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Quarter Vamp  作者: KIMICHIKA
1/1

私の探し物とは・・


 不完全な私達は、いったい何を追い求めて生きているのか?生きてゆけばいいのか?


 手を伸ばした先に待つ物を必死で、藻搔き探し続けていく・・



それに、答えはあるの?終わりはいつ来るの?



   その時には、そうと分かるのかしら・・



 私は、何を探し求めているの?





 「ここはどこ?私は、何を探してるいるの?私が探しているのは・・・」

暗闇の中を漂う無数の小さな色とりどりの光に向かって、闇雲に手を伸ばし、掴もうと藻搔く己の手だけが見える。


「私だけの光、私だけの・・・」


音も無く感覚も何も無いその空間で私また、一人涙を流しながら必死に何かを探してる。


そして、気づくのだ。

朝の光を浴び、ゆっくりと目を覚ます。

「また、夢か。。。」

そう、それは最近頻繁に見るようになった夢。


私は、今日も目尻から涙を流し宙を掴むように腕をあげ、空しさの中で目覚めるのだ。

白い柔らかな毛布に顔を埋めこの空しさを押し殺し、

今日一日を過ごすための気力をかき集める


「ふぅぅぅ。。」


と大きく息を吐き出しながら、なんとか半身を起こし名残り惜しいように毛布を掴み勢いよくベッドから起き上がる。 

これが最近の自分の日課になっている。


「スッキリしないなぁ・・」そう言いながら前髪をかきあげる。

元来、物事を白黒ハッキリつけたい性分ゆえ 

ここ最近、見続けているこの夢にかなりのストレスを感じでいる。


己が求めている物が何かも分からず、

それなのに、ただひたすら必死に切実に深く求め探している。

この状況がとても歯痒く腹立たしい限りなのである。


  私の名前はエレナ 露口エレナ 15歳の女子高生だ。


167cmの身長に色白の肌を持ち、

腰までの長さのゆるやかなウェーブをえがく少し明るめの栗色の髪に、日本人にしては珍しい薄い色素の緑がかった茶色の目をしている。


というのも、私は純血の日本人ではない・・・


そして、純血の人間でもないからだ。

そう、私の身体には父方の祖父のイギリス人とそして、ヴァンパイアの血が四分の一 流れている。


私は、ヴァンパイアのような強靭な力や特殊な能力も無い

しかし、人間ほど弱く脆くも無い。



        "私は概ね、人間ではない・・"



その言葉が一番しっくり来るのだ。

そんな、中途半端な自分自身の存在自体が一番苛立たしいのかもしれない。


世間一般では、美少女と囁かれるほどの美しさの持ち主である

エレナは、大きな瞳に筋の通った形のいい鼻、

ほんのりピンクいろの頬に赤みを帯びた唇は、なんとも言えぬ膨らみと可愛さがあった。


当然、周りの男性達が放っておくわけもなくそのうち幾人かと付き合ってみたりもした。

しかし、完全な人間で無いが故に自分自信の持つ力の強さや丈夫さを押し殺す必要があった、それゆえの葛藤や虚無感に絶えきれずに、誰にも心を引かれる事もなく長続きはしなかった。


 食事は、普通の人間の食べ物を食べるし睡眠もたっぷり八時間はとっている。


日の光を浴びても何ともなく、ニンニクや十字架と縁よりヴァンパイアが苦手とするものには、全く反応はしない。

もちろん、聖水なんて「ただの水」と神に怒られてしまいそうだがそれぐらいエレナにとっては無害なのだ。


エレナの家は教会である。

父方の祖母の家系は代々続く教会を守る血筋で、その息子の父はここで牧師をしている。

ヴァンパイアと人間のハーフである父が牧師とは、なんとも言えぬ滑稽さがあるとエレナは常々考えていた。


教会を永きに渡って守り、神に仕えて来た祖母の血筋のおかげか、ただ、人間の血が濃いのかは分からないが、

父もヴァンパイアにとっては、天敵と言われるたぐいの物にエレナほどでは無いが触れる事が出来る。

しかし、日光や聖水に長時間触れていると 

さすがに体にこたえるようだ。


そして、エレナとの大きな違い、父は少量ではあるが血の摂取が必要という点だ。

月に1度が2度、母から血を貰っているのだそうだ。



 祖父には、私が5歳の頃に一度会ったきりで

今は、何処でどのように過ごしているのかは知らない。


祖母には、一度も会った事はない。

ただ、家に飾られている沢山の家族写真の中に

幼い父を愛おしそうに抱き微笑みながら、口づけをしている写真が飾られている。

とても美しく慈愛に満ちた祖母は、マリア様のように見える。

父からは、祖母は体が弱く父が物心つく頃にはこの世を去っていると聞いている。

そして、祖母が亡くなった悲しみから祖父は心を病み

まだ幼い父を祖母の家族が住むこの教会に預け姿を消したそうだ。


歯を磨き、顔を洗い身支度を整え両親の待つキッチンへと向かう。


「おはようエレナ」


 父が朝ご飯の用意されたテーブルにつき、新聞から顔をあげ微笑んでいる。


「あなた、また悪い夢をみたのね?」淹れたての香ばしい香りがするコーヒーカップを父と私の所に置きながら母が鋭く訪ねてくる。


私は、そんなに酷い表情をしているのだろうか?


友人には、エレナの夢の影響から来る重い気持ちや倦怠感を隠すための、空元気を気づかれた事はない。


さすがは、母親と言うべきか。。


それとも、ただ鋭い感性の持ち主なのか、

母には、時々ビックリするような鋭さを感じる。


さすが、ヴァンパイアと人間のハーフの牧師の妻になった女だ!

そんな事を考えていると。


「エレナ、早くしないと入学式に遅れてしまうわよ!」


母が、父の肩に手を置きながらもう片方の手で寝癖をなおしながら言う。

父は、ありがとうとと言いながら肩にのせられた母の手を包みながら母に口づけをする。


露口家の毎朝の日課である。

目を細めながらエレナは、「パパは、ママになおして欲しくてわざと毎朝寝癖をつけているのかしら?」と冷やかしながらも、

その日常の光景を眺めるのがとても好きだ。

エレナは、お互いを尊重し合い支えあって深い愛情で結ばれている両親を尊敬し、愛している。


父は私に、にんまりとイタズラっ子の得意げなような、

微笑みを返した。


初等部からのエスカレーター式の学校だから、いつもと同じ顔ぶれに気分はあがらず、

入学式と云えども、仲の良い友人と同じクラスになれるだろうか?ぐらいにしか考えていなかった。



そう、黒いパーカーのフードを深々と破った伏し目がちな、

彼を目にするその時までは・・




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