糾弾
私は相田 桜12歳。あの一条 茜と同じ小学校六年生。同い年なのに…。
一条 茜がトイレから出るのを待つ。心臓がドキドキしてきた。トイレから出てきた一条 茜を睨みながら、「ちょっと話がある」と言った。もう…後戻りできない。
怯える一条を、誰も来なそうな通路に連行すると、言いたいことをまとめていた頭の中が真っ白になる。でも、何か言わないと…。
「人殺し…。お父さんを返してよ…」
やっと絞り出したセリフが、これだった…。違うもっと言いたいことは違ったのに…。
「えっ!? あの…どういうこと…ですか…?」
一条 茜は今にも泣き出しそうだ。泣きたいのはこっちなのにっ!!
「私のお父さんは、相田 静雄。あなたのために、なぜお父さんが…死ななければならなかったの? お父さんを殺しておいて、お葬式にも来ない…。あなたは…。私のお父さんを何だと思ってるの!?」
「相田さんの…」
一条 茜は…。焦点が合っていない…。何かを言おうとしているのだが…気持ちが追いつかないのだろうか?
「何か言いなさいよっ!!」
「ご、ごめんなさい…。私…」
私はサバイバルナイフを出す。私の魔法には人を傷つけれらるような魔法はない。
一条 茜にサバイバルナイフを差し出す。
「これで、死になさい。死んで、お父さんに…謝って…。こんな子供のSPなんてするから…。本当に馬鹿で可哀想なお父さん…」
一条 茜は、サバイバルナイフを床に落とすと、今までとは違い、キッと私を睨んだ。
「相田さんは、馬鹿でもないし、可哀想でもないっ!! 相田さんはSPとして、いつも命の危険に晒されながら、信念を貫き通したのよっ!! そんな相田さんを馬鹿にするなんて許さないっ!!」
「あなたに許されるとか言われたくないわっ!! 人殺しっ!!」
「わかったわ。今から…相田さんを呼ぶ。でもね…これだけは信じて…私が呼び出す霊には、一切の命令もお願いもしていない…。だから、”私を助けられて良かった”とか、”助けるんじゃなかった”とか、”死にたくなかった”とか、”世界中を呪ってやる”とか、”お前らも道連れだ”とか…。何を言うか、全くわからないわ。それでも…相田さんを呼んで、真実を確かめる勇気が…あなたにあるのかしら?」
何? とんでもないことを言い出した…。お父さんを呼ぶ? 嘘よ…。そんなことできるわけ…。
あっ…もしかして…?
「あなたの魔法って?」
「死と恐怖を司る魔法…”死霊の魔法書”よ」
なぜか、一条 茜は泣いていた…。頬を伝う涙に嘘はないのだと、信じさせる何かがあった。