それぞれの決意
本土にある、お師匠様のお家…自衛隊の基地の中でした…。う〜ん。日常が…。
お師匠様は、とても忙しそうに、部屋を出入りしている。
「茜、すまんが、SPの葬儀には参加できない。今は、とても状況が混乱していて、何が起こるかわからないのだ」
「はい…」
我儘を言ってはいけないし、もしものことがあれば、相田さんに顔向けできない。
ここは、お姉さんと一緒に、魔法のお勉強をするべきですよね? あれ? お姉さんがいない…。
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私は、斎藤 美羽。神聖と光の魔法使い。茜ちゃんの師でありながら、近くにいることすらできなかった。無能な女だ。黒煙と炎が舞い上がるビルの屋上、携帯小型ミサイルの脅威のため、着地すらできなかった。もっと光の魔法を勉強していれば…あるいは…。
大切なSPも殺され、その重荷は…全て茜ちゃんが背負ってしまった。
「悔しいです…。もっと力があれば…」
師である金剛寺 忍に殴り倒して欲しかった…。
「甘ったれるな」たった一言を言い残し、師は部屋を出ていってしまった。
もっと…強く…もっと…役に立ちたい…。
焦る私に力を貸してくれたのは、驚くことに私の同期だった。
あまり話したことがないけど、西村さんの弟子だったことから、この基地に配属されたそうだ。
「焦っても駄目だ。もっとイメージを大切にするんだ」
山上 陸は、顔に似合わず、花の魔法書と、泉の魔法書を持つ…ちょっと…したポエマーだ。
プライドなんて捨てる。化粧が落ちようと、髪が乱れようと、服が汚れようと…。
私だって…茜ちゃんを守り、師匠の役に立ちたいっ!!
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そっと練習場のドアから覗いていたのは、金剛寺だった。
「全く、馬鹿な弟子を持つと…」
山上 陸を向かわせたのは、紛れもなく金剛寺本人であり、師も美羽の成長を願っていた。
「金剛寺さん、魔法防衛特務長官から、明日の朝には準備が整うとの連絡がありました」
「そうか…」
SPや国の関係者に戦慄が走る…。金剛寺の表情が…弟子の成長を望む優しい師匠の顔から、敵を滅ぼす悪魔の形相に変わったのだ。
また魔法大国日本を中心とした世界のバランスに何かが起ころうとしていたのであった。




