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社会不適合者達による成り上がり英雄譚  作者: 鳩理 遊次
一章 社会不適合者達と異世界転移
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1章 19話 善意はギブアンドテイク

なんと、気がつけば十万字達成…

文字数だけ一丁前に多くなっている状況をどうにかしたい今日この頃。

文章をまとめる能力の偉大さに気がついたね。

文才が欲しいです。

「悪りぃな。手伝わせちまって」


「急ぐことでもないしな。謝礼なら、あとで食べ物でも奢ってくれ」


「分かった。何が食べたい?」


「うーん、串焼きかサンドイッチ系」


日がある程度登っではいるが、昼と言うには早い時間。

時間帯が微妙なのと大通りではないために、人はまばらでのどかな雰囲気が流れる街並み。

そんな場所でキャリーカートを引くオストは申し訳なさげに謝る。

それに対して、同じキャリーカートを引く同行者である正樹は、なんでもないから気にするなと言うが、ちゃっかりと見返りも要求しているので台無しだ。

そんなやりとりをしていると、申し訳なさそうな声がもう一つ。


「すまないねぇ。お腹が空いてるならうちで食べてきな」


「この後用事があるから大丈夫ですよ。人助けをするって決めたのは俺たちなので気にしなくていいですよ。それに、集る相手は選びますから」


「そうですよ。それに、僕は騎士ですから当たり前のことをしているだけです!」


いよいよ集るとまで言ってのけた正樹。

遠慮の使い方間違えてる。

それとは別に断りを入れるのは、後ろからキャリーカートを押しているパーシィだ。

それでも居心地が悪いのか、荷台に乗っていた老婆が「そうかい?」と、少し納得ないってない雰囲気を出す。

そして、集れる人認定されていたことが分かったオストは顔を顰めるが、巻き込んでしまっていることには変わりはないので強く言えない。

何故この三人が老婆を連れて、大きなキャリーカートを押しているのか。

それは、遡ること一時間ほど前。


「よ」


「こんにちは、オスト君」


「来たか。って、マサキ大丈夫か?顔がすげぇことになってんぞ」


教会の裏門近くで待っていたオストは、約束していた鐘がなる少し前に待ち人に声をかけられる。

今日は、前日に訓練の約束を正樹とパーシィに取り付けていたために、場所の案内を含めて二人を待っていた。

だが、目的の人物は青い顔に目に隈をこさえていたのだ。

どう見ても体調不良を伺わせる顔色で、心配しない方がおかしい。

確かに普段から気怠げな表情で、色々と抜けていそうな顔をしていて心配にはなるが、今日はそれが一段と酷いのだ。


「あ?いつも通りだ」


「ん?そうだね。いつも通りだね」


「これがいつも通りなのか…?」


いやいや、前にあった時よりも酷くないか?と思う。


「あぁ、慣れてないと心配になるよね。彼、日が明ける前から走り込みやら型の練習とかしてて、毎日この時間は大体こんな感じなんだよ」


ハハハ、と笑いながら偉いよねとパーシィが言うが、オストからしたらドン引きである。

現在の時刻は大体九時前。

日が明けるのが五時頃と考え、その前から鍛錬をしているとなると最低三時間はやっていることとなる。

何故三時間かと言うと、寝癖こそ治されずにボサボサな髪ではあるが、服に汚れがついた様子もなく、汗臭さとかも特に臭わないので身なりは整えてきているのであろう。

何故、身なりを整えているであろうに寝癖をそのままにしているのであろうか。

謎である。

話を戻して、これから訓練をするのにすでに三時間以上もやっているのだから、オストが戦慄を覚えるのは当たり前のことだろう。


「体調が悪いなら今日はやめて、今度にするか」


「え、別にこのままでも大丈夫だけど」


「けどよ。お前の顔、疲労困憊でこれ以上はやべえやつだぞ」


「そうだね。けど、マサキ君はいつならこれから座学をして、昼から夕方まで訓練もしてるよ?」


「…」


この言葉には、オストの間口が塞がらなくなる。

そして、教会はそこまでさせるのかよとパーシィを睨みつける。

本人は少し後ずさった後に、え?何と驚いたような表情をするが、すぐに思い当たる節が分かったらしく慌てて両腕をバタバタとさせて否定する。


「違う違う!僕らもマサキ君を止めてるんだけど暇だからって!」


「本当か?」


「本当だよ!むしろ無理矢理休ませても勝手に自主練とか書斎に籠っちゃって…」


「時間を無駄にするくらいなら何かするだろ、普通。」


オストは疑わしげな目線をパーシィに向けるが、後の説明と正樹の言葉で事実だと裏が取れたことで冤罪だったと分かる。

そのことが証明されると、パーシィはふぅっと息を吐き一安心。

オストも頭を痛ましげに抑えながらはぁーっと息を吐く。

すると、パーシィが肩をポンポンと叩き耳を貸すようにとジェスチャーをする。


「実の所僕らも体を壊すから休むようにって言ったんだけど、彼が大丈夫だっていうんだ」


「いや、あの顔で大丈夫な訳ないだろ。今にも寝そうな顔してるぞ」


「そうなんだけど、彼が眠くても寝れないから問題ないって。それに、最初は無理してると思ってたんだけど、神官に見てもらったら多少の寝不足だけで至って健康だって言われたんだ」


「…」


え?あれで?本当に?という言葉を疑わしげな顔に張り付けて、正樹をチラリと見る。

うん、あれが普通なの、と言う言葉を張り付けて真顔で頷くパーシィ。

だが、あれは誰がどう見ても寝落ち三秒前のような顔をしているのだが。

どうでもいい話ではあるが、正樹の就寝時間は二十一時とかなり早い。

それに加えて、隙があればうたた寝もしているので睡眠時間が短いと言うことは決してない。

単に、疲れるとあのようになるだけなのだが、そのことを知る者は彼に近しい四人ほどである。

普段の顔がそもそも疲れて怠そうな表情なのだから、これを普通から疲れに当て嵌めれば問題なく理解できる。

ただ、正樹のような疲れ方をする人間は中々居ないと言うだけで。


「あー、本当に大丈夫なんだな」


「だから、大丈夫だって。毎回この下りだから慣れてるけどさ、このやりとりもそろそろ面倒臭いんだけど」


「大丈夫ならいいんだ。行くか」


慣れない人からの恒例の心配をされて、少し不機嫌気味に目を細められる。

正樹本人としては、めんど臭いなぁと思っているだけなのだが、傍目からみると吊り目と深い隈が合わさって非常に怖い顔になっている。

案の定、オストもイラついてるのかと勘違いして苦笑い気味になりながら早口となる。

そんな一悶着があっての出発なのだが、すぐにまた問題があったのだ。

それは、オストに案内されてあるお店の前を通りかかった時のことだ。


「お婆さん大丈夫か!?」


少し大きめの声がした方を三人で振り返ると、一人の男性おキャリーカートの前で蹲る老婆がいた。


「あれは…」


すると、オストはその人物に心当たりがあるような様子で「悪い、ちょっと行ってくる」と言い残すと、問題がある方え駆け足で行ってしまう。

残された二人は顔を見合わせて、パーシィが「僕らも行こう」と言うとその後を追う。

そもそもオストが行かなくとも、こういったことがあれば彼は勝手に行ってしまうので、仕方なさそうに正樹もついて行く。


「どうかしましたか?」


「あぁ、ハマ婆さんが腰をやったみたいでな」


「腰を?」


パーシィが問いかけると、この倒れている老婆の知り合いであり、先に事情を聞いていたオストが答える。

その後、老婆を介抱していた店員のような身なりをした男性に話を聞くこととなる。


「なるほど、この荷物を運ぼうとして腰をやってしまったと…」


「お婆さんがこれ運ぶの無理だろ」


あらましの説明を聞き終えて、問題となった荷物を見る。

それは、正樹が言うように老体が運べる量の荷物では無く、成人男性、それもかなりの力持ちでなければ動かせなさそうなのだ。

いくらキャリーカートで運ぶと言っても、木箱を山積みにされたこれを運ぶのは無茶と言うものだ。


「いつもは、息子が仕入れをしてるんだけど、今日は生憎といなくてね」


「そうか、二人ともすまねぇ。ちょっとギルドで待っててくれ。俺はハマ婆さんの手伝いをしてから行くからよ」


一言謝ると、腰を痛めて動けない老婆を荷台に乗せる。


「そんな、僕らも手伝うよ」


「え、僕ら?」


だが、同じくお人好しで騎士道第一なパーシィに見捨てると言う選択肢はない。

それに、さらっと巻き込まれた正樹は何故巻き込むし、と思うがもう慣れたことなので気にすることはない。

なんや感や言いつつも、彼自身もお人好しである。


「はぁ、仕方ない。パーシィは後ろから押してくれ。俺は前から引くから」


「任せてよ」


「お前ら、いいのかよ?」


「どうせオストが居ないとどうしようも無いからな。それに、こうなるとそこの正義漢はテコでも動かないからな」


呆れたような目をパーシィに送り「もう諦めた」と言うと、キャリーカートの握り手を持つ。

この様なことがあり、三人でハマと呼ばれる老婆の手助けをしていた。

ハマの店はそれほど離れた場所ではなく、四人で雑談をしているとあっという間に到着した。

そこは、看板から見るに薬屋だった。

普通の手助けならここで終わりでも良いのだが、このまま荷物の運び込みまでやることになった。

ハマはオストの知り合いの手助けと言う善意。

パーシィが困っている人を見捨てない騎士道。

正樹はやるならキッチリ最後までやりたい性。

全員、理由は異なるが満場一致でお手伝いを続行することとなった。

急にそう言う話になり、ハマが悪いよと断ろうとするが。


「「「やりたくてやってることだ」」」


「そう言われては折れて、手伝ってもらうしかないね」


三人は乗りかかった船と言うことで、ハマを居間で休ませると荷物を倉庫まで運ぶ。


「ふぁー、つかれたぁ…」


荷物を運び終えると、ハマがお茶をご馳走してくれると言い居間に案内される。

椅子を勧められるや否や、正樹は欠伸をしながら椅子に座り込む。

それに続き間もなく二人も座ると、お茶と菓子代わりの干物を持ってハマが現れる。


「本当にありがとねぇ。おかげで今日の仕事が殆ど終わったよ。はい、お茶だよ」


「ありがとうございます」


「頂きます」


「あぁ。ハマ婆さん、腰は大丈夫か?」


お茶を配膳し始めて各々が受け取り、最後にオストが受け取ると、そんなに動いて大丈夫かと気を使う。


「元々腰が弱かったから薬を持ってたしねぇ。荷台に乗ってる時に塗ったおかげでだいぶ良くなったよ」


「そうか」


「心配かけたね」


オストは問題を無いと知ると少し笑い、ズズッとお茶飲む。

最後にお茶請けを置き終えると、自分も座ろうとハマが椅子に座ろうとする。

すると「いたた…」と声を漏らしながら椅子に座り、大丈夫かと再び心配される。


「歳を取ると怪我が治りにくくなるのさ。気にしなくていいよ」


「それならいいが…」


「皆んなは、ゆっくりしてくといいよ。わたしゃ、あと少ししたらちょいと席を外すよ」


「何かご用事が?」


少し離れると言うハマに、パーシィが心配そうに何があるのか問う。

それはオストも気になるようで、腰を痛めた老人が何かするにも不便だと思ったからだ。

その頃、正樹は何かのドライフルーツを茶請けにホッコリとしている。


「棚が壊れちまってね。明日までに直さなきゃならないんだよ」


「それなら俺がやってやるから安静にしてろ。マサキがこの調子ならもう少しいることになりそうだからな」


「そうだね。オスト君、僕も手伝うよ。二人はここでゆっくりしててくれ」


「いってら」


そこからの二人の行動は早く、ハマに工具の場所を聞く。

困惑しながらも場所を言うと、それを聞き終えるとあっという間にいなくなる。

そんな忙しない二人に手を振ると、正樹は再びお茶をズズッと飲む。

その様子を見たハマも「まったく、困ったねぇ」と呟くと、同じようにお茶を飲む。


「本当、困りますよ。あいつらのお人好しに付き合ってると日が暮れそうだ」


「おやおや、それは悪いことをしたね」


「そう思うなら棚の修理を頼まないで欲しかったですね」


「はて、なんのことだい?」


正樹は気怠げな表情でお茶をちびちびと飲みながら、自然な笑みを浮かべるハマを見る。

佇まいや表情からはこれと言って不自然なところはないが、少し捻くれている人なら流石に気がつく。


「すっとぼけ無くても言いませんよ。まぁ、仮に言ったとしても気にしないと思いますけどね」


「そうだろうね。それでも、これが老人の嗜みというやつさ」


正樹が言いたいのは、わざわざ席を外すなどとハマが言ったことだ。

何せ腰を痛めている今、無理矢理やるようなことでもない。

それに、店の扉を見てみれば本日は定休日。 

急用では無いので、正樹は怪しんで多少の嫌味にも聞こえる鎌をかけて見れば大当たりだ。


「いい嗜みですね」


「そうだろう。それで、何か頼みがあるんだろ。飯かい?」


確かに、正樹は頼み事があるからこそ鎌をかけた。

しかし、それをご飯のためにやったと思われるのは如何なのか。

食いしん坊キャラになった覚えはないのだが、揶揄われているのかと切り捨てることとする。


「なんで、最初に飯を思いつくんだよ。まぁ、話が早いのは助かるな。単刀直入に言うと、俺に薬について教えてくれませんか?」


「薬?なんでまた。見たところあんたは教会の関係者だよねぇ。それなら、お抱えの薬師に頼んだ方がいいだろ?」


確かに、教会にはお抱えの優秀な薬師がおり、そちらに頼む方が早いだろう。

そこにハマが疑問を覚えるのは当たり前なことだ。


「そっちはもう頼んでますよ。ただ、あぶない薬とかいじらせてもらえないんですよね。困ったことに一応俺は保護されていることになっていて、自由があんま無いんですよね。それに、年寄りの知識はためになりますよ」


最後にボソリと「うんちくや自慢以外は…」と付け足して、あらまし理由を言う。

しかし、ハマはそれだけでは納得がいかないように思案げな顔を作る。

正樹としても、これだけで納得するとは思っていない。

なによりも、この二人は初対面である。

ハマは探るような目で見据えながら口を開く。


「薬剤について学びたいのは分かったよ。何でわたしに師事したいんだい?」


「一つは人脈作りですね。俺は外との交流が限られてるんで、こうやってちょっと強引に行かないといけないんですよ。不本意なんですが」


「なるほどねぇ」


正樹は疲れるようやれやれという仕草を取る。

それは、暗に教会に保護ではなく監禁されていると言っているようなものだ。

それが分かっているからこそ、ハマは含みのある相槌を打つ。


「で、何で貴女に師事したいかですけど、一番大きい理由はあんた、創神教の信者じゃないだろ?」


「失礼だね。確かに敬虔では無いけれど、人並み以上には信仰しているつもりなんだがなぇ」


「その言い訳は厳しいんじゃないか?確かに決定的な証拠は無いが、対応に違和感があるぞ」


「対応だって?」


気怠げな雰囲気からガラリと一転。

話に切り込みを入れるその顔は、表情こそ変わりはないがその目は獲物を狩る狩人か。

はたまた、老獪な知識をもつ策略家か。

そんな正樹の言葉に、ハマは怪訝な反応をする。


「最初にパーシィへの対応だな。敬虔なと言う割に教会の騎士への敬いが少しなさすぎる。確かにパーシィは、あの性格に加えて超お人好しだから親しみやすいって言うのはあるが、それにしても揶揄うのは可笑しいな」


「そうかい?私のような捻くれ者なら可笑しな気はしないがね」


「それだけならな。決定的なのは俺のさっきの発言を気づきながらスルーしたことだな」


「さっきのだと?あぁ、あれかい…」


正樹に言われたことに、一瞬困惑するが少し記憶を探ればすぐに思い当たることがあった。

それは教会に監禁されていることを匂わせたことだ。

ハマは自分が失言もせずに、足を掬われるとは思っていなかったようで、「まいったね」と苦虫を我慢するように笑う。


「分かったよ、全く。いつでも来るといい。ただし、その分手伝いはしてもらうよ」


「ありがとう、それで問題ない。これからよろしく」


観念したように首をゆっくりと左右に振ると、師事することを了承する。

それを聞くと、雰囲気はいつも通りのボケっとした物に戻り礼を言う。


「あんた、いくつだい?老人で遊ぶなんてろくな大人にならんよ」


「そりゃ手遅れだ。それじゃ、老人遊びついでにもう一つ。体運びに気をつけた方がいいですよ、ハマ婆さん」


「本当に何者だい?」


してやられたことに不満があるようにハマが愚痴ると、ここにきて初めて正樹がニヤリと笑う。

そして、最後にハマにとっての爆弾を投下すると、その顔は驚きに包まれる。

正樹にとっては、これも鎌掛けのつもりの嘘なのだが効果は絶大であった。

直にハマは表情を取り繕うと、鋭い視線とと共に問いかける。


「ただの平凡な学生だ」


それに対して正樹は、悪戯に成功して笑うのだった。

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