第5章~廃病院1F廊下の奥には
僕が、廃病院の入り口に着くと、静音さんが1F廊下の突き当たりまで、迷いなく進んで行ってしまいました。
その際、左奥の扉から出てきた、背の低い女性の幽霊がいましたが、それを平然とすり抜けていったのです。
僕は、慌てて静音さんの後を追っていきました。
いつもは、見えている幽霊に、自ら近付いて行ったり、すり抜けて行ったりはしませんが、状況が状況なので、意を決して進んで行ったのです。
背の低い女性の幽霊の、すぐ前まで来ると緊張しました。
さすがに僕は、真正面からすり抜けては行かず、幽霊の右横を通って行きました。
幽霊の真横を通った時が、一番緊張しましたが、何とか先に行けました。
静音さんは、廊下の突き当たりに飾ってあった、カビだらけの絵に向かって、両手をゆっくりと広げながら、
「やっと戻ってきたよ」
と、言い、ずっと絵を眺めていました。
僕は、訳が分からなくなりましたが、静音さんには追いついたので、少し様子を見る事にしました。
そこで、ふと、左奥の扉を見ると、そこにマジックやスプレーで、
「ここから出ます」
「〇〇参上!」
と、大きく書かれた落書きが何個もありました。
それを見て、ゾクっとしました。
その扉の少し上を見ると、そこには、霊安室の表示がありました。
「これは、幽霊が見えていない奴が書いたものだな…何て事を!」
と、思いましたが、僕はその幽霊に、
「ごめんね」
と、謝りました。
「もうここには来ないからね」
と、言って、すぐに退散する事にしました。
「はっ、そうだ!静音さんは?」
彼女を見ると、突き当りにある絵の前から離れようとしません。
「静音さん、そろそろ戻りましょう」
「………………」
この絵に、何があるのだろう?
とにかく、この絵見るのはヤバい気がする…。
僕は絵を見ない様にして、様子のおかしくなった静音さんの手を引き、強引に1Fの入り口まで連れ戻すと、
そこで、静音さんの首だけが、
「ガクッ」
と、なって、倒れこんだのです。
「うわ!ちょっ、静音さん、静音さーん!」
僕が呼び掛けていると、1Fの入り口に日和さんがいて、静音さんに付き添ってくれたのです。
「あとは任せて、しーちゃんは私が外に連れて行くから」
「はい、お願いします」
一旦、すぐ外に出てみましたが、兄貴達3人はまだ戻っていませんでした。