最強の癒やし魔法
絨毯に乗り輸送機を追いかける師。もう大丈夫だ…師に対する絶大な安心感から緊張の糸が途切れた。
しかし…。
”美羽っ!! 茜が死ぬっ!! 最大の治癒魔法を用意しろっ!!!”
輸送機が音もなく消滅したかと思うと、師が脳内通信で、茜ちゃんの危機を知らせる…。
予想もしない現状に、慌てふためき、神聖の魔法書を出す。
そして、ペラペラ…と自分の限界を超えた…ページを偶然に開く…。
これにかけるしかないっ!! お願いします…。癒やしの女神よ…。どうか…お力をっ!!
本気の祈りが通じたのか、解読不能だった文字が…日本語に書き換わる…。ありがとうございます…。
「癒やしの女神よ、全ての子に慈悲をっ!!」
ここまでがスタンバイ状態を作り出す詠唱部分…。早く…茜ちゃんを!!!
空飛ぶ絨毯は、ぐんぐんと急降下し、最後は…私の目の前で停止した。
停止と同時に、師の”フレイムドーム”が展開された。
防御が目的か? 視界の遮断が目的か?
地面に茜ちゃんを置き「美羽っ!!」と師は叫ぶ、「”女神の息吹”」と私は魔法を発動させる。
神秘的なオーラを身に纏う女神が降臨し、茜ちゃんの魔女っ子衣装がないおヘソ丸出しの部分の銃痕が消え、女神は…花びらに…花びらは…光の粒子に…なり…消えた。
相田 桜が、茜ちゃんに近づくき…「息がない、心臓が動いてない…。嫌、一条さん、起きてっ!」と叫んでいる…。私の魔法で…救えなかった? なぜ? どうして…。
師の”フレイムドーム”が答えなの? 既に…茜ちゃんは…死んでいた?
「SP、そして、ここの全員。聞け。一条 茜が死亡したことについて、箝口令を敷く。また言論統制および情報操作に協力してもらう。簡単に言うが、詳しいことは言えない。だが、現在、日本は世界から狙われている。いいか、茜が死んだことにより、日本の防衛力が40%ダウンしたと思え。茜が死亡したことが知れれば…日本は侵略されるだろう、何十万、何百万と…人が死ぬと思え」
全力で”女神の息吹”を使った私は、師を見上げながら、その恐ろしい現実を聞く。
「おい、絨毯女、そこをどけ、茜の遺体を…焼却する…」
「嫌っ! 何で、そんな酷いことをするのっ!!」
「聞いていなかったのか? 茜の死体が見つかれば、世界のバランスが崩れる。正直、今は…茜が死んだショックで…私も…普通じゃいられない。退かなければ、お前ごと…燃やすぞ…」
「うっ…もう嫌よ…こんな世界に耐えられない…。お父さんも…お父さんの助けた一条さんも…次々に人が死んでいく…私は…一条さんに謝らなければならないのっ!! 私も殺しなさいよっ!!」
確かに…茜ちゃんは…今にも起き出しそうなほど、綺麗な顔で、ただ安らかに眠っているだけに見えた。
師は…右手をゆっくり上げ、茜ちゃんと相田 桜に向け…魔力を集中したのだった…。