認識せよ
ホットココアを持って、お師匠様が様子を見に来てくれました。
「ほら、本当は魔力が減るから飲ませたくないのだが、こんなときは甘いのが良いだろう」
「ありがとうございます…」
「茜の心に傷が残る事件になってしまった…。だがお前自身も報告書を上げなければならないのだが、まずは…一番、茜の心に刺さっている箇所から…説明する」
ソファーに座り直し、ぎゅっと膝の上で拳を握る。
「死亡原因からだ。本当は子供のお前に教えるのは反対なのだが…。お前は妙に大人っぽいところがあるからな…。相田 静雄は最初の犠牲者だ。隣のビルから狙撃され即死した。小野 大樹も隣のビルから放たれた携帯小型ミサイルで…ヘリコプターが爆破され、その破片が刺さり死亡した。飯田 光司はヘリコプター爆破前に内部からの銃撃で死亡」
私の拳の上にポタポタと涙が落ちる…。身近い付き合いだけど…いつも真剣に…子供の私を守ってくれた…。
「これでも…犠牲者は少ない方だ。茜、お前の召喚した骸骨たちは…みんなをきっちり守っていた…。屋上への入り口を…私が来るまで誰も通すこと無く守りきったのだ。それに隣のビルから撃ち放たれる小型ミサイルへ自ら特攻して空中爆破させていたらしいぞ…。茜が守ったんだ」
「また打たれたいのですか? しっかりと喜ぶところですよ。自身を持ちなさい」
ソファーの後ろに立つエレンさんは肩に手を乗せ励ましてくれる…。
「はい…」
「まず、今回の事件の概要を説明すると、このビルの地下にある人物が幽閉されている。敵は生きていると思っているようだが、もう死亡している。敵は、その人物を奪還もしくは暗殺するために、このビルを襲ったのだ。運が悪いことに隣のビルは敵の日本支部だった…。そんなところに、私は…お前を呼んでしまったために…。本当に、すまない…」
涙を拭い「私が呼ばれた…私がすべきことが、まだ終わってません。それを終わらせないと…なんのために…みんなが…」と告げる。
「わかった。いくぞ」
連れて行かれた地下には、体の右半分がない男性が寝かされていた。
「本当に、こんな小さな子が?」と長官と呼ばれていた男性が言ったが、無視して”生ける屍”の魔法を唱える。
死体はフラフラと立ち上がり、私の目の前で跪く。「ゴシュジン、サマ。ゴヨ、デスカ?」
「はい。この人たちの質問に正直に答えなさい」
私にとって意味がわからない回答でも、周囲にいる大人たちにとっては驚愕の回答だったらしい。
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茜には悪いけど、Cランクでさえ守れなかったビルを守りきったこと、死体から情報を吸い上げる能力…。これで茜が…どれほど危険な能力を持っているか…大人たちも…日本という国も認識せざるを得ないだろう…。一刻でも早く…茜を保護しなければ…次は家族を…命を狙われる…。
「金剛寺さん、この後、ちょっと内閣総理大臣から…呼び出しがかかりまして…ご一緒して頂けませんか?」
「わかりました。ですが…茜の保護を最優先としますので、茜も一緒ですがよろしいでしょうか?」




