生と死
「………、今日は…。このハムスターを使います…」
いよいよ、来てしまったか…。
「どうしても…やらないと駄目?」
お姉さんは困った顔になる。
「私は…神聖と光だったから…。傷を癒やす練習で、ハムスターを傷つけたこともあるけど…」
「私が傷つけたら…お姉さん治せる?」
「生きていればね…」
今から使う魔法の”生命吸引”は、相手の生命を自分の生命に変える魔法。
だから、使う前に自分を傷付ける。指先に針でちょっと血が出るくらいの傷を付けた。
覚悟を決めて、”生命吸引”の魔法を唱える。
キュッっとハムスターが苦しそうに倒れると、指の傷は癒やされた。
「お、お姉さん、助けてあげて…」
お姉さんは首を横に振る。ハムスターは死んでいるのだ、魔法で助けられない。
「茜ちゃん、ハムスターの死を無駄にしないで…」
続けて、”不死の再生”の魔法をかける…。つまりゾンビさんを作る魔法だ。
ハムスターは何もなかったかのように立ち上がると、燃えるように紅い眼でこちらを見る。
どうやら、命令を待っているみたい。
座れ、走れ、ジャンプ、どんな命令にも忠実に従う。
魔法を切ると、ただの死体に戻った。
「まだ次があるからね、しっかりして茜ちゃん」
「は、はい…」
もう疲れたよ…精神的に…。お家に帰りたいな…。
お姉さんは、私の気持ちに気付いても、修行で手を抜いたりしない。
”光の壁”の魔法でハムスターの死体を包むと、「さぁ、次の魔法を」と指示する。
”死体爆破”でハムスターの死体を触媒にして、爆発を起こす。
肉体の破片が、ベチャリと光の壁に付着すると、私はショックで気を失う…。
「あ、茜っ!! しっかりっ!!」
”心の安息”をかけてもらい、安らかな気持ちで、今日を終えたいと願った…。