一時帰宅
お姉さんに励まされながら…慰められながらも、幾つかの魔法を習得した。
そうっ! 頑張ったのですっ!! ご褒美に一時帰宅なのです。
黒いピカピカの車を、オンボロの自宅の前に横付けして、ドアを開けてもらい降りる私。
ご近所の皆様が唖然とする中、無事、帰ってきたよっ!
「お母さんっ!! ただいまっ!!」
久しぶりに見る我が子に、何たる眼差し…。やっぱり引くよね…。
黒い三角帽、黒いローブ、ドクロのネックレス、ドクロの杖、ドクロの指輪…。
「お、おかえり…。随分と変わった格好だね…ハロウィンにしては、まだ早いよね」
「うっ…。仕方ないの、学校の制服か、魔女っ子衣装の二択なの…。制服で良いって言ったのに、無理やり着せられたし…」
おのれ…お姉さんめ…だから、嫌だと言ったのに。
そして、当たり前のようについてくるSPの三人。
「えっと、護衛の相田さん、竹下さん、七海さんです。絶対に離れないから、お母さん、慣れて、そして気にしないで」
最高に迷惑そうなお母さんの顔を見ると、思わず笑いそうになってしまう。
「護衛のリーダーの相田です。本日は、お邪魔させて頂きます」
体育会系のノリで押し切る相田さん。流石です。
「優馬は?」
「何言ってるの、まだ学校の時間だよ」
私の可愛い弟は学校ね。なるほどっ!! 学校かっ!! 行きたいっ!!
ちらりとSPの三人を見ると、胸の前で腕を☓の字にしていた…。
「あう…。酷い…」
お母さんが娘の突然の帰宅に、張り切って夕ごはんの支度をし始める。
もっとお母さんと話したかったのに…。
諦めて、大人しくお姉さんから出されている新しい魔法の習得課題のため魔法書を開く。
そして、5分もしないうちに眠くなる…。
やっぱり家はいいな。安心する…。
どのぐらい眠ったのだろうか、「お姉ちゃんっ!!」という優馬の高く可愛い声に起こされる。
「優馬っ!」なんてことでしょう…。私に会えた喜びで涙する可愛い弟を抱きしめる。
そして翌朝、魔女に関することは口外できないため、何も言えないまま家族の元を離れるのであった。