085●【解説2】魔法自衛隊と神女挺心隊《SJT》、四谷プロについて
085●【解説2】魔法自衛隊と神女挺心隊《SJT》、四谷プロについて
《魔法自衛隊の発足とその目的》
“魔法自衛隊”は、陸海空の自衛隊の母体となった警察予備隊が保安隊となり、その後一九五四年に自衛隊に改組されるに際し、陸・海・空の三自衛隊に加えて“魔法界”を担当する“第四の自衛隊”(第四の矢)として密かに創設されたものである。
西暦一九三六年の国際競技大会、伯林ピューテックの開会前夜、独裁者アドルフ・トヒラーはギリシャよりリレーさせた聖火を掲げて“降魔祭”を挙行、悪魔を召喚し契約を結ぶことによって、魔法の組織的な戦力化に成功し、その後勃発した第二次世界大戦の緒戦を破竹の快進撃で飾った……と伝えられる。
この例に倣って、当時の大日本帝国においても、本格的な“軍事魔法”の研究に着手し、戦力化が試みられた。主要組織として……
陸軍中野学校の“魔法分校”、
同・登戸研究所の“魔法室”、
同・小倉造兵廠の“魔法少女鑑別所”がそうである。
戦後の今、人道的とは言い難いその実態は闇に閉ざされ、その後に突入した太平洋戦争において、魔法の戦力化に成功したか否かも定かではない。
ただ言えることは、戦後日本の“魔法自衛隊”は、あくまでも日本国憲法の枠内においてのみ存在し得る、平和目的の“対魔防衛組織”であることだ。
魔法自衛隊の存立根拠は、日本国憲法第九条にある。
第一項にいうところの“戦争”に関わることなく、第二項にある“陸海空軍その他の戦力”に抵触しない範囲で、“魔法”という有形力を、日本国を防衛する手段として有効に活用することが、魔法自衛隊の主たる目的とされる。
したがって魔法自衛隊は、“魔法力を使用する戦争”をもくろむ、あらゆる組織や勢力に対抗し、その意図を挫く使命を、宿命的に帯びている。
さらにその任務は、魔界より襲来する有害な悪霊妖魔など“魔物”の脅威から、国民の生命と財産を守り、国土の主権を保持することにある。
とはいえ、西暦一九六四年、すなわち“招和”三九年初夏の現在、魔法自衛隊の主な活動は、十月十日にせまった“東亰ピューテック”開会の前夜に古代神を召喚する秘密の儀式……“神寄せ(アクティブ・コーリング)”……を成功させるために、魔物による妨害行為を排除して、首都の安寧を維持することに絞られている。
戦前に開催が予定された一九四〇年“東亰”ピューテックは、帝都に出現した邪悪な魔物によって誘致の返上に追い込まれた……と密かに伝えられるからだ。
襲い来る魔物を排除して、平和の祭典ピューテックをつつがなく開会に導けるか否か、それは魔法自衛隊の双肩に委ねられているといっても過言ではないだろう。
魔法自衛隊は、日本国政府の非公式な“闇政庁”のひとつである“統聖庁”の下位に属し、民間企業や私立学校に偽装して、隠密裏に活動を遂行している。
《神女挺心隊》
魔法自衛隊の中核となる実戦力は、概ね16歳から19歳を中心とする、優れた魔法戦闘力を有する42名の少女集団“神女挺心隊…略称SJT…である。
雇用形態は中卒採用の特殊公務員扱いとなる。
神女は、“しんじょ”あるいは“かむな”とも読む。神女とは、人間として生まれたのちに、ある種の神様に憑依されることにより、魔物に対する免疫力と強力な戦闘力を身に着けた“神憑き”の女子を意味している。
従って彼女たちは先天的な、生まれながらの“魔女”ではない。
後天的に魔法能力を身につけた“魔法少女:魔天使”に分類される。
“神女挺心隊”の魔法少女は21人を一組の実動集団として、桜組と菊組の、二つの組で構成される。一人で一小隊とみなし、七人で一中隊となり、これが三班まとまって21人の大隊となる。これが二組、すなわち二個大隊で編成された計42名の魔法少女連隊である。
魔法少女の戦闘力を「一人で一小隊」に換算するのは、彼女たちが心身に秘めている“対魔火力”が、一人でも戦車一輌以上に相当するからである。
“神女挺心隊”は日本国独自の命名であり、国際的には“WAC:WitchAngel Corps(魔天使軍団)”の呼称が適用される。
国連国際魔法軍のキャロル・ディアリング准魔将(セイレム魔女団総帥)は彼女たち魔法少女を「オリエンタル・ウィッチエンジェル」と呼び、西欧における先天的な魔女……ウィッカ……とは区別している。
神女挺心隊《SJT》の主な使用兵器は……
対魔弾種として、主に下記の二種がある。
祓魔弾:魔法炸薬によって、魔物を細かく粉砕し、存在力を削ぐ。
鎮魂弾:魔法斥力をもって、魔物を“あの世”へ排斥(逆召喚)する。
※鎮魂弾は、国内では神女挺心隊《SJT》の魔法少女にのみ製造と使用が可能なものであり、魔自の一般隊員には取り扱うことができない。
神女挺心隊《SJT》の主な使用兵器は下記の通り。
●百式機関短銃……口径8ミリ、弾倉30発の短機関銃。祓魔弾使用。
(南部十四年式拳銃と弾種が同じであり、魔自隊員はこちらを使用)
●九七式自動砲……口径20ミリの対戦車ライフル。鎮魂弾使用。
●六〇式自走無反動砲……口径105ミリの無反動砲を二門搭載。
鎮魂噴進弾を使用。
●国会高角砲……国会議事堂のピラミッド構造体の頂上ハウスを回転砲台として、旧海軍の長十サンチ高角砲を一門装備。鎮魂弾を使用。
●丸ノ内線列車砲……旧陸軍の対B29用十五センチ高射砲を装備した、地下鉄列車砲。一門ずつ二編成ある。鎮魂弾を使用。お茶の水射点と四谷射点より射撃する。
●その他、“四十六サンチ三連装短砲身魔動砲”を都内某所に建造中である。
また、個人用の固有携帯武器として、神楽鈴を憑代として発動する魔動剣(神楽剣)や、伸縮自在でヌンチャク的に使用することもできる音響兵器“対魔拍子木”などがある。
●タワーサイト……東洋一、東亰にて333メートルの高さを誇る“東高タワー”の高度250メートルに位置する“作業台”に旧海軍戦艦“長門”と“陸奥”の十メートル測距儀を設置、首都圏一円の警戒と国会高角砲などの遠隔照準にあたる。
●秋花……大戦末期のロケット機“秋水”を軽ジェット化した偵察機体。
コクピット内に魔法箒をセットし、推進力に併用する。機体に固有武装なし。
《魔法隊、そして魔法自衛隊》
神女挺心隊の対魔戦闘を指揮する、あるいは魔動兵器(動力や威力を魔法化した兵器類。小銃、戦車から軍用機や軍艦も想定される)で戦術支援する、あるいは補給や訓練、宣撫や諜報などで活動を補佐するといった諸任務を担うため、なんらかの魔法的素質すなわち霊能力を有する“魔法士”…霊能者…の男女400名が“魔法隊”として加わっている。
実動組織のトップに位置する隊司令・丹賀鉄虎(一等魔佐)を筆頭に、欧州最大の魔女結社ワルプルギス同盟より出向した教導武官ヒルデガルト・フォン・パイパー教諭と彼女が率いるタイガーシャーマン特車八輌による“TS特車隊”、そして民間企業や私立学校の職員に偽装して活動するメンバーもこれに含まれる。
この魔法隊400名と主戦部隊の“神女挺身隊”42名を合わせて、計442名が魔法自衛隊の正規隊員である。
員数は増えることも減ることもなく、欠員(休職、退職、そして殉職)が出たときにすみやかに補充することで維持されている。
総員442名という数字にちなんで……
この組織全体を正式には“MJ442連隊戦闘団(Мはマジックすなわち魔法、Jは日本の意)”、またの名を“魔法自衛隊”と称している。
国際呼称は「The MJ442Regimental Magic Combat Team」となる。
なお、正規隊員である442名を補助する目的で、魔法的素質(霊能力)が発現していない普通人による“間接支援隊”が、随時、首都圏から必要地域にわたって正規隊員の活動に助力している。おもに陸海空の自衛隊に所属する非公式な特命員によって構成される。
【解説(追加)】魔法自衛隊の偽装方法、すなわち“四谷プロ”について
魔法自衛隊が国内各地で実施する対魔戦闘は、国民の大多数にとって、見えない戦争である。
それは、魔力を持たない“普通人”の目にはほとんど見えない魔物に対して、魔法少女たちが魔動剣(神楽剣)を振るい、念動力で衝撃を放ち、対魔効果を有する銃弾や砲弾を浴びせる行為となる。
普通人からすると、魔自の戦闘行動は、“見えないものを見えるかのように”扱って、真剣に戦うポーズをとっているようにしか見えない。
この状態に最も近い、普通人が見て納得できる行動形態は……
怪獣などと戦う特撮映画のロケ撮影である。
そこで日本国の魔法自衛隊は、まるごと特撮映画製作会社“四谷プロダクション”に偽装しており、日々の対魔作戦行動は、特撮映画…主に怪獣映画と戦争映画…の野外ロケ撮影に見せ掛けることによって都民たちの疑念を逸らし、むしろ逆に都民たちから好意的に受け止められるよう、宣伝活動も展開している。
とはいえ招和三十九年の都民一般の特撮映画製作への認識は、しょせん子供だましの荒唐無稽な娯楽番組……といったイメージにとどまる。四谷プロは一種の変人集団であり、特撮映画の制作も、到底まともな大人が真剣に取り組む仕事として市民権が与えられているとは言い難い。
もっとも、子供たちにとっては、四谷プロが制作し、全虎産業グループが提供している夕方の15分番組『愉快な怪獣ドシラの大冒険』がそこそこの視聴率を得ており、親しまれている。
とはいえ対魔戦闘は危険を伴うため、子供たちを歓迎するわけにはいかないのが本音である。そこで魔法自衛隊の戦闘終了後の現場では、集まってきた子供たちに対して、“ぬり絵つきチラシ”等のドシラグッズを配ってお茶を濁している。
株式会社四谷プロダクションの社屋所在地の住所表記は……
東亰都《《外堀区》》四谷1丁目12番地。
その地下には車両の通行可能な連絡道が接続され、都道を挟んで隣接する“若葉東公園”および“旧赤坂離宮”の前庭の深度二十メートル以下に広がる、魔法自衛隊四谷本部の地下基地にアクセスしている。
魔法自衛隊四谷本部は、国鉄中央本線の地下線路、都営地下鉄丸ノ内線、そして、旧赤坂離宮の前庭を東西に横切る首都高四号線の半地下方式の“赤坂トンネル”に囲まれた、一辺約二百メートルの、ほぼ正三角形の巨大地下空間である。
正三角形の外郎形をした地下空間のこの基地は、通称“三角ベース”。
住所表記は東亰都《《外堀区》》四谷1丁目1番地。
もともと、関東大震災をきっかけに構想された、帝都地下整備計画の極秘プランで建設された帝都防衛地下要塞の籠城施設であり、太平洋戦争の終盤時点では赤坂見附までで建設が止まっていた地下鉄丸の内線を市ヶ谷の陸軍省の地下まで秘密路線で延伸し、その途中にこの“三角ベース”の専用駅を設ける計画であった。
最終的に、本土決戦における地下大本営として、敵が使用するかもしれない戦略魔法攻撃(核爆弾)にも耐えうる施設となるはずであったが、それらの計画は終戦によって幻と消えてしまった。戦後の占領明けに日本国の闇政庁である“統聖庁”が秘密裏に施設を接収、そののち、魔法自衛隊の本部基地として整備されたものである。
地下基地“三角ベース”は、基地の外郭に、国鉄の秘密駅、地下鉄の秘密駅、首都高速につながる秘密出入口を設けており、交通は極めて至便である。
都内一等地の秘密基地……という抜群の立地を十分に生かし、とりわけ地下鉄網を駆使することで、魔動高速トロッコを走らせ、あるいは専用貨物車両メトロカーゴに六〇式自走無反動砲を搭載して急行させるなど、魔物出現に対する緊急対応手段を整えている。
なお、地上施設である四谷プロダクションの社屋は木造モルタル二階建ての貧相な構えであるが、その北側に隣接して、木造ながら上品な白亜の校舎に蔦の絡まるチャペルまで備えたお嬢様学校“四矢女学園” が置かれていて、神女挺心隊《SJT》の魔法少女42名が寄宿制で生活する学び舎となっている。住所表記は四谷プロと同じ四谷1丁目12。
都内周辺の青春男子にとって憧れの乙女たちが集う“禁断の花園”でもあるのだが、その校舎の実体は映画撮影オープンセットのハリボテ同然であり、中身は魔法少女軍団の兵舎と鎮魂弾製造工房だ。厳重な結界に囲まれ、多連装祓魔ロケットパックを背負った自律防衛石像“金次郎”“銀次郎”を門番に擁する対魔地上基地である。
神女挺心隊《SJT》の少女たちは、四矢女学園の女子寮で寄宿生活を送っているが、全生徒が42名では少なすぎるため、朝夕には非番の少女が通学生のふりをして校門を出入りすることで、見掛けの生徒数を水増ししている。夕刻にはそのまま祓魔拍子木を携帯して夜の街のパトロールにも出掛けてゆく。そんな少女たちを待ち構える青春男子たちの純情なラブレター攻勢を無難にいなすことも、彼女たちの偽装任務の一環である。
神女挺心隊《SJT》の少女たちは、表向きには、四谷プロ専属の少女俳優グループとして活動している。現在撮影中とされる映画『怪獣大作戦 東亰ウルトラC』では地球防衛少女隊のひとつである“神女挺心隊《SJT》”として、またTVシリーズ『怪獣ドシラの愉快な大冒険』では正しき科学の力で悪と戦う国際組織:国連平和騎士団に所属する“科学少女隊”…サイエンス・ジュニアガールズ・チーム…として活動している。
ロケ撮影(実体は対魔戦闘)の現場では可憐な戦いぶりと赤裸々な内輪揉め(東風こよみと南風はてるかの慢性的な対立)が衆目を集め、“招和”の元祖特撮アイドル集団として人気を獲得しつつあるのだ。




