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第十六話

「それでは皆さん! 旅の無事を祝して、かんぱーい!!」


「かんぱーい!!」

「かんぱーい!!」

「かんぱーい」

「かんぱーい!」


ギルドを出た俺達は近くの酒場に来て祝杯を挙げていた。


この世界は16歳から成人として認められ、もちろん俺は成人(17歳)なのでオトナの飲み物を飲む。


ウィリアムが一気に飲み干し、次を頼んでいるので俺は本題をきりだす。


「酔い潰れる前に皆さんお待ちかねの山分けと行きますか!」


ドサっとテーブルに置いた布袋はパンパンに詰まっており、中身を開けると皆は歓声を上げた。


「改めて見るとスッゲェな!!」


「夢でも見てるようっすよ!」


「金貨がこんなに・・・」


口々に感想を言うが正直俺は価値が分からないので、皆のテンションについていけなかった。


「金貨の価値ってどれくらいなんですか?」


「あぁ、ユートのいた世界にも貨幣で物の売り買いをしてるんだろ? なんて言えばいいか・・・この世界には鉄貨・銅貨・銀貨・金貨の順で価値が10倍ずつ上がっていくんだ。俺達が旅の途中で食ってたあのパンあるだろ? あれは鉄貨3枚だ」


待てよ。あの安そうなパンが鉄貨3枚って事は、鉄貨は日本円に例えると100円だとしたら300円の価値って事か。だとしたら銅貨は1,000円、銀貨は10,000円、金貨は・・・100,000円!?

で、ホープ所長から2,000枚貰ったから価値としては・・・


「・・・2億・・・」


つい言葉が出てしまった。


「なんだかどエラい数字が聞こえたが、これでお前も金貨がどのくらいの価値を持っているか分かったろ?」


ニヤニヤしながら俺を見るウィリアム。


何故だか俺も顔がニヤついていた。

金貨全て山分けしても1人頭400枚・・・4,000万!! くくく、笑いが込み上がるぜ!


「だから言ったでしょ? 山分けなんて馬鹿な事しなければ一生働かなくても生きていけるって・・・」


ニヤつきが抑えられない俺を見てアイラが溜息混じりに呟く。


それから俺達5人は均等に分配し、一気にリッチの仲間入りを果たした。


それから俺達は大いに盛り上がり、数時間後にはウィリアム・ガレオ・カールの3人は酔い潰れて寝てしまった。


アイラは寝ている3人を見つめながら語り始める。


「私ね、弟がいるの。両親が戦争で死んでしまってある人に引き取られた話はしたわよね? その人は私達姉弟2人も養ってくれた。裕福な生活とまではいかなかったけど、何不自由無く暮らせていたわ。それも全部あの人のお陰。私は少しでも恩返しがしたい。ユートさん、本当にありがとう。このお金でお義母さんを楽させてあげられるわ・・・」


アイラの目からポロポロと涙が溢れ出す。

きっとその人が愛情を持って彼女らに接していたのだろう。


「感謝されることはないですよアイラさん。そのお金でその方と旅行なんて行ったらどうですか?」


「りょこう? なにそれ?」


あ、この世界には旅行なんて概念は無いのか。そりゃそうか。町を出ればそこら中に魔物がいるんだからな。


「ま、まぁ好きに使って親孝行して下さいって事です!」


「ふふっ。分かったわ」


それからアイラとの話が弾んでいると3人が目を覚まし、今日は宿に泊まるとの事でフラフラなウィリアムをガレオとカールが肩で担いで宿屋の方へ歩いていった。


アイラは3人で住んでいる家がこの近くにあると言う事で、俺は家まで送る事にした。


「この時間ならまだお義母さんと弟が起きてる筈だから、ちょっと寄らない? 恩人を紹介したいの」


俺は快く了承し、やがてアイラの家に着く。


「ただいま! 帰ってき・・・た・・・・・・」


玄関の扉を開けてアイラは中にいるであろうお義母さんと弟に向けて言葉を投げるが、扉を握ったまま動かなくなった。


俺は気になり固まってしまったアイラに近づき声を掛ける。


「アイラさん? どうしまし・・・」


何気なく部屋の中を見た俺は、中の惨状に言葉が出なくなった。


「あらぁおかえりアイラ。早かったのね」


そこにいた女性は若々しく美しい見た目で、長い黒髪を靡かせて振り返る。

その手に持ち上げられていたのは全身が切り裂かれたように血みどろになり既に生き絶えてる男の子であった。


「え・・・お、お義母・・・さん? それ・・・持ってるの・・・カイルだよね?」


「そうよ? もぅ嫌になっちゃうわ。アイラが帰ってきたら2人一緒に殺そうと思ったのに・・・カイルったら私の独り言を盗み聞きしてたみたい」


「お・・・かあ・・・なに・・・いって・・・」


「でもこれはこれで気持ちよかったわ。さぁ、アイラ。こちらにいらっしゃい。殺してあげるわ」


「おい。意味わかんねぇぞお前。その子に何をした?」


俺は抑えきれずアイラの前に立ち女性を睨みつける。


「あら、どなたかしら? まぁ良いわ。教えてあげる」


「私はこの子達の養母よ。かつての大戦に飽きてきた私は子供がいる家庭を見つけては殺し回ってたの。あの頃は興奮したわぁ〜・・・」


「子供の泣き叫ぶ顔が堪らなく好きでね。当然この子達の両親も私が殺したの」


アイラの表情に一層絶望の色が浮かぶ。


「この子達の惨めに泣き叫ぶあの表情! あの表情がまた見たくて見たくて見たくて見たくて堪らなくなったの! そこで良い事を思い付いたのよ。この子達はこのまま孤児院に送られる。そしたら私が引き取って育てれば、私を信頼して母親として見てくれるかもって!!」


「親を殺されてあの表情が出るなら、今度は親が自分達を殺そうとした時もっと良い表情になるのではないのかとね! 予定では今日にはアイラが帰ってくるから、今日殺そうって思ってたら・・・思わず口に出しちゃってたみたい・・・カイルに聞かれちゃったから殺しちゃった」


こいつ・・・とんでもない快楽殺人者だ。その一瞬の為に長年掛けて信頼されようとずっと騙していたのか・・・


アイラを見ると、声も出せず涙が止めどなく流れて頬を濡らしていた。


「アイラさん・・・こいつ、俺が殺しても良いかな」


俺がアイラに確認するが反応は無い。


「は、なんの冗談? 人間如きに私が殺せる訳ないでしょう?」


「・・・人間如き?」


「私は神よ。名はアウストラリス。貴方は?」


「俺は有斗・・・テメェを殺す人間の名だ・・・!!」

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