1章 42話 昔にケジメを
1章完結!!
本当は30話に纏めるつもりが伸びすぎました。
これでもかなり削った筈なんですが。
先程の焼き増しのようにバタバタと近づく四つの音。
勇樹の後から来たのは、東城朱音、東城大輝、大平亜蓮、一色姫乃で正樹の幼馴染達。
「生きていたのね。怪我は無いの?」
「体がズタボロになったけど直した」
「そう…ともかく、無事でよかったわ」
正樹を見た朱音は、最初に心配な表情を作って気遣う。
しかし、いつも通りなそっけない態度に違和感を覚えて訝しむ。
男二人も表情にこそ出ていないが、様子からして少しは心配していたように見えると、正樹としては意外だと感想を抱く。
こちらは普段仲が悪いが、それでも昔は一緒にくっ付いていて遊んでいたからか、と納得をつけると、それとは別の意外だと思う気配を感じた方に視線を向ける。
朱音同様に心配そうに眉を八の字にして、正樹を思っているように見える姫乃。
しかし…
(目が怖えよ。気配に敏感になったせいで嫌悪が刺さってるんですけど。なんか微妙に殺気混ざってね?そんなに恨まれる覚えがねぇんだけど)
その外と内のチグハグさに、正樹は慄きながら困惑する。
自意識過剰ではと一瞬頭をよぎるが、勘は少しではあるが警戒を促してくる。
それでよく観察をしてみると疑惑が確信になる。
他四人は表情に違いはあれど、細かい動きに迷いがあったり、ぎこちなさや落ち着かなさがある。
それが姫乃には一切無い。
どちらか片方ならば迷うところではあるが、二つ揃えば決まりとも言っていい。
一色姫乃が正樹に恨みにすら近い嫌悪感があることに。
何かやったか?と頑張って頭を捻ってみるが、どれだけ思い出してもヒントの一つすら出る気配はない。
顔は無表情のままに内心ウンウンと悩んでいると、沈黙に耐えきれなくなったのか大輝が口を開く。
「一つ聞きたいことがある。あの時、なぜビビりなお前らしくも無い、あんな行動に出た?」
そのぶっきらぼうな問いかけに、正樹は問題を傍に避ける。
行方不明だった幼馴染に最初にかける言葉がそれか、とは思わなくも無いが野次が飛ぶことはない。
朱音も今そんなことを聞くことなの?と言った視線を向けるが、それ以上のことはしない。
そのことは他の四人も気になるところだからだ。
正樹も特に気を悪くする事もなく、寧ろビビりと言われてもやっとするくらいだろうか。
「殿をやってて逃げ遅れたんだよ。ああしなきゃ商隊は知らないが、俺の班は全滅してたからな。なら、後続の魔物を絶って一人隠密行動で助けを待った方がいいだろ。外に騎士団も派遣されてたしな」
「む…」
本音半分嘘半分。
確かに、正樹が残らずとも助かった可能性は無くはないが、色々と問題が残る上に被害もそれなりに出ていたことは間違いない。
そのことが分かるからこそ、らしくない行動だったとしても辻褄が合ってしまう。
一瞬勘繰られてるかと警戒をするが、むすっとした表情の割に大輝からは害意を感じない。
「それでも、何であんな真似をしたんだよ!正樹が俺達を避けてるのは分かる。けど、協力し合えば君があんな目にあう事もなかったかもしれないじゃないか!」
正樹の答えに納得がいかないと、横合いから勇樹が叫ぶように言う。
これには何をくさいことを言っているのかと呆れる。
理性的に判断をして口を継ぐんだ大輝とは違い、事実を理解してないことがわかる発言に思わずため息が出る。
「そりゃ、お前らがつかえねぇからだよ。それこそ、俺からしたら博打より分の悪い賭けだ」
「なっ…?」
「あ?今なんて言った、テメェ…」
馬鹿にするような笑みで正樹が本音をぶちまけると、勇樹は驚愕の表情を作り、今まで会話に入ってこなかった亜蓮は怒気をはらんで凄む。
「そりゃそうだろ。足手まといを捨てることのできないお人好し。協調性の無い我の強さ。状況判断も出来ない甘ちゃん。信用の置けない狐。実際、あの時お前らが何も出来ないからああなってたんだろ」
「言わせておけば…!」
「やめなさい!」
煽るように放たれた鋭利な言葉。
それを受けて亜蓮は額に青筋を作ると一歩踏み出すが、朱音が肩を掴んで止める。
姫乃は悲しげに顔を歪め、茜を耐えるようにに唇を噛み、大輝は悔しげに睨む。
「だからって…」
「あ?」
そんな中、拳を握りしめて顔を伏せる勇樹はそれが認められ無いかのように、言い訳がましいく呟く。
「だからって、助けてもらうためにアレクレアに身売りすることないだろ!確かに俺達は頼りないかもしれないけど、あんな信用できない連中を頼ることないだろ!」
(あー、これか。やってくれたな姫さま)
血を吐かんばかりに出てくる、子供のわがままのような怒り。
教会で学んだアレクレアは悪い印象を受けることが多かったため、勇樹が信用ならないと言う。
他にも、正樹が自分達よりそんな連中を頼ったことがゆるせなかったからこその癇癪。
対照的に正樹は他人事のような感覚でいるために、冷静にこれがセレンの仕掛けた嫌がらせということを悟る。
なにせ、断片的にでも秘密裏の交渉が勇樹に漏れているのだから、確信犯では無い方が驚きだ。
確かに、詳しく知らなければ間違った事ではないので嫌らしくも良い手だと、やけくそ気味に称賛する。
正樹達が戻れば万々歳。
戻らなければアレクレアへの悪印象を。
正樹が戻ることも、この誤解も解くことができないことも織り込まれている、非常に厄介な嫌がらせだ。
「そりゃ、お前達や教会よりあっちの方がまだ信用できるからに決まってるだろ」
「それは騙されてる!騎士や神官の話じゃ、アレクレアは黒い噂が絶えない上に、歴史的に見ても侵略国家だぞ!」
「知ってるが?」
「っ…!やっぱり、セレンさんの言う通りだった…」
淡々と正樹は自分の考えを叩きつける。
しかし、その考えは危険だと勇樹が必死に言い募るが、そんなことは承知の上だ。
それを聞くと絶句し、苦しげに言われた事に正樹は首を傾ける。
何を吹き込まれたかは知るところではないが、少し気にはなる。
が、どうせ碌なことではないのだろうと興味は一瞬であった。
「俺は、君の幼馴染として、知っていて危険な国に行かせることはできない!」
「へぇー。なら力尽くで止めてみろよ」
力強く言われた言葉は正樹に届く気配は無く、寧ろつまらなそうに適当に答えるだけだ。
それが分かった勇樹は、悔しげに顔を歪めながらもここを通してなるものかと抜剣する。
抜かれた剣は魔力に反応するように波打ち、剣身は細身で流麗。
それは教会から勇樹に与えられた選ばれし者、すなわち勇者にしか扱えないとされる伝説の魔導具、聖剣。
魔を討ち滅ぼす為に生み出された剣から放たれる力は絶大。
そんな中、漏れ出る力のみで場を圧迫するほどの圧を放つ兵器を前にしても、正樹の表情は小揺るぎもし無い。
勇樹としては、この威嚇で戦意を挫きたかったところなのだが様子から無理だと悟ると、緊張から唾を飲み込む。
一触即発。
そんな中で一番初めに動き始めたのは亜蓮だった。
「なら、そうさせてもらうわ。最初は俺が相手してやんよ。ちょうどイラついてたしな」
「ん?いやいや、全員まとめてこいよ。一人づつとか時間かかるし、人待たせちゃってるし」
「雑魚が粋がるんじゃねぇぞ、正樹ぃ!!」
力のこもった踏み込みに、足場の石畳がミシリと砕ける。
そうして亜蓮が風切り音を立て正樹の目の前に到達すると、唸りを上げそうな勢いで拳を引く。
大平亜蓮。
転移した学生達の中で、他の追随を許さぬ圧倒的な身体能力を授かった男。
模擬戦での戦績は、朱音、光、勇樹、純司を除いて敗北はなく、朱音以外には勇者にすら勝ち越している様は学生達に畏怖を抱かれ、ついぞ呼ばれたあだ名が『鉄怪』。
神から与えられた肉体に、有り余る戦闘センス、幼少の頃に格闘技で得た技術。
それだけでも十二分に強者たりえたのだが、彼はそれをさらに脅威へと押し上げるスキルも手に入れていた。
『金剛力士』と呼ばれる肉体を硬くするだけの能力だ。
本来であれば。
ここに亜蓮の能力が加わることにより、武器を不要とする圧倒的な存在へと化ける。
これらが彼を同じ転移者から『鉄怪』と呼ばれることになった所以。
そのポテンシャルは、転移してきた時点で上級騎士に並ぶほどであった。
ボクサーの踏み込みのような前傾の荒々しくも鋭い踏み込み。
石畳が砕けるのも納得な動きだ。
乱雑に引かれたような腕もその実、力を最大限発揮できる位置に留められているのだから、そこから繰り出される拳は如何様なものなのか。
正樹は想像もつかない。
分かることと言えば、その拳は間違いなく必殺の一撃であることくらいだろう。
悠長にそんな感想を抱くと、ふと気がつくことがあった。
迫り来る脅威を前に、正樹は自分でも驚くほどに余裕があった。
と、言うのも…
(おー、すげぇ。ぜんっぜん体動かないけどめちゃくちゃ見えるな)
見える景色はコマ送りの様に、ゆっくりと流れてゆく。
まるで、命懸けの戦いをしたあの時の様に。
漫画あるあるの覚醒的なものでもしたのかな?と少し興奮しながら思うも、冷静なところで後天的にスキルが誕生しただけだと結論付ける。
動体視力が上がる能力と当たりをつけて、泥の中にいる様な体を動かし始める。
(重い?いや、遅い?気持ち悪いな)
思う様に動かない体に、不快感を覚えるもスキルを解除すれば反応できるかが怪しい。
というよりも、そもそも解除の仕方が分からない。
仕方が無いと出ないため息を吐くと、暇な時間を使って戦況把握に努める。
さて、他の奴らはどう出る?と視界の端に意識を向けると、亜蓮の行動に予想外であったように驚いた様な顔をしていた勇樹、同じ様な表情をして飛び出していた朱音が見えた。
他の二人はと言うと、そもそも反応が間に合っていなかった。
寧ろ、一瞬の出来事で驚きながらも亜蓮を止めようと動き出している朱音がおかしいのだが、感覚がズレている正樹には関係のない話だ。
そろそろ右拳が来る頃かと意識を亜蓮に戻すと、ドンピシャの場面で糸を引く様な拳を正樹は最小限の動きで手の甲を使って払う様に逸らす。
神業。
正樹の状態を知らぬ者が見ればそうとしか思えない行動を前に、一連のやり取りを認識できていたものは先ほどとは別の驚きに固まる。
それは、殴りかかっていた亜蓮も例外では無く、反応されてもこうもあっさり防がれるとは予想していなかった。
その固まった一瞬。
左に遅ればせながら動かしていた右手の掌底が、大きな破裂音を伴って亜蓮の顔の側面を捉える。
ぐらりと揺れる体。
何、と揺れる頭で困惑する。
『鉄身』は身体能力の高さと魔力の量により体の強度が上がり、亜蓮ともなれば鋼の武器すらも弾く強度になる。
スキルを使用していたので、素手での攻撃など諸共しないのだが、大きな音を立てたことを除けば大したことの無い攻撃。
それどころか、生身であっても大した威力では無いはずなのだが、何故ここまでのダメージを受けているのか。
その原因は受けた本人にすら分からない。
しかし、そんな困惑よりも反応すら出来ずにやられたことに対する怒りで堪える。
怒鳴り飛ばす様に体に命令をすると、亜蓮は混濁する意識を無理やり元に戻し、崩れる体を立て直す。
「ぐぅ…ッ!」
正樹としては今の攻撃で意識を刈り取るつもりだった。
刈り取りはしないまでも、体が崩れると予想していたのだがまさか持ち堪えるとは思わずに目を細める。
「まぁ」
「こなくそがッ!!」
いまだに棒立ちと言っていい体勢の正樹。
亜蓮は余裕ぶった脇腹を砕いてやろうと、鋼鉄の足を横なぎに払う。
筈だった。
繰り出そうとした足は、振り切る初めのところで正樹が腿の上に足を乗せることにより止められていた。
「なッ!」
「動きが見えてれば問題無いな」
そして、またしても繰り出される掌底。
今度は真正面からモロに喰らうことになると、後ろによろめく。
今度は様子見をする気は無い正樹は、懐に潜り込むと亜蓮の肩を掴む。
そこから溝内に膝が叩き込まれ、肺から空気が外に締め出される。
今度は疑問に思うことすら許されない、亜蓮を脅かす攻撃の数々。
グラグラと揺れる頭で、胃液を垂らしながら地面を見つめるしかできない顔に下から打ち上げる掌底が迫る。
衝撃で今度は天を見上げると、今度こそ踏ん張ることもなく亜蓮は仰向けに倒れる。
正樹が息を浅く吐き出し、遅れていた時が元に戻ると目を見開く幼馴染達を視界に収める。
「亜蓮…」
「「「…」」」
十秒に満たない短な時間。
先程の驚きとは別のベクトルの驚きを勇樹は浮かべると、手を伸ばして小さく呼びかける
。
しかし、それに応える者は居ない。
誰がどう見ても亜蓮に意識はないのだから。
動き出していなかった大輝と姫乃の二人は、何が起こったのか理解出来ずに困惑するのみ。
唯一、近くで一連のやりとりを見て理解していた朱音は、驚愕とした表情を作ると目に警戒の色を付けて刀に手を置く。
「貴方、今何をしたの?」
「ちょっと強めに叩いた」
「そう…」
「そんなことより、早く全員かかってこいよ。今のお前らに負ける気しないしな」
どうやってあれだけの攻撃で亜蓮を戦闘不能に出来たのか。
未知の攻撃を前に、朱音意識を戦闘脳へと切り替えるとダメ元で聞くことにした。
そして、案の定答えになってない答えを正樹がすると、朱音は表情を動かすこともなく予想通りだと深く追及することはない。
そのことに正樹はあっさりだな、と落胆をする。
寧ろ、もっと噛み付いてきて冷静さを欠いて欲しいところではあったが、難しいなら仕方ないとしてニヤリと笑い挑発を行う。
さて、効果のほどはと注意深く全員を観察するも驚いている以外変化は見られない。
大見え切って止めるなど言っていた勇樹に至っては、放心状態とすらいえる。
「大輝、姫乃、援護をお願い。私が近づいて倒すわ」
一方で一番動揺を誘いたかった朱音は、一ミリの油断も見えない雰囲気を出すと簡潔に二人に指示を出す。
チラリとしか見ていないのに勇樹の精神状態も把握していると言うことは、視野も問題なく広いと言うこと。
勇樹一人を崩れてるだけでも儲け物と思うこととして、パーシィの形見である剣。
騎士剣パーシヴァルを抜剣する。
「分かった。姫乃、僕が広範囲に魔法を放つ。避けた先を狙え」
「ワタシに命令しないで」
『ストーン・ショット』
間をおかずに大輝が了承すると同時に、腰につけられた魔導具である魔導書を手に取り構える。
次いで姫乃に指示を出すと、本人は不快な顔を作り難色を示すも同じく魔導具の両手杖を何処からとも無く取り出す。
口はああだが、指示に従ってもらえることが分かると大輝は短縮詠唱で石の礫を正樹へと放つ。
視界一面と評していい範囲攻撃。
正樹としては、朱音に張り付いて盾にしたいところではあるのだが、残念ながら示し合わせたように範囲外へと退避していた。
「まぁ、仕方ないか。『マッド・ピラー』」
正樹の身体能力的に朱音に追いつくのは困難。
それに、今の体は本調子とは程遠いのだ。
威力は加減されてはいるが今の状態で受けると普通に致命傷になりかねないので、妥協案で一先ず泥の柱を同じ短縮詠唱により相殺させる。
視界が泥一面になると、とてつもない速さで急接近する気配が一つ。
(なんでさっきのあれだけの会話でこんなことできるんだよ。姉弟だからってこうはならんだろ)
一先ず後ろに下がると、遅れて泥に何かが通り過ぎるのが見える。
すると、自重に耐えきれなくなった泥柱がズルッと斜めに崩れる。
防御性能は正樹が扱う魔法の中で随一のはずなのだが、学生最強を前にはペラ紙と同様だ。
崩れた泥柱の後ろから朱音が出てくると、踏み込みと同時に峰打ちが放たれる。
それを危なげも無く剣で逸らすと、それは様子見だと言わんばかりのニノ太刀が神速で迫る。
正樹からすれば一撃目もかなり速かった筈なのだが、二撃目の攻撃は倍どころの速さではない。
このままであれば防ぐのは難しい。
今までであれば。
先程の亜蓮とのやりとりで感覚は掴めていた。
スゥーッと正樹は息を深く吸い込むと、またも泥の中にいるかの様な感覚に襲われる。
緩慢な時の中、ゆっくりと動く刀に剣を乗せると再び息を吐き出す。
感覚が元に戻ると、けたましく擦れる金属音を出しながらも一刀が逸れる。
強く踏み込んだ弊害で朱音の体が前に逸れ、チャンスかと一瞬思うも一瞬の不快感を覚える。
勘がよろしくないと警告したことにより後ろに大きく飛ぶと、朱音の返す太刀が腹の前を通り過ぎる。
(危な)
分かってはいても、刀をギリギリで避けるのは怖いものだ。
無表情な顔と反比例する様に心の中の正樹は、冷や汗をかきながら心臓をバクバクさせる。
今日の勘様の精度はピカイチだなぁ、と苦笑いを漏らすと今度は大きく体を後ろに逸らす。
すると、前髪を数本切り裂きながら風の刃が目の前を通り過ぎる。
(…マジでこのスキル無きゃ何度死んでるんだろ、俺)
今日一番の警笛に促されての行動だったが、まさか殺すつもりで魔法が放たれたれるとは思ってもいなかった。
殺気のする方を見ると、予想通り姫乃が憎々しげな表情で正樹を睨みつけていた。
周りを気にしないのであれば良くて舌打ち、悪ければ癇癪を起こしそうな勢いだ。
さて、あれはどうしたものかと正樹は悩みたいところではあるが、相手はそんな猶予を与えることはない。
倒した体を持ち上げると、朱音があと数歩の間合いに近づいてきていたのだ。
息を吐く時間ももらえずに、辟易とした感情を覚えながらも冷静な部分が作戦を組み立て終わる。
「一先ず、仕切り直させてもらおうか!」
「そんな暇、与えるわけないでしょ!」
上段に構えられた刀が迫る中、正樹は後ろに下がることにより躱す。
しかし、それでは返す太刀で仕留められるが目的は一撃目を躱すことだった。
後ろに引きながら大きく息を吸い込むと。次の瞬間。
正樹の口から煙幕が勢いよく噴き出すと、全員視界を白で埋め尽くす。
咄嗟のことに朱音は顔を片手で庇うと、状況が悪いと一旦引く。
(やられた!)
視界を潰されたことによるデメリットもあるが、何よりも三人の連携を断たれたのが一番の問題だ。
朱音は何かをさせるつもりは無かった。
しかし、あの行動はどうやっても防げなかったとはいえ、それでも思惑通りに動かされたことに悔しさを覚える。
小さな焦りが生まれるが、持ち前の精神力ですぐに立て直すと一先ず、目を瞑り気配を探る。
そこに、同じく気配を頼りに正樹が横から切り込む。
「甘いわ!」
キィン!と武器のぶつかり合う音が鳴り、不意打ちは失敗に終わる。
そのことを正樹は悟ると、この一撃で倒せなかったことを少し残念に思う。
が、あくまでこれは予想できていたことでもあるのだ。
次善策として片手に握っていた物に魔力を込めると、目を瞑り集中している朱音の足を目掛けて投擲する。
投擲物の大きさは野球ボール程。
塞がれた視界の中で防ぐのは困難の筈なのだが、朱音は投擲物を刀で捉えることに成功する。
恐るべき能力。
この投擲物がタネも仕掛けもないのもであれば、次の攻撃で正樹を捉えることができたかもしれない。
しかし、それはもしもの話。
投擲物は刀に当たり切り裂かれるかに見えた。
実際には切り裂かれることなく、強い衝撃と音を伴う爆音を撒き散らして爆破した。
「ぐぅッ…」
音に紛れる苦悶の声。
体を大きく揺さぶる衝撃は平衡感覚をくるわし、それは今の自分の状況を把握することすら困難とする。
その余波でまとわりつく様な濃霧が朱音と共にドーム状に吹き飛ばす。
そのまま山形に飛ぶとバウンドしながらゴロゴロと転がり、正樹は立ち上がらないことを確認すると的を絞らせない様に残留している煙に隠れる。
「朱音、返事をしろ。朱音!クソ、小賢しいぞ『ウィンド』!」
爆裂音に大輝が姉の安否を確認するが、返事が返ってくる事はない。
視界が封じられている中、仲間の一人の生存が確認できないというのは相当な不安を煽る物だ。
にも関わらず大輝は、悠長に返事を待つことなど出来ないと即座に判断すると、悪態をつきながらも魔法で風を生み出して煙幕を吹き飛ばそうとする。
煙の中を移動する正樹は、中々に判断が早いなと舌を巻くが一手遅い。
風が吹き付けて煙を蹴散らす中、大輝達は視界が晴れると共に真っ直ぐに突っ込んでくる正樹の姿に不味いとたじろぐ。
大輝も姫乃も純正の魔導士のために、近接に持ち込めば倒すのは容易い。
チェック。
『ウィンド・カッター!』
そう簡単に近寄らせては貰えない。
大輝の指示通りに控えていた姫乃が、驚きながらも複数の風の刃を放つが狙いが荒い。
今の正樹には多少の障害物にしかなり得ない。
小刻みにステップをしたり、剣で軽く打ち払うだけで凌げる程度だ。
「二人目!」
『マジック・シールド!』
一瞬で距離を詰め終えると、剣の腹を大輝めがけて振り抜く。
しかし、腐っても能力上位の転移者。
ガキンッ!
ギリギリのところで魔法が完成すると、正樹の剣は半透明な硬質な物によって阻まれてしまう。
剣を強く打ちつけた正樹の腕が後ろに流れると、衝撃による痛みに顔を顰める。
ここにきて初めてできた決定的な隙。
「今ダッ…!?」
攻め時は今だと、援護に回らせていた姫乃に合図を出そうとした時。
ゴスっと大輝の横っ腹に突き刺さる土の柱。
全く予想の出来なかった攻撃に、防御をすることもできずに横に打ち出される。
一瞬宙を舞った後に地面に叩きつけられる。
「大輝!」
「言ったろ。二人目だって」
今度は姫乃が叫ぶ様に名前を呼ぶが、大輝が反応を示すことはない。
代わりに聞き分けのない人に言い聞かせる様に答えると、肩をピクリと動かして振り向く。
大輝が元いた場所を見ると、いつもの様な覇気のない顔で痛めた手をぶらぶらとする正樹が底冷えする目で姫乃を見ていた。
「っ…!『烈風の刃よ、切り裂け!ゲイル・カッター!』」
それは敵意に対する恐怖か。
果てはふざけた態度をとる者への怒りか。
何にせよ、姫乃は『ウィンド』の上位属性である『ゲイル』にて、ありったけの殺意を持って切り裂かんとする。
上位属性。
基本の属性をさらに強化することにより初めて使える属性。
要求される魔力や操作難易度は高いが、それに見合う威力と特性を発揮する。
火ならより長く、強く燃て、風であればより速く、より鋭利に。
その威力は中級の戦闘力を有する生き物であろうが、殺しうるだけの力がある。
触れれば真っ二つ。
威力は絶大、速度は高速、殺気と合わさり死の風と化した魔法の刃。
死が迫り来るが、正樹は動じた様子もなく体を少し捻るだけで避ける。
「は…?」
(美少女がしちゃいげない顔してるな)
呆気に取られた声が姫乃から漏れる。
発動すれば必殺。
これが普通の転移者、学生であれば反応することも出来ずに殺せていただろう。
今回も例に漏れずそう思っていたからこその態度だが、生憎と正樹からすればそこまでの魔法では無い。
何せ、最近正樹と戦う者は大抵が見てから反応するのが困難な攻撃ばかりで、化け物オーガなど通常攻撃が『ゲイル・カッター』と変わりがなかったとすら言える。
それに比べればゼロ距離でもなければ威圧感もない、使い手も状況もイージーだ。
懸念として連射されることで、次弾を警戒するが姫乃の様子を見るに杞憂であるようだ。
「それで終わりか?はぁ、なら三人目」
「ひっ…!」
この程度か。
落胆では無いが拍子抜けしたのは間違い無い。
ダンジョンでの濃密な経験と比べるのはおかしいのだが、正樹の考えを汲み取る者は誰もいない。
殺気に当てられたことにより正樹の思考が戦闘用に切り替わってしまい、平坦な声での問いかけとなってしまう。
それに底知れぬ恐怖を覚えた姫乃は、引き攣った声と共に腰を抜かしてしまう。
正樹がコツコツと石畳の上を歩きながら近づくと、近づかれるにつれて体が震え始める。
「ちょ、ちょっとまって!こ、こ、降参!降参するから!」
上手く回らない呂律を必死に動かして、目の端に涙をこさえて叫ぶ。
目の前には震える女性。
日本での価値観的にも、正樹本来の性格的にも無抵抗の女子にトドメを刺すようなことはしない。
本来であれば。
しかし、今の正樹要望を聞き入れる気はさらさら無い。
「降参?何言ってんだ。お前、俺のこと殺す気満々だったよな?」
「そん、なこと無いよ…」
「いやいや。殺気はともかく、あれだけ殺傷性の高い風魔法を使って言い逃れできないだろ。最後に至っては烈風魔法だったしな」
今の正樹には、敵対した相手を無事に済ますという選択肢は無い。
「そんな!」
「ま、骨の一本や二本は自業自得ってことで割り切ってくれ」
寧ろ殺さない分、幼馴染対する優しさと言うものがあるくらいだ。
喋っているうちに二人の距離は無くなると、正樹は剣の腹で殴りかかるように振り下ろす。
「勇樹、助けてッ!!」
甲高い音が辺りに響き渡る。
剣が捉えたのは姫乃では無く、硬質な金属で出来た剣であった。
「ここまでする必要無いだろ!!」
正樹は狼狽えた様子も無く、姫乃の助けに入った相手。
鍔迫り合いながら勇樹を見据える。
絶対的に価値観の合わない相手。
目の前の勇樹がまさにそれに該当するのだが、面倒だとは思いつつも理由を説明はする。
「俺は殺されかけたんだが?骨折で済ませるんだから安いだろ」
「良いわけ無いだろ!姫乃は女の子だぞ!!」
淡々と言われた理由に勇樹は激昂で返す。
正樹としては、だからどうした?それがなんの関係が?と言う思いでいっぱいである。
やはり無駄骨かと思うが、そんなことは分かりきっていたことだ。
日本ですら噛み合わなかった二人だ。
それがこちらに来て異世界の常識に染まった人と、日本の常識のままの人では、話し合いが成立するわけもないのだ。
文字通り生きる世界が違うのだから。
昔であれば正樹も同意したであろう言葉を受けても、心が小揺るぎもしない。
ただ目的を果たすだけだ。
邪魔なものを切り落として。
「そうか。なら順番変更だ」
「正樹ぃッ!!」
『雷よ』
分かりきっていた言葉、分かりきっていた結果。
感情がうかがえない抑揚の無い声で正樹は決定事項を伝える。
それを否定の言葉と受け取った勇樹は、再び怒りを噴火させて押し退けようとする。
しかし、それは呟かれた呪文により叶うことはない。
剣が電流を纏うと、絡みつく様に聖剣を伝って勇樹の身に襲いかかる。
本来はこけおどしにしかならない攻撃。
これしきの電流など魔力強化により効くはずも無いのだが、激昂して冷静さを欠いており魔力を防御を回せていなかった。
勇樹の体に痛みが走り抜け、呻き声を上げて数はよろめいてしまう。
呆気ない。
異世界に来て勇者と呼ばれ、恵まれた能力、才能、力、有能な仲間を持ちながらこんなことで劣勢になるとは。
このまま剣と魔法のみでも倒せてしまうのではと思う。
だが、正樹が勇樹よりも身体的に劣っていると言う事実は変わず、ここで落胆して手を抜くことは無い。
正樹は懐から針を取り出すと、電流でよろめく的に投擲する。
それにどうにか気が付けた勇樹は、鈍い体で剣を薙ぎ払う。
そこは腐っても勇者か。
(どちらにしろ、詰みだな)
カキンと音を鳴らして弾かれるが数本が限界だった。
守りきれなかった足や腕に針が深々と刺さり、勇樹は顔を歪める。
間を入れず正樹が接近すると、防御のために剣を構えようと動く。
「は?」
厳密に言えば動こうとしたが、腕が上がらない。
ならば引いて体勢を立て直そうとするが、足も縫い付けらたかのように動かない。
体の異変に間抜けな声を漏らすと同時に、勇樹の腹を拳が強襲する。
「ガハッ…!う、ヴェぇ…」
内臓を襲う衝撃に、膝をついて吐瀉物をぶちまけさせられる。
一体何が?
腹をなぐられたことでは無い。
何故体が動かないのか。
今すぐ正樹に問い正したいが、息をうまく吸えずに体を丸めることしか出来ない。
今勇樹に許されているのは、みっともなく地面を見つめることだけだ。
「言ったろ。お前の手を取る価値が無いって。思想だけじゃなくて考え方も甘ぇ。そんな体たらくでどうするんだよ勇者様」
一向に立ち上がる様子を見せない勇樹。
あまりの情けなさを見て、正樹は癖になってきているため息を吐く。
こんなもんかと見下ろすと、呆れを通り越して失望しながら問いかける。
答えが欲しくての質問ではない。
正樹はこれ以上は不毛と判断すると、意識を刈り取ろうとするがその前に一言。
「別れの選別に小言をやるよ。そのままじゃ、守れる物も守れない。近いうちに誰か死ぬぞ」
気に食わない幼馴染に対する、せめてものお節介。
それに反応を示してどうにかの思いで勇樹は顔を上げるが、次の瞬間にはアゴを蹴り上げられて意識を落とす。
「三人目」
正樹は達成感もなく、ゲームのキル数を数える様に言うと次の標的を見る。
呆然とへたり込む姫乃へ。
その様はまるで、正義の味方がやられた姿を見るヒロインでは無いか。
それを想像するとベタな、とつい面白くなってしまい思わず鼻で笑ってしまう。
それを聞いた姫乃は、時間を取り戻したかの様に動くとギョッとした表情を作る。
緩む気持ちを無表情で引き締めると、さっさと仕事を済ませようと足を進める。
「遅れたな。四人目だ」
「ひっ…!?」
完全なる戦意喪失。
あまり気の進むことでは無いが、次のことを考えると何もしないというのはまずい。
漏れる不快感を冷徹さで抑えると、業務的な処理をする。
今度こそ、と剣を振り上げる。
「マジか」
背中にチクリとした感覚。
予感に身を任せて振り返れば、倒れていた筈の朱音が気配を絶って切り掛かっていた。
正樹とて、あれで気絶していないことは分かってはいたが、それにしても回復が早すぎることに驚く。
朱音に使った爆弾は人を殺さないくらいの火力に調整はされてはいたが、衝撃の威力が本来の物よりも高い。
それだけで無く、中には勇樹の動きを封じた神経毒が仕込まれていたのだ。
まともに受けてたったの数分で動ける様になっていることに、呆れを滲ませながら呟く。
急いで横に避けると、元いた石畳を砕く様を見て正樹は肝を冷やす。
この攻撃も前と同じで峰打ちではあるが、当たれば致命傷なのは間違いないだろう。
(これ、本当に爆弾受けたか?)
正樹は自分の記憶を疑い始めるが、目の前の朱音のところどころ破けた服装を見るに、間違いなく当たってはいる。
次に振われる刀を手に持った剣で逸らすと、正樹は違和感を覚える。
刀をそらすことには成功するが、そこから十八番である淀みのない流れるような連撃が朱音から繰り出されるが、それを難なく捌くと確信を得る。
(いや、動きが悪いな。と言うことはこいつ、あれモロに受けて動いてるのか。弱めとはいえ、神経毒も盛ってあるのに!?化け物かよ…)
一撃一撃は普段に比べれば、速度も威力も大したことはないが、それでも普段の様に体を動かせているだけでも衝撃だ。
人間としての基本スペックが高い勇樹ですら、神経毒を盛られると顔を上げるのが限界だったのだ。
同じ毒を受けているにも関わらず攻撃に隙が無いのだから、その積み上げて来た技術には頭が上がらない。
下手をすれば立っているのすら難しいかも知れない体で、朱音の振るった剣先が腕を掠める。
同じ流派を齧った者として、正樹はその誇りに畏怖すら覚える。
それは誇りなどでは無い、もっと上の執念とすら言えるのではないだろうか。
その執念の熱に当てられて正樹も、辞めたはずの剣士として、その技術と誇りに敬意を示して正々堂々の試合をと思う。
しかし、それは正樹の信念に反する。
「ふっ…!」
「はっ…!」
ぶつかり合う金属音。
正樹は反撃代わりに刀を強く振り払う。
朱音も対抗する様に振り下ろすと、両者引かずに武器を振るわせる。
「悪いな。出てく前に剣のリベンジでもしようかって考えてたんだけどな」
「受けてあげてもいいわよ。貴方が出てくことはできないから」
カチカチ刃を合わせながら、両者余裕を見せる様に会話での応酬。
正樹の謝罪に口を吊り上げて挑発する様に答えるが、この時点でそれが叶うことは無い。
正樹も満身創痍な体とは言え、朱音の負傷具合はそれを上回る。
それを表すかの様に、筋力で劣るはずの正樹に朱音の刀が押し込まれている。
このまま力比べをしていても勝敗が決すだろうが、それでも朱音は勝負を諦めていなかった。
軋む足、力の入らない腕、鈍る思考。
そんな最悪のコンディションの中から繰り出された絶技。
息を鋭く吐き出し、不意に間接の力だけを抜くと正樹の剣が外にそれ始める。
朱音が力の抜き方を少しでも失敗すれば、ただ力を抜いただけで切り捨てられるだけであったろう。
だが、そうはならずに正樹が加えていた力が外へ向かい出す。
この土壇場で最適解とすら言える逆転の一手。
神宮正樹と言う剣士は、今この場ではどれだけ足掻こうと、どれだけ有利を取ろうと、剣技に置いては東城朱音の足元にも及ばないのだろう。
だが。
(本当にすまん。俺に勝つ手段はそれしか無いよな。それが分かってたから…)
だってそれは。
「…!」
急に朱音の足が沈む。
伝わる感触は湿った絡みつく何か。
まるで泥に足をとられたかの様な。
「そう来ると思ったし、俺も多分そうするからな」
だって、それは剣士を辞める時。
朱音との最後試合の際に、彼女を打ち破るために正樹が使った技なのだから。
あの時の試合と同じ様な状況で己を負かした技だからこそ、負けず嫌いな彼女はそれを選ぶと信じられた。
泥に足がとられ、バランスの崩れる朱音。
いつの間にか剣から離されていた掌が、溝内を強く捉える。
体がビクリと一度痙攣すると、握られていた刀が手から滑り落ちる。
正樹は、倒れる朱音の体を抱きしめるように支えると静かに地面へ寝かす。
「四人目」
タスクをこなし終えた様に、淡々とカウントを進める。
そこには達成感は無い。
うざったく目障りな幼馴染達を倒した仄暗い喜びも、昔仲良しだった幼馴染達に対する悲しみも無い。
少し感情的な気持ちになるが、それがどんなものなのか正樹に答えることは出来ない不思議な感覚。
モヤっとする気持ちを傍によけ、今度こそ最後の標的である姫乃へと視線を向ける。
少し痛めにあってもらおう。
そんなことを考えていたが、朱音との戦いを終えた後では子鹿の様に震える女の子をいたぶると言うのは、非常に気乗りがしない。
弱い者いじめが嫌いと言う訳でも無ければ、今更敵対した者を許すと言った善意を持ち合わせている訳でも無い。
正樹と言う人間は必要であれば必要以上に人を痛めつけるし、騙し打ちは上等で奇襲、不意打ちは大の得意。
人を部類分けしたら間違いなくクズにカテゴライズされる自信しか無いのだが、今に限って言えば見逃すくらいならいいんじゃね?となって来ていた。
要するに。
「萎えた」
「へっ?」
「はぁ〜、今回はチャラにしてやる。次は無い。じゃあな」
脱力をするといつもの様な気怠げな表情に戻る。
そして、頭をバリバリと掻いて居心地が悪そうに早口で言いたいことを終える。
最後に、一応は長い付き合いの幼馴染に別れの挨拶をぶっきらぼうに残すと、足早にその場を後にする。
これでよかったのだろうか。
もっといい決着の付け方があったのでは無いだろうか。
最後に見た姫乃の目に浮かんでいた恐怖の色を気になって思い出し、らしく無いと鼻で笑い飛ばす。
もう終わったことだと、いつもの様に思考を放棄すると、監視の無い解放感と新しい帰路に少しの期待を正樹は持って進むのだった。
一先ずはここで終了です。
休憩期間を設けた後に2章を始めると思います。
最後にモチベ維持のために、評価とブクマよろしくお願いします。




