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相沢巧

 相談部は毎日活動している。未来は気が知れないが人の相談に乗って、その一歩踏み出せる勇気を持たせる事を生きる喜びとして感じている。

 そんな中先日の一件で相談部に足を踏み入れるようになった木更津先輩が来た。

 木更津先輩が来ると周りの人たちは「木更津先輩どうぞ」とか言って木更津先輩に譲り「ごめんなさい。ちょっと水島さんにお話が合って」と木更津先輩は恐縮して、未来の相談に来た人たちとの折り合いもついている。

 そして未来とその秘書的な存在の僕と部屋の中には僕たちしかいない事を木更津先輩は確認すると木更津先輩は、

「聞いてよ。水島さん・・・」

 未来に対して愚痴を吐き捨てる。

 傍らで聞いている僕は辛くなってくるが、未来は穏やかな表情で心にゆとりを持った感じで聞き入っている。

 木更津先輩はまるで酒の席で会社の同僚、もしくは親友に普段鬱積した気持ちを未来に吐き捨てるような感じで言う。

 ふと思うが未来は本当にこんな事を受け入れて辛くないのだろうか。

 未来は木更津先輩のゴミ箱になると言ったが、未来はその受け取ったゴミをどこで処理しているのか気になったが、それは僕が気にする事じゃなく、終わったら僕は僕で日々勉強していればいいのだと言い聞かせ、部活が終わったらいつものように勉強しなきゃいけないと思っている。

 本当は相談部何かやめて、その時間も勉強に費やしたいが、何だろう?何か未来には負けたくないのでやめられない。

 いつからか分からないけど、そんな未来をライバル視する僕が心の中に存在している。


 そして木更津先輩はすっきりした顔をして、相談部を後にしたのだった。

 その後も相談部は活動が続く。

 今、未来は恋の相談に乗っていて、未来はその思いを打ち明けたい人に少しずつできるところからアピールして始める事を勧めている。


「どうしよう。彼の事を思うだけで胸が張り裂けそうで、この思いを伝えたいのですが、伝えよう伝えようと思ってもどうすれば良いのか、夜も眠れない」


「真鍋さんって言ったよね」


 真鍋さんは今時珍しいいかにも純情そうな雰囲気の一年生の後輩だ。


「はい」


「真鍋さん。彼に思いを伝えたいなら、一歩一歩距離を縮めていくのよ」


「距離を縮めるって、どうやって?」


「挨拶して声をかけるとか、タイミングを見計らって彼の良いところを言ってあげて距離を縮めていくのよ」


 すると真鍋さんは顔を真っ赤に染めてその手で顔を覆って、


「出来ませんよ。そんな事。彼の姿が頭の中に思い浮かんでだけで、私の心臓は破裂しそうな程高鳴っちゃう」


「なるほど」


 未来は視線を上に向け人差し指を唇に添えて、どうしたものかと考える仕草をして、


「でも彼と両想いになりたいんだよね」


 未来の言葉を聞いて真鍋さんは「キャー」と叫んでしまった。


 どうやら両想いと聞いて、興奮した状態に陥ったみたいだ。


 今まで相談部に恋の相談に来た人は数知れないがここまで一途に純情に思う子は初めてで、何か僕に出来ない事はないか考えてしまう。


 それで未来は言うんだ。


「だったら真鍋さんはまず勇気を持つところから始めるんだね」


「勇気?」


「そう勇気。これは生きていく中で必要不可欠なものと言っても過言ではないわ」


「私にはそんなもの」


 と真鍋さんは諦めモードになってしまい、終いには半べそ状態だ。

 すると未来は立ち上がり、真鍋さんの所まで歩み寄り、


「真鍋さんは彼にどうしたいんだっけ?」


「思いを伝えて・・・キャー」

 本当に彼の事が好きなんだな。と真鍋さん正直ほおって置けないし、何か庇護したくなるような気もする。だから彼がどんな相手なのか分からないが、真鍋さんのその純情な気持ちをアピールすれば、その彼も真鍋さんの事を好きになるんじゃないかと思う。


 でも気持ちだけでは思いは伝わらないか。それは未来の言う通り、勇気が必要か。


 未来が真鍋さんに伝える事は勇気を持つところから始めるで、話はそこまでだ。


 後は彼女自身の問題であり、未来曰く彼女が踏みしめるための第一歩だ。


 真鍋さんが小さな勇気を持つところから始める事は、客観的から見ればほんの些細な事かもしれないが、真鍋さんにとって大きなハードルであって、未来はいつも言うように、一歩踏み出す時は全身全霊全力で取り組むようと伝える。


 そういえば未来は恋の相談に乗って来たが人は数しれないが、思いを伝え成就した人や、失恋した人ももちろんいる。

 前者には未来にお礼を言いに来て喜びを隠せずはしゃぎに来る人もいた。後者に至っては泣きながら未来に「思いを伝えたけど実らなかった」と落ち込む。

 思いが実らなかったと言う人に至っては未来は口癖のように『思いが実らなかったのは仕方がない事なのよ』と。それと『失恋は人生で最大の逆境よ。それを乗り切れば、最高に輝ける自分へと成長する。だから今は辛いけど、頑張って乗り切って次のステップに行こう』と促す。

 僕は失恋をしたことがないが、好きな人と言うと、思わず未来の方を向いてしまった。

 いやあり得ないだろう。

 

 部活が終わり、未来は大きく伸びをする。

「んー終わった」

 そろそろ期末試験だ。早く帰って勉強しなきゃと思っていると未来が、

「巧、寄り道して行こう」

「そろそろ期末だから、僕は帰って勉強しなきゃ」

「分かった。じゃあ私が勉強の真髄を教えてあげるから付き合って」

 未来はろくに勉強していないのに学年一位という普段勉強している人から見れば、忌々しい存在だ。その勉強法とはぜひとも知りたいと思って付き合う事にした。

 放課後、辺り一面が黄昏に染まり、何か心地の良い感じがしたが、僕はそれよりも学年一位をキープしている未来のその勉強法を聞きたかった。

 そこで僕は気が付く、また未来はその勉強法に対して「巧、汝自身を知れ」と意気揚々と言うんじゃないかと。

 もしかして僕は未来の策略にまんまとはめられた?

 そう気が付いて未来の後ろ姿を見つめ、その足を進める。

 ふと思い、期末が終わったら夏休みだ。

 とにかく夏は未来にかまっていないで勉強に専念しないといけない。そうしないと将来社会では生きていけないだろう。ろくに勉強しないで毎日部活にかまけているのに学年一位をキープできる未来とは頭の出来が違うのだろう。だから僕はもっと未来より二倍三倍努力しなきゃ未来には及ばないのだ。

 公園に差し掛かり、自動販売機の前で未来は立ち止まり、財布からお金を取り出してジュースを二つ買って僕の前にその二つを差し出した。

「巧はどっちが飲みたい?」

 冷たいサイダーとオレンジジュース。

 未来が僕におごるなんて、僕は自然と勘繰り深くなってしまう。

「勘ぐっているようだけど、別に何もないよ。これは私からのほんの気持ちだから」

 見透かされたことに癪に障ったがその気持ちは純粋に嬉しかったのでサイダーを手に取り、プルタブを開けるとプシューと中の炭酸が勢いよく噴き出した。

 未来は僕が炭酸を選ぶのを知っていて、わざとやったみたいだ。その証拠にケラケラと笑う未来。怒る僕。

 とりあえず落ち着いて炭酸は噴き出してしまったが、飲めなくはなく、黄昏の空を何となく二人で眺めた。

 何かこうしてぼんやりしていると、何か心が洗練されていくような感じになる。

 ふと考え、勉強だけが人生なのか?大切な事はもっと他にもあるんじゃないかと、ふつふつと思い浮かび、ちらりと隣にいる未来の方を見て、未来に負けてはいけないと思い、とにかく帰ったら勉強しなくてはいけないと僕は自分に言い聞かせた。

 何て思っていると未来が、

「巧、勉強のやり方だけどね」

 その問いに、

「また汝自身を知れ」

 とか言うんでしょ。

「まあ。それもそうだけど、ただこうしているだけでも何か見えてくることがあるのよ」

 何て言っていたが妄言だと思って聞き流した。


 家に帰って玄関まで、妹の盟が走ってきて、

「お兄ちゃんおかえり」

 何か盟は嬉しそうだ。

「ただいま」

「お兄ちゃん。昨日盟と一緒にゲームする約束したでしょ」

 そういわれて昨日の事を振り返り、確かにそんな約束をした。でも僕は、

「お兄ちゃん勉強しなきゃいけないんだ。期末も近いから」

「じゃあ、約束は」

 悲しい顔をして、少し戸惑ったが、僕は未来に負けていられないと言う気持ちが芽生えてここは心を鬼にして、

「悪いな、また今度な」

「何よもう」

 大声で叫び散らして、ふてくされて部屋に戻って行ってしまった。

 少し心が痛むが、仕方がない事だと自分に言い聞かせる。

 

 早速部屋で未来にだけは負けたくない。という気持ちで勉強し熱が入る。勉強している時、未来が言う「汝自身を知れ」と頭の中に思い浮かんで悔しさを感じて、その悔しさを糧に勉強の熱にする。

 なんだろうすごい勉強が捗る。



 

 

 次の日学校で部室に入ると未来は僕の顔を見ると、未来は穏やかないつもの笑顔だ。そしてそっと僕に抱き着いた。

 突然の事で驚く僕に未来は、すぐに離れて、


「ゴメンね、巧」


「どうしたの?」


 と、僕が心配になると、人差し指を口元に添え、


「巧、汝自身を知れ」


 何ていつものように言われ、僕はムカついて怒るのも嫌になるので黙っていた。


 放課後部室に行くと、未来は居眠りをしていた。

 起こそうとしたが今朝未来に抱き着かれたことが脳裏に浮かび、もしかしたら未来は少し疲れているんじゃないかと思ってそっとして置いた。


 今のところ相談に来る人はいない。


 未来が眠っているなら好都合だと思って、期末に向けて勉強を始めようとした所。


 なぜか未来の寝顔を見つめてしまう。


 未来の寝顔を見つめていると胸がどきどきと高鳴る。


 いつも小言のうるさい未来だけど、こうしてみると案外かわいい。


 そんな未来を見つめていると、いつしか盟が生まれた時の事を思い出してしまう。


 盟が生まれた時、そこには未来も立ち会っていた。


 盟がこの世に生まれた時の事を考えて、僕も嬉しかったし未来も自分の事のように嬉しそうだった。


 何て未来を見つめながら、そんな思い出に浸っていると、


「何、人の事をじろじろ見ているの?」


 不意の事で驚愕して戸惑い、


「いや、その、あの」


 僕の気持ちはひどく動揺して、そんな時、相談の人が見たいで、部室のドアが開く音がした。


「ほら未来、相談の人が来たよ」


 と何とかごまかす事が出来て僕はホッとする。


 それで、その相談に来た人はあろう事か、生徒の鏡となる立場の教師であり、斎藤正和先生だ。


 未来は斎藤先生を見て、何を感じたのか?スイッチが入ったような感じになり、それで僕はこの先生に対して一筋縄ではいかないと感じた。


「こんにちは」


 と斎藤先生は挨拶をする。


「こんにちは、斎藤先生ですよね。相談部に何かご用ですか?」


「いや、もし教師の私がこのような事を言うのもおこがましいが、私も相談に乗ってもらいたいことがあるのでね」


 未来はニコリと穏やかに笑って。


「いいですよ。要件は何ですか?」


 斎藤先生はその相談の内容は誰にも話せない事だと言って、話してくれた。


 内容はある斎藤先生とある女子生徒と恋に落ち肉体関係にまで発展してしまって、彼女はあろう事か、創造妊娠で、今、精神科の病院に入院していると言う。


 その事を話して斎藤先生はただそれが話したかっただけみたいで、相談部を後にした。


 その時思ったが、斎藤先生は誰にも打ち明けられない事を誰かに語りたかっただけなんだと、その気持ちは何となくわかった気がした。


 まあただ話したかっただけなら、僕はそれはそれでほっとする。


 僕は正直斎藤先生が相談しに来た時、また未来に面倒な事に巻き込まれるんじゃないかとハラハラしたからね。


 だが未来は、僕がそう思って安堵していた矢先に立ち上がり、


「巧、一歩踏み出しに行くよ」


 僕は耳を疑い、


「それって?」


「決まっているじゃない。想像妊娠をしてしまった斎藤先生のその女子生徒が入院している病院に行くに決まっているじゃない」


「はあ? 僕は・・・」そんな事をしている暇はないと言いたかったが、未来は僕の手を取り、


「さあ行くよ。巧」。


 どうやらまた痛いところに未来はスイッチが入ってしまったようだ。


 期末試験前だと言うのにとんでもない事に未来に振り回されてしまっている。


 夜九時を回ったところ、未来と僕は斎藤先生と親密な関係になり、創造妊娠で入院している病院に行く事になった。


 僕はもう未来に振り回されて心が疲弊してしまいそうだ。


 斎藤先生が言っていた生徒の名前は泉瞳。


 あの斎藤先生が部屋から立ち去った後、僕と未来はその泉瞳の事を調べたのだ。


 それで彼女は僕達が夜中に侵入しようとしている病院の前まで足を運んだ。


 その精神科の病室は閉鎖病棟で面会をするには、その親族の人しかできなくて何の無関係な僕達は彼女に会う事、その精神科の病室に入る事すら出来ないみたいだ。


 病院の前で僕と未来はどう忍び込もうかと、考えているみたいだ。


「諦めようよ」


 僕はうんざりして言う。


「今の時間は病院の中にすら入れない状況か」


 辺りを見渡してんで僕の話を聞こうとしない。


 嘆息がこぼれ落ちる。


 どうして僕は未来にこのように振り回されなきゃいけないのか?


 だったらいっそその縁を断ち切ってしまえば良いんだと考えたが、僕はなぜかそれを拒む僕がいた。


 それは未来には負けたくない。


 色々と考えていると、


「巧」


 病院の大きな建物を見上げて、


「瞳さんの病室は六階よ。今明かりがついているわ。何とか病室に入れないかしら」


 今日二度目の嘆息がこぼれ僕は、


「諦めよう」


 そんな僕の意見も無視して、


「行けるわ」


 と未来の目を見ると、目から鱗が落ちるように何かを悟ったみたいだ。


 僕と未来は未来の作戦で、神経科の研修医を装って、中に入る事が出来た。


 そんなうまくいくのかと半信半疑だったが難なくうまくいってしまった。


 神経科の閉鎖病棟は厳重にされているが、案外そんな理由で入れてしまうものだと未来は見抜いたみたいだ。


 夜の病院ってすごく不気味だ。


 神経科の病棟は精神を患った叫び声や奇声の声が響いた。


 聞いている僕もどうにかなりそうだが、とにかく泉瞳さんに会って未来は何とかしたいのだろう。


 僕は要件を済ませて早く帰りたかった。


 六の十二の部屋の前で止まり、


「ここね」


 未来は立ち止まり、スライド式のドアノブに手をかけ、開けようとするが開かない。


 諦めようと言ったが、ここまで来てこれはさすがにもどかしいと思って今日三度目の嘆息が漏れそうな時、未来は僕に振り向いて意気揚々に笑って、


「心配はいらないよ」


 いつの間にか持ち出したのかカギを見せつける。


 ドアはすんなりと空いて、中に入る。


 そこには小さな白い蛍光灯に照らされている女の子がベットの上で横たわり、僕達に気が付いて、


「誰」


 彼女は怯えている。


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