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真鍋

僕がお風呂に入る時、この湯船に未来が使ったことを想像してしまい、僕は湯船には入らずシャワーを浴びた。


 部屋に戻ると未来と盟は僕の部屋の中でいて、何か読んでいる。


 それはアルバムだった。


「勝手に見るなよ」


 二人に言うと、未来は、


「いいじゃない。巧も一緒に見ようよ」


 何か僕はもう疲れて来た。


 だからどうして未来はいきなりうちに泊まりに来たのか、聞こうと思ったが、盟が席を外すまで黙っている事にする。


 未来と一緒に嬉しそうにしている盟を強制的に追い出すのはちょっと酷だし。


 僕もとりあえず楽しんでいる二人に合わせるために一緒にアルバムを見る事にした。


 幼い頃の僕と未来、写真の中の未来は悲しみの微塵も感じられないさわやかな笑顔だ。


 一方の僕は改めてみると無邪気でまんまガキの顔だ。

 そこで盟が、


「お兄ちゃん。今とあまり変わっていないね」


『それはどういう意味だ。いくら妹でも終いには泣かすぞ』

 その僕の心を逆なでするように言うのが未来であり、


「本当ね」


 何て笑って、未来に言われるのは我慢できなくて、


「悪かったな。変わっていなくて」


「何怒っているの?」


 僕はちょっと自棄になり、


「どうせ僕はガキのまんまだよ」


「別にそんなこと一言も言っていないじゃん」


「じゃあ、何なの?」

 すると未来は表情を綻ばせ、それを見た僕はちょっとドキッとして。


「巧って何かほおって置けないのよね」

 何て言われて僕は何かほっこりとした気持ちになる。

 ほおって置けない。


 それで盟はアルバムを見る事に飽きてしまったのか、未来を『一緒にゲームしよ』と自分の部屋へと未来を連れて行った。


 一人ぽつんと部屋で未来に言われたことを吟味して、次第に怒りがこみ上げて来た。

 つまりほおって置けないと言う事はまるで僕が未来に守られて、僕の中でネックになっている『未来がいなきゃ何もできない』と言われている事と同じ事だ。

 怒りに苛みそうになったが、その場で腕立てをして、怒りを抑える事が出来た。

 盟の部屋から未来と盟が一緒にゲームをして楽しんでいる声が僕の部屋まで漏れて来た。

 盟には悪いが未来と二人きりで話があるので、とりあえず盟には外してもらおうと、盟の部屋に行くと、


「あっ、お兄ちゃん」


「巧も一緒にゲームしよう」


 未来と楽しんでいる盟を強制的に席を外させるのは酷だったので、僕は渋々ながら二人の間に入って一緒にゲームをすることになった。


 ゲームは父のおさがりでレトロゲームのスーパーファミコンの『ぷよぷよ』だった。


 よく未来と対戦したものだ。


 僕と盟が対戦して僕が圧勝だった。


「お兄ちゃんずるい。強すぎる」


「このゲームは俺の十八番だよ」


 そこで未来が、


「盟ちゃん私が敵を取ってあげる」


 僕の目を見て、負けられないと思い、目と目が合って火花が散ったような感じになる。


 いざ対戦して、惨敗だった。


「未来お姉ちゃんすごい。盟とやっていた時、手加減してくれたんだね。さすがは盟の主将だ」


 いつから盟は未来の主将になったんだ。心で突っ込んだが、僕は未来に負けたことが悔しくて、何度も対戦しては一勝も出来なかった。


「お前ずるいぞ」


「勝負にずるいも何もないよ。相手の弱点を突くのが当たり前」


 そこで盟が、


「お兄ちゃん。汝自身を知れ」


 人差し指を突き上げにっこりと笑顔で意気揚々と語る。


 そのしぐさは未来を意識しているのが感じ取れる。


 未来の真似をするんじゃありません。


 とにかくどうして未来に勝てないんだ。


 次はトランプで神経衰弱をやったが、未来は超能力者か?めくってもいないカードを同じ数をめくり、結果は惨敗。


「お前インチキしているんじゃないだろうな?」


 未来に人差し指でさして指摘した。そこで盟が、


「未来お姉ちゃんはずるなんかしていないよ」


「じゃあ、どうしてめくってもいないカードを知る事が出来るんだ」


 そこで未来が、


「巧、汝自身を知れ」


「訳わからないよ」


「今度は盟が勝負してあげる」


 未来と盟は何を通じ合ったのか、未来が盟にウインクする。

 盟と勝負して未来程ではない程ではないが、盟も超能力を使っているかのように次々とめくられていないカードをめくっていった。


「お前らどんないかさまをした?未来も盟に変な事を吹き込むなよ」


「失礼だな、巧は。私と盟ちゃんはいかさまなんかしていないよ。それに私は盟ちゃんに何も吹き込むというか、教えてはいないよ」


「じゃあ、どうして?」

 すると未来と盟は意思通じ合うように見つめあい、僕に向けて行った。


「汝自身をしれ」


 声をそろえてしかも同じ仕草で僕に訴える未来と盟。


 未来の影響を受ける盟は何か嫌だが、悪い影響ではないから別に良いか。


 とりあえず怒りを抑えるため深呼吸をして、ここで本題に入ろうと盟に席を外させようかと思ったが、盟が、


「盟眠い」


 眼をこすって盟は本当に眠そうだ。


 ちょうどいいと思って、未来は今日どうして泊まりに来たのか、その本当の真意を知る為に盟には寝てもらおうとしたのだが、


「今日、盟は未来お姉ちゃんと寝る」


「はいはい。じゃあ巧そういう事だから、お休みね」

 と言ってベットの上で盟は眠り、未来も盟に寄り添って同じ布団に入った。


 事情を聞くタイミングを逃してしまった。心無しか未来は事情を聞かれることを避けているんじゃないかと思えて来た。

 僕も寝ようと思ったが何か未来がうちにいるせいか眠れない。

 嫌らしい気持ちも多少なりにも僕は男だからそれは仕方がないとして、未来が今日突然うちに泊まりに来たのは何かある。

 突然学年順位を落として、成績が悪くなったことに関しては気にしていないようだが、何か順位を落としてしまった精神的なショックな事があったんじゃないか?


『お前は未来がいなきゃ何も出来ないんだな』


 こんな時に僕の頭に過去の記憶の一部分がよぎり、それに反論するように人知れず呟く。


「未来に守られるんじゃなくて、僕は未来の力になりたい」


 と呟き。僕は何を言っているんだ?まるで僕と未来が親密な関係みたいな言い方じゃないかと自重するがそれも否めない。


 僕はハッと気が付き、今の言葉泊まりに来ている未来に聞かれてないよなと辺りを見渡し、僕の部屋に僕意外、誰もいない。

 ちょっとナーバスになっているんだな。

 気持ちの整理がついて僕も何だか眠くなってきた。

 時計をふと見ると零時を回ったところだ。

 明日から試験休みだからと言って夜更かしして自堕落な生活はしたくない。




「僕は未来がいなきゃ何も出来ない弱い人間じゃない」


 僕は誰に言っているのだろう?

 辺りを見渡すとここは学校だった。

 しかもなぜか僕は真夜中の学校の教室にたたずみ、未来が、


「巧は私がいなきゃ何も出来ないの?」

 

淡々とした口調で未来は言い、僕はいら立ち。


「僕はそんな弱い人間じゃない」


「じゃあ、どんな人間なの?」


「それは・・・」


 言葉に迷う僕。


「それで良いのよ」


「はあ」

 話が見えない僕は訳が分からないと言ったような言葉が漏れた。


「それでいいって何が?」

 そこで未来が言う。


「巧、汝自身を知れ」

 毎度言われているが、僕は頭がパニックに陥り同時に憤りが沸き起こり、


「訳わかんないよ」


 と僕は叫びながら上半身を起こしていた。

 どうやら夢を見ていたみたいだ。


 そこで駆けつけて来たのが盟で、

「お兄ちゃんどうしたの?」

 また心配かけてしまったようだ。だから差し支えないので、


「ゴメン、ちょっと変な夢を見ちゃって」


「大丈夫」


「大丈夫、大丈夫」

 と本当に大丈夫だし、また心配かけたくないし。


 そこで未来が現れ、

「どうしたの、巧」


 未来を見た瞬間に、原因は夢にこいつが現れたからだだと思って、


「何でもないよ」

 と、つい怒鳴ってしまった。


「何を怒っているの?」


「別に怒っていないよ」


 そこで盟が、


「お兄ちゃんと未来お姉ちゃん、まるで夫婦げんかしているみたい」

 何て笑っていた。


「面白い事を言うね、盟ちゃんは」

 何て未来は笑って、僕は怒りを抑えて後で盟には少し僕的に教育が必要かもしれない。それよりも僕は未来を見て、未来はエプロン姿だ。そんな未来に、


「お前何やっているんだ」


「泊まらせてもらって、ご飯もごちそうになっちゃったし、お手伝いさせてもらっているの」


 とりあえず「そう」と言ってやらせておくことにする。


 時計を見ると六時半だ。

 もう少し寝ようと思ったが、もう起きようかな。


 ニュースを見て、僕は未来に聞かなくてはいけない事がある。それは『お前何かあっただろ』って。


 この話は盟や両親にも聞かれないようにした方が良いような気がする。

 なぜそう思うのかは分からないがそんな気がする。

 僕は未来の力になりたい。僕は未来に借りを返したいだけだ。ただそれだけだ。別に未来の事が好きになった訳じゃない。


 とにかく後できっちりと聞かないとな。

 テレビを見ながらそんな事を考えていると盟が部屋に入ってきて、少し寂しそうな顔で、


「お兄ちゃん。未来お姉ちゃんがお兄ちゃんによろしくって言って帰って行ったよ」


「エッ、いつ?」


「十分ぐらい前かな」


 話があるのに何だよと思いつつ、咄嗟に外に出て未来を追いかけようとしたが、ふと立ち止まり別に今度で良いか。

 試験休み中でも部活はあるし。

 未来は何かある。

 その事を聞かれる事を避けているような気がしたが分からない。




 次の日試験休み中、相談部は活動している。

 試験休み中でも未来を頼って相談に来る人はいる。


 木更津先輩もその一人だ。

 木更津先輩の愚痴を未来は聞いている。


 その傍らで木更津先輩の愚痴を聞いていると、木更津先輩は大変だと言う事に気が付く。

 そして木更津先輩は言いたい事を言ってすっきりとした表情をしている。


「水島さん。いつもありがとう」


「別に私はそんなに大したことはしていませんよ」


「水島さん。もしよかったらこれどうかしら?」

 と鞄から取り出したのは一つ紙包みだった箱だった。


「何ですか?それは?」


「昨日私の友達とクッキーを焼いたの。よろしかったらどうかしら?」


「そんなに気を使わなくても良いのに」


「いいえ、これはほんの私からのお礼だと思って召し上がって」そこで僕に目を向け、「巧君も良かったら食べて」


「ありがとうございます」


 木更津先輩は本当に未来に感謝している。

 木更津先輩は未来に「これからも水島さん。よろしくね」と言って部室を後にするのだった。


 未来は座りながら軽く伸びをして、

「一息入れよ。巧」


「うん」


 未来は早速、木更津先輩にもらったクッキーを口にして、「おいしいね」と言って「巧も食べなさいよ」と僕も一つつまんで食べると口の中にバターと砂糖の風味が口の中に広がってとてもおいしいクッキーだった。


 相談者は今は来ないので、丁度いいと思って話を切り出そうと僕は「お茶入れるね」と言うと未来は振り返り、


「巧、今日私の家に泊まりに来なさいよ」


 僕は耳を疑い、


「今なんて言った?」


 すると未来は軽く息をついて、僕の意をくむかのような目をして、


「巧は私に話があるんでしょ」


「あるよ」

 と、いつもなら見透かされて狼狽えて来たが、僕は毅然として未来のその双眸をしっかりと見つめて言う。

 すると未来はその双眸をおもむろに閉じて、


「とにかく話だったら私の家でゆっくりしましょう。それに私も巧に話があるから」


「別に未来の家に泊まらなくたって話ならここでもできるだろ」


 僕がそういうと首を左右に振って否定した。


「どうして」


 僕がそういったタイミングで、部室のドアが開いて、以前恋の相談に来た真鍋さんだった。


「あの」


 真鍋さんの顔を見て僕は悟った。


 以前話していた彼に振られた顔だと。


 未来と僕の話が終わってからにしたいが、悲しみに満ちた表情を見るといたたまれない感じで、この話は後にするしかないと、ここは真鍋さんを優先した。


 僕も相談部で未来の書記を務め、相談に来た人がその表情を見るだけで、何となく考えている事が分かってきた感じだ。


 まあ、ここに来る人はたいてい悩みを抱えにやってくる。


 真鍋さんもその一人だ。


 真鍋さんの話を聞いてどうやら僕の予想通り、振られてしまったみたいだ。


 真鍋さんは彼に対して思いは膨れ上がり、思い切って告白したが、玉砕した。


 どうやら真鍋さんは未来の忠告も忘れてしまった。


 それは一歩ずつ距離を縮める事。


 未来はいきなり思いを伝えたら、相手はびっくりしてどうしようか困惑してしまうって言う。


 泣きじゃくる真鍋さん。


 何度か真鍋さんのような失恋して、未来に相談に持ち掛けてくる人を見て来たが、失恋は仕方がない。


 でも考えてみれば、失恋は期待が自分の膨れ上がった気持ちがうまくいかなかったから、その時の反動はとてつもないショックを受けるだろう。


 そして未来は言う。


 失恋した事で大きく自分を変えるチャンスだと。


 その苦しみが真鍋さんの人生を大きく変わるって。


 今は辛いけど、それでも明日はある。


 だからそれでも前を向いて歩こう。


 未来は泣きじゃくる真鍋さんをそっと抱いて、真鍋さんは無邪気な子供のように未来の胸で思い切り泣いた。


 そして真鍋さんは思い切り泣いたことで気持ちが落ち着いてきて、先ほどまで涙に打ちひしがれていた気持ちから、泣き顔スマイルで相談部を後にした。


 そんな真鍋さんを見ていると、何か応援したくなり、口では出さないが心で『がんばれ』と呟いた。


 それから未来と話を打ち出そうとしたが、相談に来る人は後を絶たず、未来はてんてこ舞い。


 だから僕は観念して未来の家に泊まる事にして事情を聞くことにした。

 未来も話があると言っていたし。

 以前未来が泊まりに来たことで僕は緊張したが、今度は僕が未来の家に泊まる事になり、気持ちがあたふたとしている。


 その事で嫌らしい気持ちにもなったりもするが、とにかく未来から事情を聞くには未来の家に泊まりじっくりと話を聞かないと。


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