2年後
いよいよ物語も佳境に入りました。幾つかのエピソードを残すだけになりました。
もう少しだけ、お付き合いくださいな。
イヌラエルを出港して、地中海の海を堪能している茜に抱かれた赤ん坊が泣く。
「ほら、貸して、母乳あげるから!」桜ちゃんが両手を出して受け入れ態勢になる。
「良いの! 私だって、おっぱいでるもん!!」
少しだけ膨らんだおっぱいを出して授乳させる。赤ん坊は必死に口を使っておっぱいを吸っている。
しかし…あまりに少ない量なので、赤ん坊が泣き出す。
うぅ…。と、がっくりする私の手から、桜ちゃんが赤ん坊を奪い、自分のおっぱいを吸わせる。
「音海ちゃんは、私のおっぱいが好きなんでしゅよね?」と桜ちゃんは勝ち誇ったように私を見る。
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自分勝手で自己満足しているだけなのは、誰に言われなくてもわかってる。
毎日、涼くんと子作りして、音海ちゃんが生まれた後、七海ちゃんの願い通り…将くんと涼くんを殺した。
音海ちゃんが、生まれるまでは、トーストラリアの西部の街を占拠して、世界中から迫害されながらも生き延びた魔法使いと魔女を住まわせている。
もう…各国の政府と協力している敵側の魔法使いと魔女以外は、世界中の何処を探しても、野良魔女っ子はいないだろう。
”お師匠様…世界を、時代を、流れを…止めることはできませんでした…。私の力不足でした”
”茜のせいではない。裏で巧妙に世界を操っている黒幕がいる。だが…それが誰だかわからん”
”私たちは、その黒幕に…良いように…使われているだけではないでしょうか?”
”そうかも知れん。答えはもうすぐ出るだろうな”
”では…行ってきます”
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イヌラエル政府に監禁されていたトーマスは、魔法使いであり、高度な技術を持つクラッカーでもある。そのトーマスを助けたのには訳があった。
世界中の放送局、有力サイトをトーマスにハッキングさせた茜は、”世界の要”について、真実を公表したのだ。恐らくは…誰も信じないだろう…信じる信じないは、もはや問題ではないのだ。
ただ知って欲しかった。自分たちの未来を…。
その衝撃の真実は、超魔導級戦艦大和の艦内の魔法使いや魔女にも動揺を与える。
「もっと違う道はないのか?」「何か手段があるのでは?」「それが正解でも納得できない」
予想通りの反応であった。
トーストラリアに帰還すると、街中の魔法使いと魔女を集めて、茜は言った。
「納得が出来ない人は、今すぐにこっちに来て下さい。戦いましょう。納得できる人は、奴隷になってもらいます。後から、文句を言われても困りますから…」




