筒栄町のテディ・フィッツウェル
テディ・フィッツウェル(Theodore Fitzwell)、14歳。
今日この筒栄町に引っ越してきた、アメリカ人の父と日本人の母を持つユタ州出身の少年である。
転校初日の―ティーンエイジャーとなってからは初―今日、学校では少しおかしげな目を向けられることが多かったが、父親の仕事の都合上昔から日本に滞在することが多かったので特に堪える事はなかった。友好的に自己紹介を済ませ、その日の授業は終わった。これからは3年間ここに滞在することになる。
その日の夜、テディは近所のコンビニにエナジードリンクを買いに行った。ユタの田舎町にあった自宅周辺よりも車の通りや灯りが多く、まだ慣れないが、エナジードリンクはアメリカと同じで少し落ち着いた。その帰路、テディ少年は遠い夜空が継続して光っているのを確認した。「雷か」と小声で呟き、何か縁起が悪そうだなと思いつつ、家に帰り眠りについた。
翌日、2年4組の“瀬乃 風香”が昨夜の光について友人達にペラペラと喋っているのを耳にした。よく喋るのでテディの苦手なタイプで、少し距離を置いていたが、その5人の仲間内では全員外へ出ていたが、誰一人として見ていなかったらしいことを少し気にかけた。隣の席の横井にも少し聞いてみたがやはり目撃してはいなかった。帰宅し、部屋で地元の新聞を開いていてふとそのことを思い出し記事を探したが、載っていなかった。
「ここは小さい町だし、一々落雷程度で記事になる訳ないよな。少し冷静さを失ってた。」と思い、昨夜のエナジードリンクを飲みつつページを捲った。その日は少し勉強して、明日の朝に備えて寝た。
そして翌朝、また学校へいく―はずだった。
午前4時、宇宙を彷徨っていた彗星が地球に急接近し、警報が町中に鳴り響きテディは目を覚ました。光は彗星だったのだ。頑丈な建物に避難するため、ミスター・フィッツウェルと母親に連れられて外へ飛び出した。親によると、世界各地で大規模停電が発生しているらしい。
避難所へ向かっている途中、誰もあの光、彗星を見ていなかったことを思い出した。その途端、少年は気を失った。
気がつくとテディ少年はホテルのベッドに寝ていた。ここがどこかはわからない。しかしアメリカであることは長年住んでいたのでわかった。
ホテルのカウンターには50ドルとピストルが置いてあった。そしてその下には“Theodore Fitzwell Come west“と書かれた紙が置いてあった。
とにかく状況を掴むため、テディはホテルの部屋から用心深く出た。すると隣の部屋も同じタイミングで扉が開き、同年代くらいの女子が出てきた。目が合うと、それは昨日光の話をしていた瀬乃風香だった。
どれくらいの長さになるかわかりませんがよろしくお願いします。