表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/28

第十八話

俺はボウガンの有効射程範囲内である30m位の距離までアウストラリスに一気に近付く。

いくら仮面による視力の補正があるとはいえ、素人には変わらなくこれ以上離れた距離だとまず当たらないからだ。


「そんなもので私を倒せるとでも思ってるの? 舐められたものだわ・・・」


アウストラリスがそう言いながら溜息を吐く。


「土上級魔法"アース・クエイク(大地震)"!」


右手を大地に触れアウストラリスは魔法を発動させる。

その瞬間地面が揺れ始め、瞬く間に自立出来ないほどの強い振動へとなっていた。


「これで狙いも定まらないでしょう! やっぱり人間如き恐るるに足らなかったわ! そのまま落ちて死になさい!」


アウストラリスは右手に更に力を込めて魔力を送り込むと、振動は勢いを増し大地を割り始めた。巨大な渓谷と思える程に大きな亀裂が俺へと向かってくる。

体勢を崩している俺はうつ伏せになり両肘を立てボウガンを構えアウストラリスを狙う。

地面が割れ俺の身体が地から離れた瞬間、身体に伝う振動がなくなり落ち始めるその一瞬を狙い、俺は矢を放つ。


その矢はこのタイミングでまさか反撃されるとは思いもしなかったアウストラリスの左肩に見事に命中し貫いた。


「い゛っ!?」


当たりはしたが俺は重力に逆らう事は出来ずそのまま奈落へと落ちていった。


アウストラリスは魔法を解除し、左肩に刺さっている矢を強引に引き抜き怒りに任せて矢をへし折る。


「この・・・よくも私の身体に傷をつけたな・・・!!」


「・・・まぁ、もう殺したし後はアイラを殺してこの鬱憤を晴らすとしましょう」


そう言ってアウストラリスが踵を返しこの場を去ろうと歩き出した時、背中に激痛が走る。

下方を見ると刃が腹から突き出ていた。


「逃げてんじゃねぇよ馬鹿が。俺はまだ死んでねぇぞ」


「馬鹿な・・・! な、何故生きてるの!?」


「何故って・・・ただ階段で登ってきただけさ」


俺は落ちていくのをなんとか止める為、槍を召喚し岩肌に突き刺してなんとか落下の勢いを止めた。

だがこのままでは地上に戻れない為、剣を何度も召喚して階段状に突き刺しながら上がってきたのだった。

魔力を必要としない武器召喚ならではの生還方法である。


「いい加減しつこいわ!!」


アウストラリスは背後の俺へと魔法を繰り出そうと右手を後ろに回してきたので、俺は奴の背中に刺さっている剣の柄から手を離し距離を取る。


「俺より似合ってるからな。その剣はお前にやるよ」


「・・・許さないわよ。お前は私の全力を持って殺すわ」


「おいおい。今まで上級魔法バンバン使ってた癖に本気じゃなかったみたいな口ぶりだな。見栄張るなよ」


「見栄かどうかは確かめてみるがいいわ。お前の命をかけてね!! 風魔法"ウインド・ジャンプ(疾風の跳躍)"!」


アウストラリスは俺から離れる様にその場で跳躍し、風の力で高く舞い上がったアウストラリスは空中で魔法を発動する。


()()()()()()()()()魔法"メテオ・ストーム(流星群)"!!」


「なにっ!?」


()()混合!? それに()()魔法だと!?

村長やアイラからも3種類の属性を混合させる魔法も、ましてや特級なんてのも聞いた事ないぞ!!


「驚くのも無理ないわ! 人間は本来1種か2種類の属性しか持っていない! だけど私は全ての属性を使える上、この世に私だけが3種類の属性を混合させる事ができるのよ!!」


上空には先程の巨大な隕石が何十、何百もの数で空を覆い尽くしていた。


「この魔法は神々ですら無傷じゃいられない程の規模と威力よ!! これで確実にお前は死ぬわ! あははは!」


「くっそぉぉお!!」


俺は全力で駆け出すが、隕石群の落下の方が早く、次々と地面に着弾する。

強烈な爆撃が幾度も繰り返され、大地を揺るがし地形は変わっていった。

やがて降り注ぎ切った場所は土煙が辺り一帯を覆い尽くしていた。


「はぁ・・・まさかこの魔法まで使う事になるなんてね・・・痛っ! ちっ・・・興奮のあまり忘れてた痛みが今頃来たわ」



「回復魔法"フレイ――」


アウストラリスが魔法で自身の刺し傷を治療しようと前方から視線を逸らした瞬間、土煙の中から彼女にとって2()()()()()()()()()()()が眼前に姿を現す。


「えっ!?なんーー」


「油断したな!」


俺は手に持った剣をアウストラリスの心臓目掛けて突き刺す。


俺はほぼ回避不可能と思われたあの魔法を、奴が直前に使っていた魔法による跳躍を真似て範囲外の所まで回避していたのだ。


ただ、土魔法でほぼ魔力の無くなった俺は、残った縛りカスを全て使い、お粗末過ぎて魔法とは言えない魔素を風に変換するのが精一杯だったが今回ばかりはそれで十分だった。


「お前は自分自身が魔法の範囲内から出る為に俺から距離を取ったところまでは良かったけどな、その後に()()()()()は完全に失敗だったぜ」


「な、・・・なにを・・・」


「言ってたじゃねぇか。この魔法は神々すら無傷じゃいられないってな。それでピンと来たぜ。じゃあお前の近くまでなんとかして行けば助かる可能性も大いにある訳だ」


「ふ、ふふ・・・わたしは・・・最後まであなたを・・・舐めていたよう、ね・・・」


「じゃあ、これで終わりだ――」


「――お義母さん!!」


剣を引き抜こうとした俺の手が止まる。

後ろを振り向くとそこにはアイラが息を切らしながら立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ