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人喰い鬼

作者: 小鳥歌唄

小さな森の中に、一軒の小さな家がありました。その家には、二人の兄妹が住んでいます。兄のジョシュと、妹のクレアです。

二人には両親が居ませんでした。正確には、居たのですが、ある日仕事に行ったきり、帰って来なくなったのです。

両親が帰って来なくなってから、一か月が経とうとしていました。家の中にあった食料も無くなり、二人はお腹を空かせていました。

「どうしよう・・・このままでは、飢え死にしてしまうわ。」

クレアが言います。

「食料を買うにも、お金が無いし・・・。」

ジョシュが言います。

二人は森の中に、何か食べ物は無いかと探しましたが、何もありませんでした。森は実の生る木が、一本も生えていなかったのです。

二人は川の水を沢山飲んで、飢えを凌いでいました。それでも限界が来ます。徐々に痩せこけていく頬。鳴り止まないお腹の音。

「お肉が食べたい・・・。」

ジョシュは呟きました。するとクレアは、ふと森の先を見つめます。見つめた先には、町がありました。小さな町です。

「町へ行って、何か食べる物を分けて貰いましょうよ。」

クレアは提案しました。

「そうだね、それはいいね。」

ジョシュは大きく頷くと、にこりと微笑みます。

食べ物を分けて貰えれば、飢えが凌げる。そう思い、二人はふらふらの足取りで、何とか町までやって来ました。

町へ来た二人は、パン屋さんから漂う良い匂いに釣られ、ふらふらとお店の中に入って行きます。そして店主に、「パンの耳でいいから、分けて欲しい。」と頼みました。

しかし、薄汚れた服装の二人に、パン屋の店主は眉間にシワを寄せ、無下に扱いました。

「小汚いガキめ、商売の邪魔だ‼出て行け‼」

二人は店から、追い出されてしまいました。

その後も何件か、お店や家を訪ねますが、痩せこけ、汚い服装からか、皆に無下に扱われてしまいます。

二人は歩き疲れ、お腹も余計に空いてしまいました。

「どうして誰も、食べ物を分けてくれないの?」

クレアは泣きだしてしまいます。

「僕等は、大人達皆に捨てられたんだ・・・。」

ジョシュも涙を流しました。

二人が泣いていると、一人の見知らぬ子供が近づいて来ました。

「どうしたの?どうして泣いているの?」

その子供の問いに、「お腹が空いて。」と、ジョシュが答えます。

「なら、これをあげるよ。」

そう言って、見知らぬ子供は、鞄に入れていたパンを差し出しました。

二人はそっとパンを受け取ると、半分個にして、ゆっくりと口の中に入れます。

「美味しい・・・。」

「美味しい・・・。」

どれくらい振りの食べ物でしょうか。二人は夢中で、パンに食らい付きました。

「良かった。」

見知らぬ子供は、嬉しそうに笑うと、その場から去って行ってしまいました。

その子の後ろ姿を見て、クレアはポツリと呟きます。

「あった。お肉・・・あった。」


小さな町がありました。その町では、ここ最近、子供が行方不明になると言う、不可解な事件が起きています。

親は子供を守る為、一人で外に出歩かない様にさせました。それでも、一人、又一人と、子供は姿を消していきます。

子供は皆、森の中へと入ると、帰って来なくなりました。だから大人達は、子供達に森の中に入る事を、禁止しました。そして村長は、数人の大人達を連れ、森の中に子供達を探しに行く事にしました。

森は小さな森でした。こんなにも小さな森で、子供が迷子になるとは思えませんでした。

村長は言います。

「きっと森の中に、鬼が住んでいる。鬼が子供をさらったんだ。」

大人達は大きく頷きました。

「鬼を殺してやる‼」

誰かが叫びます。

「そうだ‼殺してやる‼」

また誰かが叫びます。

大人達は、鉈やノコギリ等を手にし、森の中へと入って行きました。

暫くすると、一軒のボロボロの家を発見します。

「きっとこの家は、鬼の家だ‼」

誰かがそう言うと、そうだそうだと、皆が叫びました。皆殺気立っています。

大きな斧を持った男が、ドアを蹴破りました。すると、中にはボロボロの服を着た、子供が二人居ました。ジョシュとクレアです。

「なんと、こんな所に子供が。」

村長は驚きました。二人は酷く怯えています。

「君達、どうしたんだい?どうしてこんな所に居るんだい?」

一人の男が、二人に優しく話しかけました。

「親に捨てられて・・・。」

ジョシュが小声で答えます。

「それは可哀そうに。おいで。」

一人の女が、二人に手を差し伸べました。ジョシュとクレアは、恐る恐る女に近づくと、そっと体に抱き付きました。

「まぁ、なんて可哀そうな。家の子を思い出すよ。二人共、家へおいで。」

女は二人を、強く抱き締めました。女の子供も、行方不明になったままでした。

ジョシュとクレアは、この女の家に住む事になりました。

暖かい部屋。綺麗な服。美味しい料理。

ジョシュとクレアは、幸せに暮らしました。


森の中の家には、沢山の子供の骨がありました。皆鬼の仕業だと思い、今日も森の中に、鬼狩りに行きます。しかし、どんなに探しても、鬼は見つかりませんでした。


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