4章 エピローグ
お久しぶりです。
本日からゆっくりながらも4章始めていきます。
クレメリア王国のハンマーグ辺境伯が治める街ファーゲ。
厳しい山脈と魔物が数多くいる森に隣接していたその場所は、クレメリア王国の中でも戦いが絶えない厳しい街の一つであった歴史がある。
しかし、それは昔の話。
数十年前にとある傭兵団が魔物蔓延る森に住み着き、あろうことか勝手に開拓して一つの国が起こった。
その名もアレクレア共和国。
現在は小国でありながら大陸でも有数の国力を有するまでに至った。
建国にはクレメリア王国が手を貸したということもあり、両国は今日まで良好な関係を保ち続けている。
そんな、心情的にも政治的にも今後も友好に付き合っていきたいアレクレア共和国に最も近い場所にあるのがファーゲだ。
昔は魔物を押しとどめる為に砦があり城塞都市と言えるものだったが、今はアレクレア共和国との交易の要として栄えている。
その名残で街は石で出来た物が多く、賑やかでありながらも無骨さも残した個性的な街となっていて、観光名所の一つとして数えられている。
景観は昔のままをベースにしていて石造りが基本。
そこにアレクレアとの中継地点としての役割で無理やり発展した街並みは趣きがありながらも、メインストリートを少し外れれば雑多とすら言える建物の迷路が敷き詰められている。
そんなファーゲの裏路地に人影があった。
石畳をコツコツと規則的に鳴らす厚底のブーツ。
長い白髪を自由にし、飾り気などない目と口が簡素に書かれた白色の仮面。
男か女なのか見分けのつかないその人、仮称白仮面は人との待ち合わせ場所へと足を運んでいた。
リキシア王国にて行われていたオストを教団の傀儡とするために行われていた気の長くなる暗躍。
うまくことが運んでいた策略だったが、シナに全てを踏み潰されて失敗に終わらせてしまい、その責を問われて雑事を処理する仕事に追われていた。
クロア教団の中でもそれなりの地位に座す白仮面であるが、それだけリキシアでの失敗が大きいということでもあった。
所謂左遷と言うやつだ。
流石に遊び回っていたのが問題だったらしい。
仕事の相方であった金髪の男にそのことを全て報告されたのだ。
とは言え、白仮面としてもそのことについては特に思うところはない。
元々やる気など微塵もない仕事だった。
なんなら、雑事とは言え大したことのない仕事をやればいいだけのこの状況は願ったり叶ったりでもある。
成功すれば儲け物程度の大したことのない、いつでも切り捨てられる下っ端に任せている任務の監督。
計画の概要を聞いて多少の指摘をし、上との認識の違いがないかを確認する。
それが今の白仮面の仕事だ。
約束の時間になり、指定の場所へ行けば身なりの整った男と初老の男性が有耶無耶しく頭を下げて出迎える。
白仮面はそれらを無視して椅子に座ると、早いところ用事を済ませてくれと「早く本題に」と短く告げる。
「進捗は如何程か?」
「順調で御座います。帝国への援助は勿論のこと、有能な商品の確保も抜かりありません」
先に挨拶を済ませていたのか、二人は白仮面の言う通りに早速話を進める。
くだらない。
それがこの任務に抱いた率直な感想だった。
別に任務の必要性を理解していないわけではない。
だが、アレクレアの目と鼻の先でやるにはいささかリスクが大き過ぎるのだ。
しかし、それに見合ったリターンが多い為にあくまで心のうちに止めるが。
そんな興味のなさを感じ取られているのか、青年と初老の男は白仮面に話題振ることはしない。
単に怯えられているだけだが、そんなことはどうでもいいこと。
そもそも、今この地で進められている作戦は隣の青年が前から主導している物で、途中から来た白仮面が余計な口を出しても混乱を招くだけ。
教団の意に沿わない部分があれば口を出すが、そうでなければ特に言うことはない。
だから、話半分で他のことを考えていた。
一年ほど前に出会ったアレクレアの元騎士団長がそろそろ国へ帰還している時期だ。
となると、第八騎士団が動き出す可能性が高い。
あの騎士団は在籍する団員があまり多くない為に、今の団長はこのような些事に人員を動かすことはないだろう。
そもそもが他国の問題だ。
ハンマーグ辺境伯は街の警備を強めているが、あまり他に知られたくないのか表立って行動していない。
(けど、あの人がこの街を通ったのを確認してる)
しかし、個人的な付き合いのある『白死』が帰って来たとなれば話は変わる。
あれは間違いなくファーゲの異変にすぐ気がつくであろうし、ハンマーグ辺境伯にそのことを聞くことが想像に難くない。
状況をある程度把握されていると分かれば『白死』に助力を乞いかねない。
辺境伯は武人気質が強いが領民を大切に思う良き領主としても知られており、ファーゲでの事件が無くなるとなれば多少のプライドを捨てられる男だ。
前みたいに『白死』本人がただの調査に出張ってくることはもう無いだろうが、彼の血縁や直属の部下がやってくる可能性はある。
しかしながら、面倒な事態ではあるが白仮面からすればさしたる問題ではない。
寧ろ退屈が紛れるくらいだからお得と言ってもいい。
「ダスト様。帝国の暗部と顔は合わせますか?」
別のことを考えていたら、隣の青年から声をかけられる。
ダスト。
それが教団内での白仮面の名。
偽名であり、コードネームのようなものだがそのことを知る者は少ない。
この後に取引相手の帝国の暗部も交えての話し合いかと、記憶の中から一瞬で会話内容を遡る。
話は一応聞いていたので特に問題なく受け答えをする。
「私がここに居るのはあまり広めたくない。内容だけ伝えてくれれば問題ない」
「「御意に」』
本音としては出来るだけ面倒なことはしたくないからだが、教団の思惑としても白仮面にあまり目立つなと釘を刺されている。
実務半分怠け半分で答えれば、青年と初老が揃って返事をする。
この街で進められている作戦は所詮末端に任せている成功すれば良い程度もの。
失敗したらしたで白仮面も教団もさして困りはしない
今はこの状況を楽しもう。
時が来れば嫌でも働かさせられる。
どうなるにしろ、教団は白仮面ほどの戦闘能力を持つ者をそこら辺で遊ばせ続けるなどありはしないのだから。
(来るのは誰かな?)
興味のない話など遥か彼方に、まだ知らぬ来訪者に胸を膨らませる。
白仮面はまだ知らない。
この地へやってくるのが思わぬ人物。
いや、達なことに今はまだ知る由もない。
改めてましてマジお久しぶりです。
五月六月の高低差の激しい気圧、身内による病気の蔓延、個人的なお勉強などで小説周りを何一つ終わらせられてない者です。
新作は?
半分くらいです…
改訂版は?
15話くらいは進めたよ…
4章の進捗は?
序盤だけだよ…
一年の半年が終わる切れ目に良いスタートダッシュを決める計画が自然消滅しました。
なので、何やかんや一番やる気のあるコレを進めることにしました。
まぁ、ストック殆どないんですけど…
私はストックが10話以上溜まってから更新をするようにしていて、ストックナイナイと言いながらも5話以上はあったんですよね。
けど今回はマジでストックナイナイです。
なので色々とおかしなところがいつにも増して出ると思いますがあまり気にしないでください。
代わりに私が気にしておきます。
そう言う訳で始まった4章はゆっくり目でやっていくので気長にお付き合いして頂けたら幸いです。




