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世界の素顔

「純くん、鎖を解きますから、もう暴力は振るわないでください」


涙目で純くんに訴えるが、「私は、一条さんの護衛ですが、命令には従えません。私は一条さんではなく、国家に従えるものです。このゴミは早急に処分しなければなりません」と制裁をやめるつもりはないらしい。


「どうすれば、彼は許されるのですか?」


「そうですね…。見せしめに殺そうかと思いましたが、生かしておいても、それなりに役立つでしょうから、一条さんへの完全な謝罪を要求します」


でも光輝は、謝罪どころか、ほぼ死にかけている…。


「”生命の共有”」


自分の生命力を相手に分け与える魔法だ…。だけど、こんな重症の治癒に何処まで効果があるのか…。


気分が悪くなり、私は床に座り込む…。もう限界だ…。


光輝の怪我はある程度治っているが…。


「純くん、光輝は謝罪できるような状態ではないです。治療の後でも…よいでしょうか?」


「はい、問題ありません…。しかし一条さんの体調も思わしくないようですので、本日は早退させて頂きましょう。よろしいですね?」


チラっと行き遅れババアのとし子先生を睨むと、「も、問題ございません、光輝もこちらで対処いたしますので、どうぞお帰りください…」とペコペコしている…。


全く役に立たない先生だよ…。


教室をでるとき七海ちゃんと目が合う…。七海ちゃんは私のことを心配そうに見ている…。


「ごめんね」と小さい声で七海ちゃんに言うと、「またね」と返事をしてくれた。


それだけで嬉しかった…。


黒いピカピカ車の中で、「超上級国民ってなんですか?」と聞いてみた。


超上級国民とは、生死・言動・行動などが、国家にとって行く末を左右しかねない国民のことで、何を犠牲にしても守らねばならない存在だ。


「相田さんも?」


「いえ、私たちは、最上級国民です。この権利がなければ、SPが成り立ちませんから」


今日の運転手であるエレンさんに、純くんの対応を聞いていみた。


「当然の対応ですね。何一つ間違っていません。強いて言えば、落ち度は…。その場でガキを射殺しなかったことですかね?」


こんな世界だっけ? 


「でも、今まで、そんなニュースも、話題も、聞いたこと無いよ? SNSの時代じゃない、絶対に隠せないよね?」


「通信を傍受して、国家に不利益な情報は遮断していますし、そんなの投稿する下民は、即処分ですから…」


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