やっぱり いなかった
1
しんしんと ゆきがふる。
つちのうえに ゆきがふる。
きぎのうえに ゆきがふる。
ほかには なにもきこえない。
ただしずかに ゆきがふる。
2
つちのしたには くまのこがいっぴき。
ねいきもたてずに まるまって
なんのゆめを みてるやら。
3
さわからちょろちょろ みずがとけだし
きぎのあいだに ひかりがさしこむ。
とけたゆきに ひかりがはんしゃし
きらきら きらきら
ちからづよくうまれる くさばなたち。
4
とおくでゴロゴロ かみなりのおとがひびき
くまのこはゆっくり
めをあける。
ああ、なんてことだ、
おきてしまった。
あんなに おいのりしたのに
おきてしまった。
ぼくは おきたくなかったのに。
ずっとずっと ふかいねむりのなかで。
このちいさな おへやのなかで。
5
くまのこは ねんのためにおへやをみまわす。
もしかしたら いるかもしれない。
「おはよう」って
やさしいかおでわらっているかあさんが。
エプロンをつけて たっているかもしれない。
そうしたら ぼくはとびおきて
あったかいかあさんのむねにとびこんでいく。
6
くらいおへやのなかに
かあさんは いなかった。
あったかいかあさんは いなかった。
くまのこは さっきよりうんとさびしくなって
まるまって また めをとじる。
ねむるまえ あんなにないたのに
また めからみずがながれてきた。
かあさん かあさん
どこに いったの?
かあさん かあさん
あいたいのに。
もう かおも だんだんと おもいだせない。
7
くまのこは おもいだす。
ふゆになるまえの あきのあのひ。
わがままを いったこと。
ともだちと きのみがりをしていて
どうしても かちたかったから
あかいろとむらさきいろの
きのみをねだったんだ。
にんげんの いえのにわでみつけた
あのきのみがほしいって。
そしたら いいこになってねむるからって
ぼくは かあさんにおねがいしたんだ。
8
いつも なかなかぼくがねむらないので
てをやいていたかあさんは
かたをすくめて こういった。
「やれやれしかたがない。
こんばん とりにいこうかねえ」




