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ユリアンとゆの2

ゆのとユリアンの出会いをアップします。



-ゆのとユリアンの出会い-




「この世界に精霊がいることを知っていますか?」


初めてゆのがユリアンに出会ったときの第一声がこの発言だ。ゆのはキョトンとしてユリアンを見つめた。(ちっさいわー、可愛いわー、瞳がお茶目だわー)と心の中でつぶやくと、


「ありがとうございます。人間に褒められるのは久しぶりです。」とユリアンはクルリと回って挨拶をした。可愛い薄いピンクのワンピースに細い手足が、まるでマスコット人形のようにフワフワ動いてもげそうだった。


「嫌だわ。私の手足はもげませんよ。」


あ、やはり私の心の声を聴いているのね。


「そうですね。心で思うことは伝わってきます。ゆのさんの使命を手伝うようにと精霊女王様から使わされました。」ユリアンは小さい頭を下げると、ショートボブの赤い髪がフワリと揺れて萌え度100%だとゆのは思った。


「萌えって…」ユリアンは嫌そうな顔をしたが、妖精の粉を出してパッパと少量を自分にかけている。


「え? それは何ですか? 」


ゆのは、ユリアンが手に持った粉を見て興味津々になった。粉にはあるパワーが宿っているらしく、少し赤みががかったキラキラとした光が見えたからだ。


「これは妖精の粉で、忘却の力を持つものです。萌えって言われて気持ち悪かったから記憶から消そうと思って。」


「う、なんて酷い。」ゆのは自分は褒めたつもりなのに記憶から消そうとするユリアンを見てがっくりと肩を落とす。


「忘却の粉は、忘れたものは思い出せないので、ゆのに使うと試したことがわからないから。私が使って見せようと思っただけなの。」


うー、その発想も可愛すぎるー。


忘却の粉を使った割に少し前の事を覚えているユリアンを不思議に思いつつ、ゆのは濃紺色の瞳をキラキラさせてユリアンの不思議な粉を見つめていた。




「私のことを対象者に忘れさせることができるのね。ありがたいわ。相手の心に入るとどうしても印象が強すぎて、私の心に相手の感情が引きずられてしまうのよね。それをどうしたものかといつも悩んでいたの。私はいつまでも一緒に暮らしてあげられないから、いつか離れていく対象だから。最後は忘れてもらうことが望みだった。」


「ゆのは優しいから、頼ってしまうと対象者は心の成長が止まってしまうのよ。だから妖精の粉を持っていきなさいと妖精女王様がくださいました。」




「ユリアン、他にもどんな妖精の粉があるの?」


「ありますよ。人を誘惑する粉や、相手が自分の意見に従ってしまう粉、それに数時間だけ男女を入れ替える粉もあります。」


ユリアンは粉の袋を突き出してえへんと偉そうにしてみせると、仕草が可愛かったのかゆのに抱きしめられてしまった。


「面白いわね。でも忘却の粉があればあとは使わないかもね。」


「女王様の愛が詰まった粉ですから。ゆのに任せます。」


こう言ってゆのに頭を下げてユリアンは消えていった。




-初めての案件-


「ゆの、今回はどんな事案ですか?」


赤いショートボブの髪をした金の瞳をもつ精霊は、ゆのの肩にちょこんと座り、今日から務める会社の資料をのぞき込む。精霊の名前はユリアン。可愛くゆのをのぞき込む姿に、ついぎゅっと握りしめてしまう。




「ゆの! 苦しいぃぃ。」


「あ、ごめんなさい。可愛すぎたのよ」


「いや、ウソよね。いつもいつも握りつぶすじゃないの!」


「それは誤解よ、ユリアン」


冷静に資料を見ながらユリアンをいなすゆのに、ユリアンの小さな手がボスンとパンチをくらわす。


「気持ちいい! 」


「ゆのの変態」


ユリアンは金の瞳をとがらせてゆのの頬にグーパンチを当てながら資料をのぞいてみた。


「明美 38歳 お局 意地悪 仕事狂 親にトラウマあり…」


ユリアンは資料を読みながら、またこういう事案なのかとがっくりと肩を落とし


「ゆの、今回は泣かさないでね。いつもゆのは対象者を泣かすのだから」


何故、一緒に行動するのは今日が初めてなのに過去の事を知っているか?


闇色の髪の隙間からゆのは怪訝そうな瞳で見つめていた。




「ゆのの心の中は判りやすいのよ。順序だてて記憶が整理されているから、対象を泣かせて困っているゆのが何度もページという記憶をめくるたびに出て来るの。」


ユリアンの金の瞳が少しかげるとうっすらと白金のように薄くなっている。ユリアンが心を痛めた時の色だとゆのにはわかっていた。


「ユリアン、クッキーあるけど食べる?」




薄く白っぽく見えた瞳は突然金色を放ちとキラキラと輝いて


「なにクッキー?」


「クス、ココアのクッキー。さて行きましょう!」




ゆのの闇色の髪がくるんと回ると事務員の制服となり、派遣の事務女子へと変身する。




「ユリアン、今回はそこまで酷くないと思うわ。崖から突き落とされたり、車に飛び込んだり、ビルの屋上から飛び降りるのを止めたりという危険性を感じないのよね。」




ゆのは未来予知ができる能力がある。もちろんその未来を人に話すことはないので、本当に未来がわかっているのかは不明だが。


「あ、ユリアン。気を付けて」と言われた後に、野良猫と鉢合わせをしそうになったり、


「あ、ユリアン。危ない気がする」と言われた後に、コーヒーを持った人とぶつかって頭からコーヒーをかぶったこともあった。


「ゆのは酷い。もっとはっきり教えてくれたらいいのに」とブーブーと文句を言うと、ゆのは部屋の隅に枯れかけた観葉植物のドラセナに向かいぶつぶつとつぶやいている。


「未来は意識した瞬間に現れて変わるのよ。だから言葉にすると変化してしまう。」




ぶつぶつと言っているうちにドラセナは、本来の幸福の木と言われる生気を取り戻していた。ゆのは天のエネルギーを使うこともできるので、傷ついたものや壊れたものを修復できるらしい。これも本人ははっきりと教えてくれないから不思議だとユリアンはドラセナを見ながら思っていた。




ゆのは対象者と呼ばれる相手を浄化する役目を負っている。これは今の変化期に必要な浄化であって、2500年の途中では不要な浄化である。つまりウユウの光が当たらない2500年が終わり、ウユウの光が当たり始める2500年間が始まる。移行期の500年間はどうしても前の時代の不幸を引きずり、周りも巻き込んで苦しませてしまう。このエネルギーこそマイナスエネルギー『ソ』と呼ばれるもので、些細な感情にも潜んでいた。


「つまり『ソ』は必要な時代には必要なエネルギーだけど、これからの世界には不要なもの。」


ゆのは遠くを見つめながら呟いた。




ゆのの就職一日目は、挨拶と仕事を覚えることに終始していた。何事もなく、対象者のあけみを遠巻きに観察しながら、いつどのタイミングで声を掛ければよいのかを考えて終わった。


「さて、帰ってまたゆっくりと瞑想しようかな。」


「瞑想をしながら俺のそばでまったりしたくなったのだろう。」そんなことを彼氏に言われている自分を想像しながら家路につくと、野良猫が怪訝そうな目でじっと見ている。その姿がまるで孤独の中で戦っていた過去の自分と重なって、ゆのはカバンに入れてある煮干しを数匹その場に置いて立ち去った。ゆのの後ろで、野良猫は煮干しをおいしそうに食んでいるかなと想像しながら。


しばらくは短期間でアップする予定です。話の流れを早く皆様にお話ししたいので、頑張ります。

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