三人暮らし その4
お風呂でプチ興奮してしまい。まったく眠くなくなる…。
いつものようにというか、一度しか三人で寝たこと無いけど…。
私が真ん中、涼くんが左、七海ちゃんが右。
「でもさ、二人が帰宅できて良かったよ。私ばかり両親に会うことができるからフェアじゃないしね。でも、今度は私も会えなくなるから…一緒だよ」
私は両親が保護プログラムで、名前も職業も何から何まで変更して、身を隠すことを二人に伝えた。
「茜様っ! 全然一緒じゃないですよっ!! 私たちは…許可があれば…家族に会えます。でも…茜様は…もう二度と…会えないじゃないですかっ!!」
涼くんが珍しく泣いている…。私のために泣いてくれているのか…。正直うれしい。
「でも、私の両親も…。友達も会社も過去の何もかも捨てるんだよ…。私のせいで…。でも、そうしないと…命を守れないから…」
「わかってるよ…。茜ちゃん…」七海ちゃんは”茜ちゃん”と言ってくれる…。友達とし親友としてわかってるよって言ってくれたんだ。
「だからね。今度、2時間だけ会えるの…。そのとき、私は…。こんなに強いのって…家族に見せてあげるの…」
そこまで言うのが限界だった。声を殺し泣いた…。幼稚園の頃の思い出や、お父さんと喧嘩したこと、お母さんと一緒に料理して褒められたこと、弟から誕生日プレゼントもらったこと、何気ない思い出が一番素敵だと気が付いた。
まだ名前も覚えていないSPの二人も、つられて…泣いている…。SPなのにっ!! なんて言わないよ。一緒に泣いてくれてありがとう…。
「七海ちゃん、涼くん…。私のわがまま聞いて。二人とも私に抱きついて…」
体温が高くふっくらした女の子らしい七海ちゃんと、少し筋肉がある男の子らしい涼くんに、抱きつかれながら…一人じゃないんだよっと思いながら…夢の中へ…静かに入り込んだ。
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それからも三人で、夏らしくない冷夏の夏休みを過ごした。
「まったく暑くないね。何でだろう?」
「えーっ、涼しほうが良いよ。魔女っ子衣装だから、汗かきたくないし」
「茜様はそうよね。でも…なんだか物足りないわ」
「あっ! 今日から…エレンさんたちが来るのよね?」
そんなこんなで、エレンさん、七海さん、治療から復帰した芽衣さんの三人が、特別に秘書兼世話係として合流した。
「今日は、私と芽衣だけですが、早速、連絡があります。今週末に茜さんの同期と懇親会があります」
「あっ、欠席で」と即答する。
「金剛寺様もいらっしゃるので、強制的に出席となりますが?」ニヤリと笑うエレンさんだった。