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プロローグ-旅立ち

「ふぁあ・・・こんな朝早くから勘弁してくれよ・・・」

欠伸をしながら2階の自室から1階のリビングへ降りてきた俺萩原有斗はぎわらゆうとはキッチンに居る母に文句を言う。


「今日はお父さんと納屋の片付けをするって約束でしょ お父さん待ってるわよ」


「分かってるけどさ・・・朝7時からやるもんでもなくない? 折角学校も休みなんだからもう少し寝かせてくれよ」


「つべこべ言ってないでさっさと朝ご飯食べて納屋に行きなさい! 大体あんたはいつも夜遅くまで――」


やば・・・母さん怒ると小言が多くなって面倒なんだよな・・・


「わ、分かった分かった。 すぐ行くから」


そう言って俺は用意されていた朝食の食パンを口に押し込み、母の連続口撃から逃げるべく早足で納屋に向かった。



「おっ、早かったな。お前も母さんから逃げてきたのか?」


納屋の扉を開けると父が既に片付け作業をしており、俺を見るとニヤッと笑った。


「俺も朝起きるなり母さんに昼食迄には終わらせて来いって叩き出されたんだ」


もし終わらなかったら昼飯抜きで作業しなければいけなくなりそうだ。それだけは阻止しなければならない。


「さっさと終わらせよう。どこからやればいい?」


「じゃあ父さんはここをやるから有斗は2階をやってくれ」


「おーけー」


この納屋はロフトの様な間取りになっており、俺は年季の入った木製のハシゴを登って2階に向かう。


「うわぁ。 きったねぇな」


長年手をつけていないせいで埃が積もっており、歩く度に埃が舞う。


なるべく息はしない方が良いな・・・


「・・・おし!」


埃まみれになる覚悟を決めた俺は1秒でも早く終わらせる為にせっせと片付けていく。


作業を始めてから20分程経った頃だろうか。

部屋の片隅に古びた木箱が置いてあるのに気付いた。


なんだこれ?


手に取ってみたら木箱だけではない重みを感じる。


何の気無しに蓋を取り中身を確認した。


「・・・仮面?」


中に入っていたものは木製の板。

仮面だと思ったのは、その木の板が微妙に湾曲しており、目に当たる部分に穴が空いていたからだ。


「父さん、なんか変な仮面が――」


父に声を掛けようと降り向かうとした瞬間、目が眩むほどの光が仮面から放たれる。


「――なんだ、これ!」


目もまともに開けられない程の光が収束されていき、やがて人間の形へと姿を変える。


「・・・こんな世界に逃げ隠れていたとはな。」


「だっ、誰だお前!!」


「今度こそ・・・さらばだ」


俺の問いに答える事もなく、そいつは手をかざし光の球を形成する。


行動の意味は分からないが明確な殺意を本能で感じた俺は咄嗟に目を背けてしまった。


「――くっ・・・?」


数秒間の沈黙が続いたが特に何も起こらない。


ゆっくり目を開けると既に奴は居なく、父が目の前に立っていた。


「父さん! なんか変な奴が今の今までそこに居て訳の分からない事を言ってたんだ! そこの変な仮面が急に光り出してーー」


パニックになりながらも父に今あった事を説明していた俺は父のある異変に気付く。


仮面と俺の間に立っている父から()()()()()()()()


空洞が出来ていた。父の腹に。


「ーーは?」


倒れ込む父。俺は咄嗟に抱きかかえる。


「ど、どういう事・・・」


「・・・有斗。今まで黙っていて・・・本当に・・・すまない」


「父さんな・・・実は・・・この世界の・・・人間じゃない・・・んだ」


「待てっ、待ってよ・・・! 父さん! 意味分かんないよ!!」


「かぁさんに・・・きいてくれ・・・もうじかんが・・・」


「あと・・・かめんを・・・おまえに・・・たく・・・す」


「・・・ごめんなぁ・・・」


「父さん!? 父さん!!」


一筋の涙が頬を伝い、父は逝ってしまった。



それから警察や救急車が来たり、葬式を行ったりで母と話をする時間が取れたのは、あれから数日経った頃だった。


「お父さんはこの世界の人じゃないの。別の世界から来た異世界人なのよ」


「お母さんがあの人と出会ったのは今から17年前になるわ。

ボロボロの体でお前を抱えながら倒れているのを私が見つけて介抱したの。やっと話ができる様になって色々聞いてみたら、どうやらゴーティア国という魔族が住む国の王だったそうよ」


「魔族? 見た目はまんま人間だったけど?」


「見た目は然程人間と変わらないみたい。で、魔族の王であるお父さんとその世界の神々が戦争をしていたらしいの。」


「そんな時唯一の親友が神々の手によって殺されてしまうのだけど、その際に親友であるお父さんへ仮面を授けたんだって。それがこの仮面」


そう言うと母は仮面を俺へ渡す。


「この仮面ってなんなの?」


「私もあまり詳しくは知らないんだけど・・・神具(アトリビュート)というみたい。それを身に付けると神の力が手に入るけど、常人が身に付けると身体が耐えられないんだって」


父さんは魔族だから付けられたのかな? だから息子である俺にも付けられる可能性があるから預けたのか?


神具(アトリビュート)は全部で13個あって、その世界にいる13柱の神様達が一つづつ持ってるみたい。その一つ一つが強力な力を秘めているそうよ。」


「・・・私が知っているのはここまでよ」


「有斗の考えている事は分かってる。どうしても行くのね?」


「うん。このままで終わって良いはずがない」


俺は真っ直ぐ覚悟を持って母を見る。


「まだまだ分からない事だらけだ。なんとしてでも真実を知りたい。母さんなら異世界の行き方を父さんから聞いているはずだろ?」


諦めた様な表情で母は溜息混じりに息を吐く。


「・・・前に一度元の世界に戻らないのか聞いた時に教えてもらったわ。有斗にとってこの世界が安全だから試さなかったけどね」


「その仮面は異世界の神の力が宿っているから、力を使おうとすれば異世界に引き戻されるらしいわ」


「分かった。ありがとう母さん。」


「必ず・・・必ず生きて帰ってくるのよ?」


「あぁ・・・帰ったら母さんにも伝えるよ」


そう言い残し俺は仮面を顔へ付ける。

すると目の前が光に包まれていき、意識が消失した。

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