第二十一話
目が覚めて身体を起こした俺は、防具を着用し荷物を背負って宿屋を出ると、外にはウィリアム・ガレオ・カールの3人が立っていた。
「皆さん・・・」
「ユート。父親の仇絶対取れよ!」
「ユートさん! オレ達も応援してるっす!」
「ユートならやれるさ」
「はい・・・!!」
俺は深く頭を下げお辞儀をし、3人に背を向け歩き出す。
「ユートさんっ!!」
聞き覚えのある声の方に振り向くと、そこにはアイラがいた。
「ユートさん・・・私、あの時アナタが居てくれなかったらあの人に殺されていたわ。それに弟の仇まで取ってくれて・・・なんてお礼を言っていいか・・・感謝しても仕切れないわ」
そう言うとアイラは俺に一本のナイフを差し出す。
「これは両親が私達2人に遺した物の中の1つ。アナタにあげるわ」
ナイフを受け取ると、何か不思議な力を感じた。
「それは孤児院から出る時院長から渡された物よ。私達が発見された時私は首飾りを、弟にはそのナイフを持っていたみたい」
「そ、そんな大事な物・・・」
「アナタに持っていて欲しいの。その方がきっと弟も、両親も喜ぶわ」
「・・・わかりました。ありがとうございます」
そう言って俺は後ろ腰にナイフをしまう。
「これでお別れね。いつかまた必ず会いましょう。次会った時、私・・・いや、私達はユートさんと並べるくらい強くなってるわ」
「はい! その時はまた宜しくお願いします!」
こうして俺は4人に見送られながらこの町を後にするのだった。
町を出てから数時間が過ぎ、俺は魔物を倒しながら王都までの道を進んでいた。
「大分魔法の調整も慣れてきたな」
右手の神具のお陰で特に危険も無く順調に進めている。
そういえば町のギルドを出る時カウンターにいたカヤさんに挨拶した際、魔法の話題になりカヤさんが教えてくれたのだが、「魔法の等級は威力・効力によって決まります。攻撃魔法で例えるなら、下級は個人から1パーティまでが有効範囲であり、中級なら村や小さな町なら甚大な被害を与えられるでしょう。そして上級は国にまで及びます」
ならアウストラリスの特級魔法は大陸全土ってか?
そんな危ない物を俺個人に向けて使ってきたのかアイツは・・・
まぁ、大分範囲は絞ったのだろう。自分も巻き込みかねないからな。
そんな話を聞いて俺は襲ってくる魔物を練習台として調整を行っていた。
ただ、いくら魔力が大幅に向上したとしても魔素量は変わらない為乱発は出来ない。
魔素量も増えて欲しかったな。と考えながら歩いていると、何やら俺の周りに気配を感じた。
俺は即座に仮面を装着し、辺りを確認する。
「1、2・・・5人か」
俺はその気配が人間のものである事を確認し、そいつらに向けて声を上げる。
「隠れてないで出てこいよ!」
「・・・驚いたぜ。まさか素人なんかに気付かれるなんてな」
そう言いながらそいつらはゾロゾロと茂みから姿を現す。
「お前を観察していたがこんなところを堂々と歩いているのは余程の馬鹿か無知な初心者だけだぜ」
どうやらここはコイツらの縄張りらしい。
盗賊か何かか?
小汚い見た目のおっさん達が武器を手に俺へと寄ってくる。
「堂々と歩いているのは、お前ら如きを気にしてコソコソ遠回りなんかしたくなかったからだ間抜け共」
「言ってくれるじゃねぇか。お前、魔法使いだろ? さっきから魔法しか使ってねぇし武器も持っちゃいねぇ。こうして囲んじまえば俺達が圧倒的に有利なのさ」
「・・・で? 要求はなんだ」
「別にお前には無いさ。用があるのはお前の死体だけだ!」
そう叫ぶと共に盗賊達は一斉に俺へと襲いかかる。
「雷中級魔法"サンダー・サークル"!」
俺は自身の周囲に雷を展開させ、全方位からの襲撃に対応する。
全員まとめて感電し、その場に倒れた。
「あががっ!?」
「お前らみたいなクズは殺しといた方が後の人達にとっても良いだろうな」
「ひっ!? や、やめてくれ! わ、分かった! 金をやる! 幾らでもやるから命だけは!!」
「んなもんいらねぇよ。そんな事よりこういったことは二度とするな。次他のところでも見たら必ず殺す。お前らの顔覚えたからな?」
「分かったもうやらねぇ! じ、自首だ! 自首するよ!」
「そうかよ。必ずしろよな」
そう言って俺は先へ進む。
多分しないだろうと思うが俺もコイツらに構っていたら前に進めない。しばらくは大人しくするだろう。
「・・・・・・い、行ったか?」
「行ったぜ・・・はぁ・・・それにしてもアイツ馬鹿だな」
「だな。俺達が辞める訳ねぇだろうが! にしてもムカつくぜ・・・! 風の初級魔法しか使ってなかったくせによ! 2属性持ちなんてそんな素ぶり一切見せてなかったぞ」
「いつから気付かれていたんだ? まぁいい。次こそいいカモを見つけるだけさ」
盗賊達はとんだ災難にあったと口々に話していた中、1人が声を上げる。
「おい! 空になんかいるぞ!?」
「ん? ・・・なんだあれ!?」
「こっちに向かって・・・うわあぁぁぁあ!!」
仮面をとった有斗の耳には、その断末魔は届かなかった。




