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作者: スーホ

私の家は都市部から電車で小一時間離れたベッドタウンにあり、一言で言えば郊外である。


自宅近くには三桁国道が通っており、距離を除けば交通事情は悪くない。



夜半の三桁の国道ともなれば交通量は少なく、走っているのはトラックか、恐ろしい速度で走る車ばかりである。




それを見たのは愛犬を連れて散歩をしているときの事だった。


と言っても、深夜の散歩である。


仕事が終わり、帰宅して一息ついてから柴犬の散歩に出るのが日課で、時間はたいてい深夜0時を回る。


その日も柴犬のリードを掴んで、糞を処理するための散歩キットを腰のベルトに装着して家を出た。



今、足元で私を見上げているのは ひっぱり癖の治らない、おバカな犬である。

しかし、そのおバカがかわいい。


犬と一緒に国道沿いを歩いていると、向こうから結構な速度を出して車がやってきた。

この時間だとよく見かける速度帯である。

おそらく時速80キロくらいだろうか。



そのヘッドライトに照らされて浮かび上がる様に、何かが見えた。


おそらく猫だ。



猫は道路を横切って、やってくる車の前を通過しようとしている。



まずい。


あの速度では……


一瞬、足が止まる。

車は反対車線からやってきて、猫も私から数十メートル向こうに居てる。


こちらから何かアクションを起こしてどうこうできる距離ではない。


そもそも、車の速度を考えると、一瞬の話だ。



残酷な結果を想像した。



しかし、猫は車の前を無事に通過したようだった。


車は何かを跳ね飛ばしたりすることなく、通過して行った。



猫が車の前を通過してやり過ごすまで、それはほんの数秒の出来事であるはずである。

車の速度を考えると、1秒から長くて2秒以内の話ではないだろうか。



しかし、振り返って考えると妙に長かった。


猫が車のヘッドライトに照らし出されて、通過し終えるまで5秒から7秒くらいかかったように感じる。



何より、それを目撃していた時から違和感を感じていた。


頭の中で記憶を再生し、その違和感が何かを探してみた。



影だ。


猫の影は見えたのだが、猫自体を見ていない。


猫の影だけが車に照らされて、走り抜けていった様に思える。



きっと黒猫だったんだろう。



そう考えようとした。


しかし、まぶたの裏に見える映像では、奇妙に影だけが動いていた。



そういえば、私も以前、この道で 深夜に車をドライブさせていた時に、急に猫が飛び出してきて急ブレーキを踏んだ事がある。


猫らしき影は急に視界に入ってきて、車体の死角へと消えた。


そして、いなくなった。


車が何かを轢いた感触は無かったし、降りてみて つぶさに観察をしたが、自動車には何も異常は無かった。


素早く走り抜けて、路地裏にでも逃げ込んだのだろうと思っていた。



でも、もしかして あの時も影だけが走り込んできたのではなかったか。



いくら考えても何も答えなどでない。


犬が早く次の電柱へ行こうと引っ張るので、私はその場を立ち去った。


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