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社会不適合者達による成り上がり英雄譚  作者: 鳩理 遊次
一章 社会不適合者達と異世界転移
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1章 2話 欲しい力は自分の望む力とは大抵かけ離れているもの

ヒカルのスキルに問題があり過ぎたので修正しました

その光は優しくも穏やかな緑の光だった。

まるで風のように吹き抜ける光なのだが、同時に非常に力強くも感じる。

光の中心に居る勇樹は、驚いたような表情を浮かべており、クラスメイトも同じ様な顔をしている。

今までの流れで、ある程度予想できていていた学生も居たようだが実際に目の当たりするとやはり驚く。

例外が居るとすれば、新しい自分にドキドキしながらもニヒルに笑う痛めな学生か、既にもうなんでもありだなと割り切り、隈をつけた顔で「まぶい」と呟いている学生のどちらかだ。

同じく水晶に手を当てている二人もそれなりに輝いているが、勇樹の水晶から放たれる光の前ではくすんで見えると言うものだ。

さらに、光量以外にも明らかな違いとして勇樹自身も輝いているのだ。

そして、驚いているのは学生だけではない。

驚き具合で言えば、神官達の方がより大きいとさえ言え、少しの間言葉を失っていたグイネスが動き出し膝をつく。


「勇者様、お目にかかれて光栄です!」


「「「「光栄です!!」」」」


グイネス以外の神官やシスターが一斉に膝をつき、敬う姿勢を取り始めたことにより目を白黒させる学生達。

敬われている勇樹が、一番驚いているのだがすぐに立ち直る。


「何なんですがいきなり、これはどういう事なんですか」


「貴方様は、どうやら勇者の称号を神より与えられたのです」


「勇者?何で僕がそうだと思うんですか。確かに光は強いですけど」


「はい。この水晶は触れた者の大まかな魔力量と適正属性を調べることが出来るのですが、勇者は神に愛されし者である為にその魔力が他の人類とは異なった物となるのです。それをその水晶で見分けられ、勇者はそのお体からも魔力が可視化できるようになっているのです」


先程のまでの事務的な会話から一変して、まるで敬う対象の様に勇樹に接するグイネス。


「それでは、測り終えた者ははそこに居る神官の指示に従って次の検査所に移動してください。勇者様、次の検査場所にご案内します。貴方方も着いてきてください」


グイネスの豹変ぶりには唖然としかならないまでのことで、勇樹は言われるがままに行動する。

何よりも他の測り終えた二人に対する態度との差が激しい。

少し事務的な扱いを感じる二人とは違い、勇樹には満面の笑みを浮かべており、このまま行けば手揉みを始めそうな勢いである。

そんな光景に開いた口が塞がらない面々を、任された神官は手を叩き先を促し始める。

そして、次々に水晶に手を当て検査を終わらせていく。

最初のざっくりとした説明では、この世界の魔法属性は基本六つであり、火、水、風、土、闇、光となっていると説明されていた。

そして、水晶はこの六つのうちどれか又は複数の色に光る。

その光も個人差があり、光の強さにより大まかなその人物が持つ保有魔力量に依存し多いほど強く光る。

学生は基本強い光が一つか、少し劣るが二色、三色に輝くものが普通な様で勇樹のような輝きを放つものはいない。

最初は綺麗な光を見て楽しめていたが、次第に飽きてきて一番後列にいた正樹、光、純司

、咲の四人は小声で雑談するくらいの余裕が生まれていた。


「なんか最初はおおってなるけど、さすがに飽きた」


「そうだな。それにユウキのインパクトが強すぎて他が普通に見えるのも問題だよな」


「そうだけど、一色さんや東城さんは凄かったよね」


「たしかに」


「まぁ、朱音はあれくらいなら意外性はなぁ。姫乃も腐っても秀才だしな」


「マサくん酷いよ。いくら一色さんが嫌いだからって腐ってなんて」


「あいつは猫被ってるだけで中身はごみ溜めみたいなもんだぞ。幼馴染の俺が言うんだから間違いない」


そんな雑談をしていると随分と人がはけており、いよいよ光の番が回ってくる。


「やっとオレの番か」


そう呟き何気なく水晶に触る。

躊躇いや緊張もなく適当に添えられる様は、怒涛の展開に疲れたのもあり、どことなくうんざりしているようにも見える。

勇樹とその他の学生達の差を見て、自分なんて大したこと無さそうで目立たないだろうと思って気を抜いていたのが良くなかった。

刹那。

部屋を最初に包んだ、優しくも力強い光に負けないくらいの眩い光が部屋を駆け抜ける。

最初の吹き抜ける様な優しい光と比べて力強く照らす様な眩さ。

そして、光はただ強いだけでなく勇樹の様に体も黄色に輝く。

神官の様子からして勇者はごく稀に現れるくらいの雰囲気だった。

実際にその通りで、予想していなかった様子で神官が腰を抜かす。

光が驚きの表情をしたあとに嫌そうな顔をしていたのが印象的だが、神官の驚きようがこれまた面白く皆が間抜けな顔を晒す。

まるでギャグの様にも見えるが、それほど衝撃的なのだろう。

唐突なことに、困惑とした表情で光は助けを求める様に友人達に視線を向かわすが、その表情はすぐに曇ることとなる。

一番最初に目が合った正樹は、まるでサイ○人だ、と顔にありありと書いてあり、空気を読んで笑うことはなかったが顔がニヤついている。

咲は顔を俯かせ小刻みに震え、純司に至っては舌を噛んでいるようだ。

そして、光が目の前の記録を撮っている神官に声をかけようか戸惑って手を彷徨わせていると、勇樹の時と同じように神官やシスターが膝をつき先程と同じ言葉を述べる。


(いっそここまでくると面白いな)


そう正樹は心の中で独り言を言う。


「まさか勇者様が二人も遣わされるなんて、奇跡だ!」


「ああ、これも我らの祈りがセフィラトラ様に通じたのだろう」


「おめでとうございます、神官様!」


「ささ勇者様、次の検査所にご案内します」


周りの対応にかなり引き気味な顔を作る光。


「すみませんがコイツらの結果も気になるので見ていっていいっすか?」


「そうですね。残りも六人ですし問題ないでしょう」


「あざっす」


「では次の方、水晶に手を」


このテンションの神官に連れられていくのは余程嫌だったのだろう。

早口で頼むと神官も問題ないようで了承する。

そして、咲と淳二の番が回るが途端に二人の表情が固まる。

なにせ、目の前の光の事があるのだから少し自分は大丈夫だよね?と緊張した顔になると、水晶に手を置くことを躊躇う様に置く。

勇者と言う名誉を賜われるのにそれを嫌がるとは、なんとも罰当たりなことなのだが、目立つのは嫌なのだ。

そしてまたも満ちる光。

それも二つも。

あまりの光景に気絶するものまで現れる始末だ。

方や勇者である二人と同じように体からも光が溢れ、少し光は劣るが紫色に輝いているのだ。

方や勇者の証は出てはいないが勇者をも超えるであろう六色の光が水晶からこれでもかと溢れ出る。

これには、残りの学生も愕然しかない。

二人と一緒に測定していた学生など、壁のシミの如く目立たなく、ご愁傷さまとしか言い様のないインパクトで立つ瀬がない。


「ま、まさか勇者が三人も現れるなんて!せ、聖女様にお知らせしなくては!」


「お、落ち着け。それは全ての者を測り終えてからでも遅くはない!」


「そ、そうだな、では最後の人」


そうして最後に残った者。

神宮正樹、上條修司、永谷元の三人は水晶の前に手を置く。

二人はもしかしたら自分もと思っているようで、緊張した顔には期待も見える。

周りにしても、もしかしたらまだ勇者みたいなすごい才能を持った者がいるのでは無いか。

中でも光、純司、咲と仲の良かった正樹に集まる視線は凄く、まさかまだあるのでは無いかと期待するように冷や汗を浮かべるものが大半だ。

先に測り始めた二人の結果は学生の中では普通なもので黄と赤、青と緑で光の量も差異があれど平均の範疇で落胆の表情が見える。

そして集まるは正樹の水晶。

その色は…


「何これ…」


辺りから向けられるは、今し方測り終えた二人とは比べ物にならない程の驚きだ。

何せその色は…

なんとも言えない汚い色をしていたからだ。


(いや、なにこれ。生活汚水?微妙に光ってるせいでまんまそれじゃん。ガッカリさせるのは目に見えていたけどこれは違うでしょ。周りの視線がいたいよ。見てよ隣の二人もうわぁ、何あれみたいな顔してるじゃん。神官もどんな顔すればいいか分からないような顔してるじゃん。そこ目ぇ逸らすんじゃねぇよ。かなしくなるだろ!)


「で、では皆様の測定が終わったので次の検査所にご案内します 」


場を任されていた神官が何とか持ち直し、次の場所にご案内を始める。

こうしてなんとも言えない、締りのない幕引きで適正検査が終わるのであった。



「「あー、疲れた…」」


適性検査が終わると学生が生活するための寮のような場所に案内され、日もくれていることから食堂まで通された正樹と純司の二人は席を確保すると机に体を預けるように脱力する。


「確かに疲れたよね」


「アレはきついな、ほんと」


転移したことによる精神的な疲れは勿論のこと、その日の内に適性検査なるものを受けさせられたのだ。

本当に自分たちのことを気遣っているのならまずは落ち着かせるために時間を置いた方が良いはずなのだが、適性検査を強行したのは間違いなく学生の兵士として使うつもりなのだろう。

セレンの醸し出す独特の雰囲気と言葉に心動かされたり、掴まれるなりした学生は多かったが、こちらの名前を聞くより先に適性検査を始めるあたり自分達個人に教会側は興味の無いのだろうと正樹は考えていた。

他にも魔法属性と魔力の検査の後にも問題があった。

学生の中でも特別であろう、勇樹、純司、光太、咲に対する態度が酷かったのだ。

何をするにも大袈裟な反応を示し、過剰なまでの丁寧さには精神がゴリゴリ削られるものだ。

それは三人にくっついていただけの正樹ですらそうなのだから、三人はそれ以上にキツかったはずだ。

そんな事もあり四人ともクタクタになり席に着いていた。


「しかも飯まで同席してこようとするとは思わなかったぜ」


「あれ絶対に断って無かったらお前達連れていかれてたよな」


「俺、もう無理…」


「気をしっかり持て淳二、お前の苦難は始まったばかりだ」


「ちょっとまてマサ、なに一人離脱しようとしてるんだよ。俺はお前を一生離す気は無いぞ」


「何気色の悪いこと言ってるんだよ。これより切り離し作業に移行します!危険ですのでお下がりくだ…いだだだだ!!離せぇえ!」


「マサだけ楽しようたってそうはいかねぇぜ。俺達は運命共同体だろ?」


「お前達が目立つのが悪いんだろ。俺は無実だぁあ!」


疲れ果てているとは口にしていたが、戯れる元気があるだけ正樹と光は余裕なもので、普段であれば少しでもBL展開になれば混ざってくる咲はあまりの疲れに船を漕ぎ出し、純司は正樹の煽りに反応すら示さない所を見るに限界のようだ。

そして戯れを佳境に入り、二人で取っ組みあっていると一人の女子が近寄ってくる。


「先輩達元気ですねぇー。もう私クタクタですけど省エネな先輩は良いですね」


「褒めるなよ、照れるだろうが。てか何で恋詠が居るん?てっきり俺達の教室にいたヤツらだけかと思ったんだけど」


そう皮肉を言うが、正樹はなんでもないかのように返すとつまらなそうに口を尖らせ、不服を示すかのように黒髪のポニーテールを揺らす少女、美城恋詠は正樹の隣に腰を下ろす。


「先輩に前借りたゲーム返しに行こうと思ったら何か気づいたら飛ばされてたんですよぉー」


「そりゃ災難な、どんまい」


「何他人事だと思ってるんですかぁー、責任とってくださぁーい!」


「残念だったな、やる気、元気、生気の全てが地に沈んでる俺がアイドル様の責任とやらをとれるとでも?」


「うわぁー…何キメ顔作ってるんですか気持ち悪っ。引きますよ普通に」


「いや、冷静に考えてアイドルの責任とかとれんから」


「意気地無しですねぇー」


「俺は死にとうない」


正樹がこう言うのも仕方が無いもので、恋詠は売れっ子アイドルなのだから責任を取れと言われてもこれと言って誇れるものがない正樹としては無理難題と言うものだ。

恋詠は性格が正直者でこれだけ聞くと長所に聞こえるのだが本人が毒舌な上に自信家なために、学校の女子からは非常に嫌われている反面、見た目は正にアイドルと言った感じで学校での可愛さなら間違いなくトップである。

それ故に男子からの人気もアイドルということもありずば抜けて高い。

そんな恋詠の責任を冗談でもとりますなど言った日には血祭りである。


「まぁいいです、ところで先輩達はどうだったですか」


「ん?ああ、ほい、俺の検査結果」


正樹がポケットから丸めた紙を出すと各々が紙を机に出し始める。

寝ている二人を起こそうと考えていた正樹だったががどうやら喧しくて起きてしまったようで手間が省けたと喜ぶことにする。



ジングウ マサキ


戦闘階級

中級下位


魔法属性

水、風、土、闇


適正武器

全てに適正あり


能力

筋力C

耐久E

敏捷B

持久力A

魔力D

魔力耐性B

闘気B

判断力A


スキル

異空間収納


称号

セフィラトラの加護、???の加護



ハイバラ ヒカル


戦闘階級

上級下位


魔法属性

火、風、水、光


適正武器

片手剣、格闘術


潜在能力

筋力S

耐久S

敏捷A

持久力S

魔力S

魔力耐性S

闘気A

判断力A


スキル

天賦、勇気、不動、器用富豪、金光


称号

金光の勇者、セフィラトラの加護



カゲウラ ジュンジ


戦闘階級

上級下位


魔法属性

水、土、闇


適正武器

短剣、弓、銃


潜在能力

筋力A

耐久B

敏捷S

持久力A

魔力A

魔力耐性A

闘気A

判断力S


スキル

望遠の魔眼、鑑定の魔眼、勇気、反逆者、影


称号

影の勇者、セフィラトラの加護



アサバ サキ


戦闘階級

上級下位


魔法属性

全て


適正武器

杖、弓


潜在能力

筋力C

耐久D

敏捷B

持久力B

魔力SS

魔力耐性SS

闘気D

判断力B


スキル

魔視の魔眼、魔導の卵、廻る理、蒼き魔血


称号

セフィラトラの加護



ミシロ コヨミ


戦闘階級

中級上位


魔法属性

風、闇、光


適正武器

剣、短剣


潜在能力

筋力A

耐久B

敏捷S

持久力A

魔力A

魔力耐性B

闘気A

判断力S


スキル

天歩、予知、観測者、悪道


称号

セフィラトラの加護



「なるほどな」


お互いの検査結果が書かれた紙を見終わり、正樹は神妙な顔で呟く。

この世界では階級と呼ばれる強さの指標があり下から順に凡級、下級、中級、上級、超越級、英雄級、伝説級、神話級、亜神級、神級、覇神級の十一段階に分けられる。

学生達は転移特典なのかある程度の強さが授けられており平均で中級程の力を既に持っている。

今回の検査は中級を基準とし、そのなかでもCが普通となってそれ以上なら高い、以下なら低いとなる。


「俺弱くね?」


「そうだな」


「うん」


「ただの器用貧乏ですねぇー」


「お前らに優しさとオブラートは持ち合わせていないの?」


ズバリと三人に言われ、本当にコイツらとは縁を切った方が良いのではと考える。

しかし、これはこの中ではと言うだけで学生全体で見れば中々に高いのだが、それを指摘できる人はこの中にはいない。

だが、実際問題に器用貧乏ということは否定出来ず、検査の時に武器を粗方ある物を使わせて貰ったのだがどれもそれなりに使える素質があり、気に入った武器を使いなさいと言われた。

そして、魔法に関しては複数の属性が使えるのだが魔力が低いため、魔道師をすることは難しいと言われていた。


(これはかなり困ったぞ。どうすんだよこれ)


三人に言われるまでもなく悩んでいると一人黙っていた咲がバッと立ち上がる。


「大丈夫だよ、マサくんなら問題ないよ!多分…」


「うん、ありがとう、けど最後の方に不安にならないで貰えます?」


そして周りにいる学生達がご飯を食べ終わりチラホラと食堂を出ていくものが出始め、五人は急いで冷めたご飯を食べてその日は宛てがわれた部屋に着くと気絶するように眠るのだった。

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