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 理科僕は君の気持ちを知らないで、僕は君を傷つけてしまった。

 小学校四年の時、ある日僕たち三人はいつものように遊んでいたんだね。

 君が僕に初めて言ったんだよね。

 僕がコンプレックスとして抱いている事を。

 それは。


『巧は未来がいなきゃ何も出来ないの?』


 と。

 そして僕は感情的になり、


「うるさい」


 と。

 その頬を握り拳で思い切り殴ってしまった。

 そのショックで理科はパニック状態になり、道路に飛び出して・・・。

 僕は自分が許せなかったんだ。

 大切な友達を一時の感情的な気持ちで理科を傷つけてしまったことを。

 そして未来の涙を初めて見た。

 その真実を受け入れた時、未来は言った。

「巧、どんな事があっても自分を攻めちゃダメ。そして決して一人になってはダメ。

 いつも言っているでしょ


 汝自身を知れ。


 って」

 今僕は未来の優しさに包まれている。

 暖かい。

 そうだ。

 どんな事があっても一人で悩んだり自分を攻めてはいけなかった。

 未来が入れば本当に怖いものなんてないのかもしれない。いやない。僕はそう断言したい。

 気持ちが落ち着いた時、僕と未来は屋上に行った。

 こうして空を見上げていると、僕の悩みなんかが小さいことだと改めて思うことだった。

 それは海を眺めているときも同じだった。

「落ち着いた」

 未来が僕にそういって僕は頷いた。

 そして未来はまじめな顔をして、

「巧、理科は生きているわ」

 その事実を聞いた時、驚愕と安心の気持ちが同時にわき起こった。

「じゃあ、理科が斉藤を利用して」

「まだ分からないわ」

 とにかく僕は理科に一言謝って置かないと思っている。

 もし理科と会うときが来たら僕はどんな顔をして良いのか分からないが、僕はもう逃げない。

 この件に関しては理科が斉藤を利用しているのか分からないが、何か理科を感じる。

 これは僕一人の思いこみじゃないから、勘違いではないだろう。

 その証拠にこの思いを信頼している未来と共有している。

 理科がどのように関係しているのか分からないが、僕と未来はいつもの相談部に行く。

 正直僕の心は疲弊しきっているが、相談部に来て悩みや悲しみを打ち明けに来る人の事を思って、未来に「少し休んだ方が良いんじゃない?」と言われたが、僕は笑顔で大丈夫と言って、未来は「そう」とにっこりと笑ってくれた。

 それが僕の心を突き動かすエネルギーだ。


 学校内は相変わらず、何かしらの違和感がある。

 そんな中いつものように相談部に赴き、違和感とは別に何か、きな臭さを感じる。

 いつものように相談に来る人はいる。

 これはいつもの事で別に気にすることではない。

 だが僕は何かに見られているような気がする。

 何か変な言い方かもしれないが、邪悪な視線だ。

 その方向は丁度向かい側の校舎の所からだ。

 その方向に目を向けたいが、僕はその視線を向けることさえ恐れてしまっている。

 その邪悪な視線に心が凍ってしまっている。

 今は相談に来る人の内容を僕は書記としてまとめなければいけない。

 でも僕は未来に相談に持ちかけて話している最中、不謹慎だが、

「未来」

 と話している最中にとっさの判断で、未来の名を呼んで、こちらに注目させた。

 相談に来た人は、何事と言うような顔している。

 でも今は一刻を争うときだ。

 僕は未来の元へと行き、

「巧」

 きょとんとする未来。

 どうやらこの邪悪な視線に気がついていないのか?

 だから僕は未来の手を掴み、勇気をもらって、その邪悪な視線を感じる方へと目を向けた。

 気のせいではなかった。

 向かい側の校舎から、僕の視線に気がついた斉藤の姿を僕は見た。

 僕の視線に気がつくと斉藤は姿を消しどこかへと行ってしまった。

 しばし僕はその方向に目を向ける。すると、

「巧」

 と声がして僕は我に返り、未来の目を見つめると、『相談中に不謹慎だよ』と言いたげな視線を僕に訴える。僕はとりあえず「ごめん」と謝っておいた。

 僕はちょっと神経質になっているんじゃないかと反省する。

 不穏な気配は感じる。

 でもいつもの日常だった。

 放課後、僕は未来に「さっきはごめん」と謝っておいた。

「巧も感じたのね。斉藤先生の視線を」

「未来も気づいていたの?」

「私を誰だと思っているの?」

 未来は自分の勘の良さを自負している。

 まあ、でも僕は不思議と以前のような恐怖心にかられる事はなかった。

 僕自身色々な困難を乗り切って、強くなったのかもしれない。

 学校を出て僕はまた誰かに見られている気配を感じて未来を見る。

 でも未来は、

「どうしたの巧?」

 どうやら気がついていないみたいだ。だから僕は、

「また感じないか?」

 だが未来は感づいているようで、

「巧、今はほおっておくしかないわ」

「ほおっておくって・・・」

「ここまで学校中に斉藤先生の目論見が張り巡らされている。だから今は動かない方が良い」

「そうしたら、また誰かが傷つくかもしれないのに良いのか」

「確かにそうかもしれないけど、仕方がないことだわ」

 半分諦めている感じで何か未来らしくない感じがする。

 でも僕は未来を信じるしかない。


 帰宅して、斉藤に対する恐怖心は消えたものの何かやっぱり未来は何かを隠しているんじゃないかと思えて、そわそわして夢である小説を進めたいところだが、その気にはなれず、部屋で一人で対戦ゲームで遊んでいた。

 未来はどうしてしまったんだ。

 そういえば、理科は生きていると聞いて安心もしたし驚いたりもしたんだ。

 理科の事を考えると自分を追いつめておかしくなってしまいそうなので、妹の盟を呼んで対戦ゲームを一緒にやろうかと誘おうと思ったが、猫のミィミィと夢中に遊んでいるのでやめておいた。

 でも理科の事を考えてしまったが、今日未来に勇気づけられたことによって、変な風に考える事はなかった。

 理科の事。

 昼間激しい葛藤の中、僕は未来に勇気をもらい、思い出すことができ、そして向き合えた。

 未来は言っていた。もしかしたらこの件に理科が関わっていると。

 でもそれは今の僕にも、きっと未来も分からない。

 斉藤に洗脳された木更津先輩。学校に蔓延る不穏な気配。

 それに未来も感じているが、その影には理科の気配を感じている。

 もし理科が関係しているなら、少し怖いが、ちゃんとこの件に向き合っていくしかないだろう。

 僕達が僕達であり続けるために。


 朝起きると、意外な事に盟が僕の布団に潜り込んでいた。

 盟はミィミィと丸くなり眠っている。

 改めて思うことだが、盟は密かに心配しているんだ。

 盟は幼いながらも未来と似て、鋭いところがあるから、気づかない振りをしてどこかで僕のことを心配したのだろう。

 昨日、盟はミィミィと一緒に遊ぶのに夢中だったからと言って、悩みに悩んでいる僕に気づいていないわけじゃなかった。

 そう思うと何か心がほっこりして、何か安心してしまう。

 理科の事に向き合い強くなれたのも未来のおかげだ。

 人は一人では生きていけないが、何か僕はもらってばっかりな気がする。

 そのお返しを僕はしたいと思うけど、お金や物で返すのではなく、どうすれば良いのか?

 まあそれはおいといて、僕は学校に蔓延る斉藤の何かしらの魔の手に立ち向かえる勇気が芽生え始めた。

 自分の気持ちを確かめてみると、それは虚勢ではなさそうだ。

 ただ僕は本当に優しくしてくれた人達を信じればいいのだと。ただそれだけだ。


 いつものように学校に未来と登校して、不穏な違和感があるが、それに耐える心が持ててきた。

 いったい何が起こっているのか?

 手がかりもない。

 ただ嫌な気配は感じる。

 この不穏な空気に僕は身をさらす。

 そして心の目をこらして僕は見るしかない。

 たった一つの未来との絆を頼りに、僕達は立ち向かうしかない。

 授業中も僕は油断はしていない。

 心の目を研ぎ澄まして授業に参加している。

 お昼休みになった頃、すこし疲弊した心をいやすと同時にこの件に関して未来と話し合う。

 未来も同じだ。

 心の目を研ぎ澄まし、手がかりのないこの学校に蔓延る何かに立ち向かおうとして入るみたいだ。

 未来は言う。

 この不穏な気配は斉藤だが、その奥にやはり理科の何かがあると感じている。

 理科と聞いて、やはり心にちくりと刺さる何かを感じたが、僕はそれを乗り越えて、この件に関して向き合うと心に誓う。

 未来は斉藤は自滅すると言ったが、それは僕も心の目を見て感じた。

 斉藤が僕達に憎しみをぶつけている。

 そのような人間に陥る所は、まさにこの世の奈落の底と言ったところか?

 憎しみに生きる人間は因果応報で憎しみによって消される。

 僕も未来と同じように、そんな斉藤に一言言ってやりたい。

 ただ一言。

 どんな言葉なのか言葉に迷うが、その心に届くなら何でも良いと思う。

 ただ斉藤の行っている行為は間違っていると、それは死に至る心の病気だと。

 それは言葉では伝わらないのかもしれない。

 とにかく真相は何なのか分からないが、ただ僕と未来はこの件に関して自分たち自身を信じて立ち向かうしかない。

 でも迂闊には手は出せない。

 でもこうして手をこまねいているばかりでは始まらないと未来と僕は話し合った。

 互いに心の目を研ぎ澄まして立ち向かうしかない。

 この件に関する隠れた何か?理科なのか?どうなのか?とにかく立ち向かうしかない。

 手がかりがないが、とにかく考え行動する。


 相談部でいつものように相談の人は来る。

 そんな中、昨日と同じように斉藤の視線を感じたが、あまり気にすることではなかった。

 それで僕は本当の恐ろしい敵は斉藤ではない気がした。

 理科なのか?

 それは分からない。

 斉藤の視線をさっきから感じる。

 僕たちを威圧して、精神的に追いつめるようにも感じる。

 このまま黙っているしかないのか?

 だから僕は、相談の人が出て行った時、その視線の方向に目を向け、僕も威圧的な視線を向けた。

 向かい側の校舎に斉藤は威圧的な視線で、僕達を見ていた。

 だから僕も、やられてばかりではいけないと思ってにらみ返した。

 するとそんな僕に気がついたのか未来が、

「巧」

 と僕に声をかける。

「ゴメン」

 と、ちょっと感情的になり、未来にあれほど慎重に行くようにと念を押されたのに、身勝手がすぎたと、僕は反省する。

 だが未来は僕と同じように斉藤に威圧的な視線を送る。

「未来」

 と僕が言うと、

「これも彼に対する優しさなのかもしれないね」

 と。

 未来も僕を見て同じように威圧的な視線を送った。

 すると斉藤は恐れるように、その視線を逸らしてどこかに行ってしまった。

 すると何だろう。この反動で斉藤が何か仕掛けてくるんじゃないかと思えて、不安になり、未来に、

「あいつ何かして来そうな気がする」

「確かにそうかもしれない。でも大丈夫。独りよがりの憎しみほど、この世に弱いものはないわ」

 確かに言えている。

 でも斉藤は何かしてくる。


 部屋に一人で行ると、誰かが嘆いているような声が聞こえてきた。

 僕はどうかしてしまったんじゃないかと思ったが、どうだろう?

 あまり一人で思いこむとろくな事を考えないから、妙な事を考えてしまったのかもしれない。

 こんな時こそ、妹の盟とのコミュニケーションをとって、その妙な考えを取り払おうと僕は考え盟の部屋をノックした。

「盟入るよ」

 部屋に入ると盟はミィミィを抱きながらテレビを見ていた。

「盟、何を見ているの?」

「猫の王国」

 初めて聞く名前の番組だ、名前からして、猫のことに関することは分かる。

 僕も盟の横に座り、一緒になってみる。

 愛らしい猫達がかわいらしく映し出されている。

 何となく盟の方を見ると、テレビに夢中だった。

 会話がないので「面白い?」と聞くと。

 コクリと頷いて何も言わなかった。

 凄く猫が大好きなんだな。

 それはミィミィを抱いている所を見て一目瞭然だ。

 その気持ちは分かる。

 猫はかわいい。

 そういえば、こんなかわいい猫達を・・・。

 やめよう。

 何て考えていると、

「お兄ちゃんどうしたの?」

 と聞かれて、もしかしたら僕が悲しいことを考えて、それが態度に出て、聡い盟はそんな僕に気がついたんじゃないかと思って、

「何でもないよ」

 すると盟は僕の目をのぞき込むように、見つめてきた。だから僕は観念して、

「ちょっと考え事をしちゃっただけだよ」

 と言っておいた。

 盟は安心したように笑って、

「お兄ちゃん。最近素直になったね」

 何か妹に言われるとしゃくに障ったが、とりあえず黙って、テレビを見ることにした。

 素直になったか。

 確かに言われてみればそうだな。

 未来とつき合ってから僕は素直になった気がする。

 以前までは自分の考えを意固地に貫く事をして壊れそうになったことがあったからな。

 でも素直になって気持ちがとても楽になったのは確かだ。

 それまでは我慢して、その我慢が周りから見えて未来や盟に気を使わせていたことに気がつく。

 そう思うと盟や未来に悪いことをしたなと反省する。

 となりにいる盟にその事に謝ろうとしたが、これは言葉で謝る事じゃないような気がしてやめておいた。

 ただこうして盟と共に時間を過ごすだけでも、何か気持ちが安定してくる。


 安定しているのか?でも僕は何か誰かが嘆いている声が心に響く。

 僕はおかしくなったのか?

 でも僕はいたって冷静だと思う。

 気のせいではない気がする。

 あまりにも気になるなら、未来に相談した方が良いかもしれない。


 次の日、やはり昨日から気になって未来に昨日から気になる事を僕は相談する。

 未来と会い未来に相談する。すると未来は、

「やっぱり気のせいではないかもしれないね。私も感じたよ」

「じゃあ理科が・・・」続けようとしたところ未来が、

「巧、落ち着いて、まだそうと決まった訳じゃないわ」

 そう言われて僕はせっかちな自分に反省する。

「とにかく迂闊に手を出すのは危険だわ。手がかりも何もないし」

「じゃあ、どうすれば」

 そこで未来と目があって、未来は僕に目で訴える。


『感じるのよ』


 と。

 それは昨日と同じ事だが、僕は答えを早く出そうとせっかちになっている。

 とにかく落ち着かなくてはいけない。

 その為に未来がいて僕がいる。

 この手がかりのない、不穏な気配に迂闊には手は出せない。

 授業中も、僕は昨日と同じように心の目を研ぎ澄ませるように、この不安な気配の正体を探っている。

 昨日から感じる。誰かの嘆きには気がついた。

 それは気のせいではなかった。未来も感じていたからだ。

 僕一人ではこの正体に立ち向かうのは無理だし、そんな事をしたら、自分を見失い見えない何かに押しつぶされていただろう。

 未来と心を一つにして、この件に関して見つめていくしかない。

 でないと誰かが悲鳴をあげる。

 凄い憎しみだ。

 理科なのか?

 でもそう確信した訳じゃない。

 でも心当たりはある。

 以前閉ざされた過去をのぞき込んだ時に見えた。

 授業には集中できなかったが、僕は集中する振りをして、手がかりのない、この件に関して見つめていた。

 三時間目が終わって、心を保ちつつも僕は精神を研ぎ澄まし、見つめていた。

 すると突然僕のクラスに未来が慌てて来た。

「巧」

「未来」

 いったい何事だと思って未来を見つめると、未来は僕に手招きをして来てと促す。

 僕が未来の元へと行く。

 クラスメイトは何事だと言うような表情をしていたが、とにかく僕は行く。

 誰もいない廊下に出て未来は。

「巧、一歩踏み出しに行くよ」

 そこで僕は思ったんだ。

 未来はこの件に関して、ひらめき気がついたのだと。

 何か僕は恐ろしいことなのに、不思議とワクワクしてしまい、

「うん」

 と強く頷いた。

 授業をほったらかして僕と未来は廊下を走り、先生にすれ違い、

「お前等、どこに行くんだ。授業が始めるだろ」

 と注意を受けたが、未来が、

「ごめんなさい。今日は早退させていただきます」

 と言って先生は僕達に、

「お前等ふざけんなよ」

 と怒鳴られたが、未来は、

「ごめんなさい」

 と言った。


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