第8章~複雑な気持ちで寮に戻ると
門限前に何とか寮に戻ると、兄貴が言いました。
「俺、すぐに山城さん探してくる!」
車の鍵も掛けずに、慌てて走って行きました。
寛斗君と日和さんは、静音さんに肩を貸しながら、彼女の部屋に連れて行きました。
徳和君と香緒里さんは、車から降りましたが、また、すぐに出発出来る様に、エンジンはかけたまま駐車場で待っていました。
さて、僕はどうするか?
「また廃病院に行くとしても、車1台だろうな…」
「まあ、弟もいるし、とりあえず兄貴の部屋に戻ろうかな」
と、思い、2Fにある兄貴の部屋のドアを開けたら、目を疑いました。
何と!そこには弟と一緒に雅幸君がいたのです…。
「あの…雅幸さん、何でここにいるんですか?」
「だって、心霊スポットには行きたくないって言ったじゃん」
「だけど、兄貴の車の助手席に乗って行ったよね?」
「何言ってるの?下の弟さんと、ずっとここでゲームしていたよ」
「ねえ、そうだよね?」
「うん、間違いないよ」
「でも、青白い顔をした雅幸さんが、車を降りるとすぐに、廃病院の中に走って行くのが見えたので、皆で手分けして探したんですよ」
「そんなバカな!そもそも、行かないって何度も言ったのに…」
そこで僕は、兄貴と仲間達の事が気になりました。
「すいません、ちょっと兄貴を探してきます」
と、言って、1Fに下りて行きました。
すると、左の方から、
「山城さん、山城さ~ん!」
と、言って必死で探している兄貴が見えました。
しかし、山城さんは買い出しに行っているのか、見つかりませんでした。
「ねえ、ねえ、ちょっと、ちょっと!」
僕は、兄貴の肩を叩いて呼び止めました。
「何だよ!手が空いてるならお前も探せよ!」
「それなんだけどさ、雅幸君がいたんだよ」
「はぁ~?どこにいたんだよ!」
「兄貴の部屋だよ」
それを聞いた兄貴は、慌てて2Fに駆け上り、自分の部屋のドアを開けると、
「やあ、遅かったね」
と、雅幸君が言いました。
「お、お前~今までどこにいやがった!」
「いや、ずっとここにいたけど」
「は?本当は廃病院からタクシーで先に帰って来たんだろ!」
「ないない!そもそも車に乗ってないよ」
「いいから早くこっちに来い!」
兄貴は、雅幸君を駐車場まで連れて行きました。
徳和君と香緒里さんは驚いて、
「えっ?今までどこにいたの?」
と、聞きましたが、兄貴が、
「説明は後だ!寛斗君達にも言ってくるんで、後で一緒に来てよ」
と、言い、静音さんの部屋の前に行き、ノックしました。
「コン、コン」
「はい、どうぞ」
兄貴が雅幸君を連れて部屋に入ると、静音さんと、日和さんと、寛斗君は一様に驚いて、
「どこに行ってたんだよ」
「皆で探したんだよ」
「でも、良かった~どうしようかと思ったもん」
その直後、徳和君と香緒里さんが合流しました。
「おい、お前!今までどこにいたんだよ!」
「どこって、どこにも…」
と、言い合っていたら、山城さんが帰っていて、
「お前らうるさいぞ!もっと静かに話せよ」
と、注意してきました。
「すいません、気を付けます」
と、皆で謝りました。