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社会不適合者達による成り上がり英雄譚  作者: 鳩理 遊次
三章 アレクレア共和国と騎士小隊結成
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3章 98話 初任務は人探し

花粉と気圧が辛すぎて思うように投稿ができませんね。

ガスマスクが欲しい今日この頃。

「これで全員かな」


面接官を数時間に渡りこなしていたヴァイスはふぅーっと息を吐く。

念の為に問いかけをすれば、再び集まった面々から声は上がらない。

普段忘れられ勝ちなジュンジですら反論がないのだから間違いないだろう。


「みんなお疲れ様。長々と悪いね」


ヴァイスは形式上の労いを最後にすると、気を引き締めついでに姿勢を正す。


「それじゃあ合否を言わせてもらうけど、全員合格。おめでとう若き騎士達」


新たな騎士に騎士団長が直々に祝いの拍手を送る。

出来レースと言われればそれまでだが、一応落とすかもしれないとは言われていただけに、何名かは心を撫で下ろすようにホッとする。

そして、「ありがとうございます」とヴァイスに伝える。


「君達は晴れて今日からアレクレア共和国騎士団の一員だ。とは言っても、シナさん直属の部隊になる訳だから扱いが違うけど」


「何か違うんですか?」


それはどういうことだと問うのはシンイチだ。


「普通は騎士団から隊に仕事を振るんだけど、君達にはそうじゃなくてシナさんから仕事を貰ってもらう形になるから特務部隊って形になるんだ」


アレクレア騎士団は他の騎士団とは大きく違う。

例えば団長が個々の隊へは、基本的に命令することはない。

他国の騎士団とは比べ物にならない程多岐に渡る仕事を受け持っている都合上、人事部と呼ばれる文官が任務の斡旋を管理しているからだ。

その斡旋された任務の中から出来そうなものを隊長が選んで受ける、というシステムになっている。

これもアレクレア騎士団が冒険者のようだと言われる故の一つだ。


「簡単に言うと普通の騎士より自由にできるって思っておけばいいよ。あ、補助とかは普通に受けられるから安心して」


「そんなふんわりした扱いの隊があっていいのか…」


「ヒカル君の気持ちは分かるけど、結局実力主義な風潮が強いからそういう隊が幾つか出来ちゃたり、あとは秘匿性の高い高難度任務を任せたりする隊が必要だからね。君達はさしずめシナさんのパシリ隊だね」


「「「「え〜…」」」」


「不満そうだけど、もしそんな感じの隊の募集をすれば一瞬で定員が埋まるくらい人気小隊だよ?」


そんな馬鹿な。

無茶振りは当たり前の何考えてるか分からないサイコパス愉快犯のパシリにそんな人気が?

何を言ってるんだ?という眼差しを受けたヴァイスは苦笑いする。


「別に冗談じゃ無いんだけどなぁ。まぁ、いいや。他に質問はあるかな?」


誰からも質問が上がることが無くなると、オスト達は退出を促された。

廊下に出ればタイミング良くシナが待っていた。

長引きそうなら席を外すと言って出て行っていたが、実は外で待っていたのだろうか。

珍しく気を遣ったものだ。


「流石にそんな訳ないでしょ。本当に用事があってちょうど終わった所だよ。ヴァイスからそろそろ終わるって連絡も貰ってたし」


ですよねー。

なんとなく分かっていたが、やはり気を遣ったということは無かった。


「じゃあ何で待ってたんだ?道は覚えてるし、俺たちだけでも帰れたぞ?」


「そうツレないこと言わないでよ。まだキミ達を案内する場所があるから」


「まだ手続きが必要なのか?」


「そうじゃなくて、キミ達の隊の部屋があるからそこに案内するんだよ」


「そんなのがあるのか」


「各隊に最低一部屋用意されてるんだよ。一応官職だから少しのデスクワークはすることになるからさ」


シナが軽く説明するが、他にも各隊ごとに特色や持ち受ける任務が違ったりするという理由もある。

主に裏方の事務方面を担当する騎士の仕事部屋だ。

一同はそのままシナに連れられて第八騎士団の本部を歩く。

数分もせずに到着する。


「ここだよ」


扉を開ければ会社の二文字がぴったりな部屋が広がっていた。

本棚はガラガラで机の上に物がないので寂しさを抱くが、ザ・仕事部屋がピッタリだ。

機能性を追い求めると大体同じ物にたどり着くのはどの世界でも共通なのだろう。


「広いな」


「これが各隊に一つか。太っ腹だな」


ボロ屋育ちのオストからすれば、やはり豪華に思える仕事場。

崩れかけの鍛冶場と比べればどこでもそんな感想を抱く。

しかしそれもその筈で、日本育ちのシュウタからしてもこの部屋は中々に上等な物に思えるのだから。

それから後続組が流れるように部屋へ入る。


「何もねぇな」


「ここが私たちの仕事場ですか。少しワクワクしますね!」


「俺は何か就職したって感じで嫌だな…」


「ソワソワするよね…」


「マサくんもジュンくんも暗いよ。こんなに立派な部屋を貰えてよかったじゃん」


「これからここで働くと思うと身が引き締まります」


各々が感想を言いながら中を物色し始める。

エレナリーゼだけは知っていただけに反応は無いが、シナはちょっとしたサプライズが成功したと満足する。


「そこにある扉を開けると休憩室があってトイレとかシャワー、流しもあるから」


「本当か、俺の家より良い部屋だぞ!?」


まさかの生活に必要な水回り完備。

隊に与えられた部屋の方がメルと住んでいた家よりも豪華なことに驚愕する。


「え。オスト何処に住んでたの?」


「あのボロ屋よりは、流石にこっちの方が良いよね」


その発言にマサキは興味本位な疑問を口にするが、オストに答える気力は無い。

唯一それを知っているシナは、お化け屋敷を思い浮かべてうんうんと頷くだけだ。

そうこうして内見をざっと済ませると、シナがまだ話があると全員を備え付けの椅子に座らせる。


「いつまでそうしてるつもりなの?」


「まぁ、気持ちが分からなくもないからね。ほっといてあげたいけど…よっと」


「いたッ!」


ずっと突っ伏しているオストを見て、さすがに心配になったエレナリーゼが聞く。

だが、ピクリとも動く気配がない。

シナは同情しながらも、時間がもったいないと頭を小突くとオストが涙目で飛び起きる。


「何すんだッ!?」


「そろそろキミ達の仕事について話したいんだよ。時間も押してるし」


「他にやりようがあるだろ」


「もう何回か話しかけたよ」


あまり強く当てられたようには見えないが、相当痛かったのだろう。

頭を押さえてオストは講義を入れる。

しかし、もう声はかけた後だと知ると渋々引き下がる。


「これで皆んな席に着いたね。それじゃ、キミ達の初任務を言い渡そう」


最後のオストが聞く体勢に入ると、シナは笑顔で本題に入る。

その笑みが禍々しく見える一同は、どんな無茶振りをされるのか緊張しながら構える。


「それはね」


ゴクリ。

誰がが生唾を飲み込む。

勿体ぶる間は時間にして数秒だが、この緊張下において数分にも感じる焦ったさがある。

そして、その任務内容がやっと告げられる。


「人探しだよ」


勿体ぶっておいた割には、普通過ぎる任務に全員が首を傾げる。

しかし、これを言ったのは何を考えているか分からないクレイジーサイコ野郎だ。

何名かは裏を勘ぐろうとする。

各々が表情を変えるのをシナは面白げに見る。


「みんな面白い表情をするね。ボクの直轄部隊ってことは暗部みたいなものだからね。人探しも立派な仕事なんだよ」


「暗部がそれでいいのかよ」


「オスト。あの人の人探しがただの人探しな訳無いだろ。どうせ事件性のある行方不明者とかの調査とか面倒なことだぞ」


「マサキくん大正解。と言うかドンピシャだよ」


呟きに反応したマサキへ、シナはパチパチと拍手をする。

暗部のする人探しなど普通な訳がないのだから、当てずっぽうでも遠くなることは無い。

当てた本人はうへぇっと嫌そうにする。


「知人が行方不明者が多くなって困ってるって言っててさ。そこまで大きな事件でも無いから大っぴらに調査も出来ないらしくてね。ウチから人を貸してくれないって相談がきてるんだよ」


「つまり、義理立てのためにオレ達に行ってこいってことか?」


「いや?普通に解決してきて欲しいんだよ」


「ハァ?素人のオレ達に探偵のマネごとなんてできねぇぞ」


話の前置きが長く焦れたヒカルは自分の予想を要約して言うが、それは否定される。


「大丈夫だよ。キミ達そういうの向いてると思うからさ」


「また適当なことを」


「一応、助っ人を一人付ける予定だよ」


いつもの無茶振りとも楽観的とも言えるシナの発言だが、任務ということもあり保険は賭けてある。

ヒカルもそれを聞くと納得したのかそれ以上文句を言うことはない。

代わりに、話がひと段落ついたのを見計らってサキが詳細を聞く。


「あのー、その任務についてもっと詳しく話してもらってもいいですか?」


「もちろん。任務内容は隣国、クレメリア王国の街の一つ、ファーゲの行方不明事件の調査及び解決。出来るだけ早く行って欲しいから、急で悪いけど明後日くらいには行ってもらおうかな」


「明後日!?」


これまた急の日程にサキ以外も驚きを露わにする。

今しがた騎士になり、隊を認めてもらったばかりなのにもう任務に向かわなければならないのかと。

流石にこれは無茶振りすぎるとサキは慌てる。


「いくらなんでも急すぎませんか?準備期間は欲しいです」


「隣国って言っても隣町みたいなものだから、そこまで気張らなくても大丈夫だよ。宿もあっちで用意してくれるし」


「良かった。それから大丈夫そうですね」


「そういう訳だから、装備の準備とだけ用意しといて」


それを聞いたサキは良かったーと胸を撫で下ろす。

まだ物申したげな人も何名かいるが、全て些細な不備くらいなので口を紡ぐ。

何もかも急な話ではあるが、オスト隊初の任務はこうして言い渡されたのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

出来ることなら評価とブクマ、感想の程をよろしくお願いします。

褒めるとモチベが上がって投稿が早くなるかもしれない。

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