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降霊

「あのガキ…殺すっ!!」と師が、茜ちゃんと相田 桜の喧嘩に割って入るのを阻止した。


「駄目です。茜ちゃんが自分で乗り越えなければ意味がないですっ!」


「はぁ? 離せ、美羽。あのガキは何も知らないから…」


私と師が通路で揉めていると、茜ちゃんが降霊の術を発動しました。


死体があったり、死亡現場なら…降霊もできそうですが、ここにいない霊、相田さんの霊を呼び出させるものなのかでしょうか?


それは…相田 桜の…父親を思う気持ちを…利用したようです…。茜ちゃんは、相田さんの手をぎゅっと握り、魔法を発動したのです。


ゆっくりと浮かび上がる影、それが…はっきりと相田さんとわかる…すごい…。


『茜ちゃん、呼んでくれてありがとう。桜…。あまり茜ちゃんを責めないでくれ』


「でも…お父さん…。私は、お父さんに死んで欲しくなんてない…」


『お父さんは、茜ちゃんのSPだ。今でも…茜ちゃんを守れてよかったと思っている。あれは…本当に偶然だ。あのビルの屋上…ちょうど次のヘリコプターが着陸するため、茜ちゃんを下がらせようと、一歩前にでたとき、私は…銃弾に貫かれた。あのとき、茜ちゃんの前に出なかったら、茜ちゃんは…。あのときの運の良さは、SPを真面目にやってきたからだと思っている。桜、茜ちゃんを恨むんじゃなくて、一緒に…協力して…立派な大人…魔女になってくれないか? お父さんからのお願いだ』


「お父さんは…それで良いの? 本当に幸せなの? 後悔していない?」


『あぁ…。桜を一人にしてしまうことは本当に後悔している。本当にすまないと思っている。だが、茜ちゃんを守れたことは、神様にさえ後悔していないと言えるさ』


「わかった…」


『そろそろ茜ちゃんの魔力も尽きそうだ。桜。今までありがとう、そして、幸せになってくれ』


「お父さん、ありがとう、本当の娘と思ってくれて…。さようなら、もう悲しまないわ」


茜ちゃんは、相当無理をしていたのでしょう。両膝を付きドクロの杖で体を支えています。


そう…あまりの感動に…私も、師も…SPすら…隙きを作ってしまったのです…。


茜ちゃんと相田さんのすぐ横から、煙幕が上がりました…。SPたちは二人を保護しようと走り出したのですが、二人を挟んだ反対側から、銃撃され近づけません…。


師もすぐに臨戦態勢に入るのですが、煙幕に神経系が麻痺する何かが入っていたらしく…思うように魔力が扱えないようです。私も…師の状態を回復させようとしたのですが、同様に魔力が扱えませんでした。魔力が扱えない魔女は…身動きもとれないと初めて知ったのでした…。


そして防火壁が通路を塞ぎ始め、茜ちゃんのいたエリアから遮断されてしまうのです。


「くそっ!!!!!!」師が怒り狂い、建物を吹き飛ばしそうな状態に陥るのですが、それを制して、「師は…司令室へ戻ってくださいっ! 私が、私が…SPと共に、茜ちゃんを追います」


師は私の肩に手を乗せ「もう、美羽しか…信じられる者がいない…茜を頼む」と言い残し、SPに肩を借りながら、去っていきました。


待ってて…茜ちゃん。絶対に助けるから…。


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