お父さん、勇気をください
一条 茜には…感謝の気持ちしか無い…。
「お父さん、ありがとう、本当の娘と思ってくれて…。さようなら、もう悲しまないわ」
そう言ったとき、足元に何かが転がってきて、煙幕が上がった。お父さんとの訓練の成果なのか、無意識に口を塞ぐと、飛びかかってくる一条 茜が目に入った。
銃撃戦が始まるが、一条 茜のおかげで、私たちは…ちょうど通路の窪みに、飛び込むような形になった。ここは不味いわ…逃げないと…。
「”空飛ぶ絨毯”」と絨毯を召喚する。そう私は”飛空の魔法書”を持つ飛空魔法の魔女。
一条 茜を絨毯に乗せる…。ぐったりしているのは…魔力欠乏症なのか…。
防火壁まで締まりだす…。不味い閉じ込められてしまう…。脱出経路を探すと、天井に大きな排気ダクトがある…。流石、自衛隊の地下基地ということなのかな??
運良く、ダクト内に入れた。寝っ転がりながらでも進める絨毯が役に立った…。
兎に角、外へ…。一条 茜の息が荒い? どうしたの? まさか??
一条 茜が手で押さえているお腹から、手を退けると…大量の出血がっ!!
「い、一条さん…撃たれたの??」
大変っ!! 早く治療しないと…。お父さんが助けた命を私が消すわけに行かないっ!!
全力で、迷路のような排気ダクトを潜り抜け、地上へ脱出したのです。
滑走路? 輸送機や何やらがあり、ライフルを持った自衛官が、こちらを指差しています。
ズギューンッ!! 威嚇射撃…。なぜ?
「おい、降りてこい。降りてこないなら撃つ」
「う、撃たないでっ! 降りるからっ!!」
ゆっくりと降りると、ライフルを持った自衛官が近づいてくる。
「おう、これで全員だな。出発だ。魔女二人を輸送機にっ!!」
やられた…この人たちが、犯人だったのか…。でも…どうしようもなかった…。こんなときお父さんなら、どうしたのだろうか?
「待ってっ! 一条さんは、銃で撃たれて、治療しないと死んじゃうわっ!」
必死に訴えるが、驚きの回答が返ってきた…。
「あぁ…丁度いいじゃねぇーか。これで魔法書は俺達のものだ」
手錠を両手にかけられ、輸送機の後部の扉、コンテナの運搬出入り口部分から中へ…。
そして一条 茜は荷物のように投げ入れられた…。投げ込まれた床には、どんどん血の海が広がり、それを見た、他の同期の魔法使い・魔女たちも…戦意を喪失し、言葉を無くしていた。
一条茜を助けるためにっ!! お父さん、勇気をください…。
コンテナのハッチが閉まる…その瞬間、私は”空飛ぶ箒”を召喚して、輸送機の外に逃げ出す。
そして…飛空魔法以外の唯一の魔法…煙幕で…”S・O・S”と滑走路の上空に描いたのだった。