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茜の決断

人を殺しに行くのだ。そう考えるだけで全身が硬直する。桜ちゃんの絨毯の上、過呼吸気味の私の肩に将くんが、そっと手を乗せる。


駄目だ。二人を守れるのは、私しかいない。


「大丈夫。現場に到着後、二人は上空で待機。情況を見て援護をお願い。でも決して敵に立ち向かうのは止めて。まだ二人を守れるほどの余裕はないから」


到着までの短い時間の中、死と恐怖を司る魔法である死霊の魔法書に記述されている防御魔法を可能な限り自分にかける。


ショッピングモールは、機動隊、SPなどに囲まれていた。私は上空の絨毯から屋上駐車場に、将くんの重力魔法により、ゆっくりと降下する。


私の回りにSPが駆け寄ってくる。


「情況の報告を」と促すと、「一階、中央に人質を取り、膠着状態です」と回答された。


「敵の魔法の種類は? お師匠様から魔法の乱射と聞いていますが?」


「それが…人形魔法らしいのです。人質も攻撃の武器として利用されています」


これは…覚悟が必要だ…。そう考えるだけで心臓がバクバクする。


”茜ちゃん。わかってるわよね”とお姉さんからの脳内通信がくる。


「一階に移動します。敵の背後に回れるように案内をお願いします」


ぎゅっとドクロの杖を握ると、屋上駐車場エレベータから一階を目指す。


エレベータから降りると、簡易的な作戦司令室が設営されており、その中のTVモニターを観る。


金髪の少女が、人質を盾にして魔法を継続的に使用しているのが見えた。


こんなの…。ただの捨て駒じゃない…。意味ないよ…。と気が緩むと涙が出そうになる。


「操られている人数と場所は?」


「現在、機動隊により、ショッピングモール内から外に出さないよう、どうにか防いでいますが、操られている側は、自分の怪我などを考慮しないので、人命保護の観点から、苦戦をしています。そしてこの地図にマークされている13箇所が交戦ポイントとなります」


「わかりました」


踊る骸骨を召喚する。ドクロの杖が、黒い光を放つと、剣と盾を持った骸骨が出現する。


「操られている人物および魔女を殲滅せよっ!」


ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。ギャガガ…。


「な、何をっ!? 操られている人間まで?? どういうことですかっ!!」


機動隊の隊長は、私に向かって叫ぶ。


「何も不思議なことはありません。少女を殺したことで、必ず操られていた人間が元に戻る保証もなければ、確証もない。それを調べる方法もない。ならば、国益のため処分するのは当然です」

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