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頂点に立つ者

いつもとは異なる真紅の魔女っ子衣装…。燃え上がるよな赤に白い羽の刺繍。ラグビーボールほどの大きさのルビーが浮く真っ赤な杖…。それらが神々しく太陽の光を反射していた。


お師匠様の本来の衣装…。その魔女っ子衣装を着衣する理由は…世界に金剛寺が本気だと示すとき…。


茜は、相田の代わり…茜専属のAランク護衛隊長・柴田 兵太に、金剛寺 忍の歴史と、今回の事件について、包み隠さず説明されたのである。勿論、お師匠様からの指示だ。


お師匠様が魔女として覚醒し、大陸間弾道ミサイル以上の力を手にした頃…。日本は、まだお師匠様の重要性についての認識が甘かった。


お師匠様の家族である弟が誘拐され、敵国はお師匠様との交換を要求してきた。勿論、お師匠様は交換に応じるのだが、日本国に騙され…拘束されたまま…交換期限が過ぎ、弟は…斬首されてしまう。


怒れるお師匠様が…日本国の包囲網を抜け、今、目の前の真紅の魔女っ子衣装を身に纏い…敵国へ”審判の炎”を撃ち…世界地図から…その敵国を消し去ったのだ…。表向きには、内乱による政権交代と国名の変更とされている。


その後、お師匠様の家族は、表面上では誰も気が付かない裏バッシングを受けて…行き辛くなった両親は自殺してしまったのだ…。残されたお師匠様は…弟が最後に発した言葉…”日本を守って”を胸に、ずっと一人孤独な戦いを続けたと…。


そして…魔法書が手に入る今年。世界中で優良な魔法書が手に入る…。それは…世界のバランスを変えるまでには至らないが、その可能性を秘めていたのだ。現在の世界のバランスを変えるべく、反社会的な国々や組織が日本に潜入して…ありとあらゆる裏工作を実施する中、お師匠様は…弟の言葉を守るべく、必死に駆けずり回っていたのだ。


そして…お師匠様と同じ道を私が…通る可能性があり…お師匠様は…全ての権限を用いて…敵国へ、お師匠様の本気を示す…。


それが…今から始まるのです…。


「美羽、茜。私の側から離れるな。世界で一番安全なのは、私の側だからな」


お師匠様は、私とお姉さん、大勢のSPを引き連れ、自衛隊の敷地中央へ進み空を見上げた。


お師匠様の右手が空に向かって伸びると、ドーム型の薄紅い壁が辺りを包む。時間と共にドームは大きさを増し…敷地いっぱいにまで広がった。


私とお姉さんは手を握りあった。お師匠様は全身が魔力の塊だった。その塊を更に右腕に集中させると、ドームの内側に、大小様々な魔法陣が…描かれては消え、また描かれては消えを繰り返し…ドーム内に魔力が圧縮されていく…。


左手に持つルビーが浮く真っ赤な杖を天高く掲げると、ドーム外側の上空に次々に魔法陣が描かれる。魔法陣は上空へ行くほど大きくなり、もう何重層なのかもわからない。


「世界よ、跪くが良い…。”審判の爆雷”」


ドームの外では大爆発のため、自衛隊の建屋が半壊し、辺りの木々をなぎ倒した。


真っ赤に燃える炎の塊は、魔法陣を通り過ぎる度に加速し…外気圏まで到達し…何処かに飛んでいく…。


後に、基地の軍事衛星からの映像で、その破壊力を目の当たりにした…。


小型隕石のような塊が、インド洋に落下し水蒸気爆発を引き起こすと、高さ数十メートルの巨大な津波を発生させた。


被害はオーストラリア、インド、マダガスカル、マレーシア…各地におよび、全世界に次は無いと知らしめたのだった…。

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