せて少年のいる所へ引いていくのだった。

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