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修行のおわり

最後の訓練は熾烈を極めた。お師匠様との組手の毎日。朝も昼も夜も…。次々新しい魔法を解読し、既存の魔法の精度を上げ、魔法の使い方を戦術として昇華させる。それが出来なければ、お師匠様にボコボコにされるだけなのだ。


「舞い上がれ!!」桜の飛空魔法によって、お師匠様が上空へ巻き上げられた。


「ふっ。飛べない私を落下死させる気か? うむ。悪くないぞ」


だが、お師匠様の右手から、炎が吹き出たと思うと、ピタリと空中で止まる。炎により噴流を生成し推進力としているのだ。


「お師匠様が、空を浮く?」驚いた私に上空から、溶岩の塊が雨のように降り注ぐ。


「空を制したのだぞ? 有利なうちに、殲滅するのが基本だろ?」とお師匠様は楽しそうに笑う。


「呪術。デバフびっくり箱っ!!」箱と言っても箱など召喚しない。数ある毒・病気・呪いをミックスしたステータスを激減させる魔法であり、相手に直接影響を与えるダイレクト魔法なのだ。


「ぐっ…小賢しいマネを…」


「”重力の卵”」将がお師匠様の真下に黒い塊を召喚する。それは重力の塊であり、お師匠様を引きつける魔法だ。


「馬鹿野郎…。こんなのに吸い込まれたら、死ぬだろうっ!! 小型ビックバン!!」


ドゴーーーーーン!! 大地が揺れ、辺り一面隕石が落ちたようなクレータが出来上がり、あまりの高温に三人の魔法障壁が耐えきず破壊されると、三人共、消滅してしまった。


「しまった…。つい…」


地面に3つの血の魔法陣が構成されると、三人の体が召喚され、彷徨う魂が遺体に入り、蘇生された。


「お師匠様…。殺す気ですか?」泣きながら私たちは訴える。


「いや、すまんすまん…つい…な。お前たちの攻撃が、それは素晴らしかったからな…」


「ぐっすん…。お師匠様、確認ですよ? ここ魔法の要じゃなかったら、今の本当に死んでますからね? 遺体も燃えちゃってるんですよ? 普通、復活なんて出来ませんからね? 本当に、本当にわかってますか?」


泣きながら近づく私を片手で制した。


「あぁ〜うるさい、わかった、わかった」


私たちは”魔法の要”について深く共感できるようになっていた。ここでは通常の魔法を遥かに超えた力が発揮でき、今の蘇生魔法も本人だけでなく、他人へ、それもかなり強力な復活魔法として利用できていた。


裸の三人をまとめて抱きしめながら、お師匠様言った。


「よくがんばった。無茶な課題を真面目に乗り越えてくれて…ほ、ほんとうに…」


お師匠様は泣いていた。お師匠様が泣いたのなんて見たことがない…。


「くっ。これが親心なのか…。お前らの…ぐっすん…。背も伸びた。新しい衣装も用意した…ぐっすん…。外の世界に帰るぞ…ぐっすん…」


こうして三人の長くて不思議な修行生活が終わりを告げたのでした。


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