声
あの日、最大の敵、砂の女王と呼ばれるシャフィーカが、地下基地を襲ったのです。
師である金剛寺 忍が、私と茜ちゃんを守りながら、シャフィーカと対峙するのですが、これだけ努力したのにも、またも感じてしまうのです、劣等感を…。
「光の魔法」と「神聖の魔法」は、修行により別次元の強さを身に着けました。でも、根本的に、この三人は、規格外なのです。師の炎と対等に渡り合える砂、それに付いていける茜ちゃんも…。
”その嫉妬こそ、お前が、あいつらに追いつけない原因だ”
”それに目指すべき方向が違っている。私がお前を導こう”
そんな声がどこからか、聞こえてきました。
師と茜ちゃんを相手に戦っていたシャフィーカも力尽きようとしていました。そこに茜のピンチだと嘘の情報を流し、国立魔法防衛大学附属中学校の生徒たちを呼びつけたのです。これで師も茜ちゃんも強力な魔法が使えなくなりました。倒れる寸前のシャフィーカに、治癒と魔力回復の魔法をかけると、シャフィーカは、最後の命を使い”踊る砂塵の刃”という魔法を発動させるのです。
師も、茜ちゃんも、SPも、七海ちゃんも、バラバラに刻まれ…肉塊となって、ビシャッ!! ボトボトと心地良いい音と共に地下基地の廊下に崩れ去ったのです。
私は、この瞬間を忘れません。だって世界で一番強い者になった瞬間ですから。
だけど、師は、崩れ行く体と意識の中で、転移魔法を発動させたのです。
地下基地の廊下に残されたのは、血だまりだけでした。
一条 茜には復活の魔法があるのは、知っていました。勿論、あの場所で、光魔法を使い茜ちゃんが復活する前に消し去るつもりでした。だけど、そのタイミングを逃してしまったのです。いつ復讐に来るかわからない恐怖に怯え、化粧で誤魔化していますが、心も体も限界に来ていたのです。
そして3年後、海ほたるで再会するのです。勝てないのはわかっていますが、ここで茜ちゃんと戦うつもりでした。でも茜ちゃんは、姿こそ大人に近づいていましたが、私を見るなり「お姉さん」と声をかけてくれたのです。
師弟の契約魔法があるため、私を殺せないことに気付き、契約を解除したのですが、それでも子猫が母に縋るように、抱きついてくるのでした。
殺さなければ嫉妬し、殺せば後悔する…。そんな出口のない永遠のループが、私を苦しめるのです。
”一条 茜には、演じるべき役目があり、そして、お前にも、同様に役割がある”
謎の言葉に導かれるがまま、海ほたるに向かい、最後の魔法書を手にするのでした。
”真実の魔法書”
これが三冊目の魔法書であり、私の役割に関する重要な魔法なのでしょう。
海ほたるから空を眺めると、超魔導級戦艦大和から放たれた幾つもの禍々しき紅い魔法のエネルギーが空を駆け巡り、世界中の都市を消滅させている…。そのうち巨大な津波が来て海ほたるを飲み込んでしまったのです。
「これは…茜ちゃんの天災の魔法ね…」光の翼を顕現した私は、上空で沈みゆく海ほたるを眺める。
茜ちゃんの人類抹殺計画が、スタートしたのでしょう。私も役目に遅れないように、茜ちゃんのいる方角を見つけると、真実の魔法書を覚える時間を考慮しながら、ゆっくりと近づくのでした。
”さぁ、もうすぐだ”




