候補生
「ねね。藤本くんの下の名前って何? どんな字?」
隣の席の藤本くんに白羽の矢を立てる。クラスの皆は見てみぬふりで、可哀想にを通り越し、自分じゃなくて良かったよっ!! と死の泥舟からの生還を祝った。
「えええええええええええええええええええええええええ!!!」
しばらくの沈黙の後、突如絶叫した藤本くんに、私も驚きの声を上げる。
「な、な、何っ!? そ、そんなに、変なこと、聞いちゃった!?」
「れん…ひらがなで…」と諦めたように言われた。
一体どうしたのだろうか? まぁ、いいか。
「藤本 れん。よし、書けた!! はい。これ。むふふふふっ。おめでとうっ!!」
そう言って紅い手紙を藤本くんに渡すと、「ごめんなさい…許して…」と泣かれてしまった。
「えっ!? ちょ、ちょっと…どうしたのよ??」
ガクガクブルブル捨てられた子犬のように泣きじゃくる藤本くん。どうして良いかわからずに、助けてと桜ちゃんに視線を送る。すぐに駆けつけてくれた桜ちゃんは、藤本くんの胸元を掴むと…。
「いつまでもピーピー泣いてんじゃねー」と怒鳴りつける。
「ええええええっっ!? ちょ、ちょっと、何なの? 何かおかしいわ」とアタフタする私。
丁度、今晩の献立のことで相談しに来た七海ちゃんが、事態を掌握して藤本くんに説明したことにより、異常だったクラスの雰囲気が沈静化した。
これにより、月下 七海の評価は更に上がるのだった…。
「もう、何を勘違いしてるか知らないけど、藤本くんと本田さんに、魔法使い・魔女になってもらいたいのっ!」私はほっぺたを膨らませて怒る。
「えっ!! わ、わたしもっ!?」と遠くの席で驚く本田さん。
驚く本田さんに「はい。本田さんの手紙」と渡す。
「あのね、魔法書との相性があるの。だから、まだ魔法使い・魔女になれるか、わからないけどね」
その言葉を聞き、藤本くんと本田さんは、拳を握りしめ、まだ回避のチャンスはあるのだ! と最後の望みに全てをかけるのだった。
「二人とも、すごいやる気だね!」と私はニッコリする。
(ちげーーーーーよ)とクラスの殆どの人が思ってるなんて、私は知らない。
チャイムが鳴り授業が始まるが、二人の修行どうしようかな? 将くんや桜ちゃんと一緒にした修行だと、時間がかかっちゃうし…。
あっ! 藤本くんと本田さんで、初体験?? ぐふっ…。
そんな妄想をしていると、桜ちゃんから脳内通信が…。
”エロいこと考えてる? 顔から情報がダダ漏れだから…”と注意されてしまった。