(ⅩⅩⅩⅠ)紡がれる記録そして続いていく記録
世界を混沌に陥れる使徒の存在は人知れず所で僕達が決死の思いで挑んだ事により消滅。
そしてカイエル大陸にあるジェネシス・アヴァロン・シャウト・ユニバースなどの王国の破壊活動を実行する操られた一部の召還獣とクロノス聖団の団員達を含めた意識すら無くなった幹部は支部の人達の力で撃退を収める。
事態が収集を見せた頃にもはや王国として機能を失った各王国は崩壊。
もう国としては破綻したそれぞれの王国は再興も虚しく散る。けど、ジェネシス王国の王だけは随分と自分の地位に固執していたらしいけど逃げ足を巻いた王はもはや信頼に値しないと怒りが収まらないぎりぎりの状況で生き延びた市民達により失脚される。
それからしばらくしてロイド・アーデンという革命派の人物が世界全てに自らが謳い上げる政策と大いなる理念を伝え富豪家だった影響と有力なる人物に協力を仰いで自身の全ての財産をと他人が出した財産によって誕生させたアグニカ帝国と各王国の大陸に築かれていたクロノス聖団員の支部を吸収した軍を築き上げるとすぐに有無を言わさない実行力と類いまれなる判断を見せつける事で市民から歓迎される結果に至った。
今やアグニカ帝国は更なる文明の発展の為に生活をより豊かにする政策を惜しみ無く実行する信頼に厚き国となっている。
その分、よく思っていない王国の生き残りが反抗作戦と謳ってしばしば帝国に戦いを繰り広げる日々もあるけれど僕が居る場所では人の声や争いの音は聞こえない。
その代わりに聞こえるのは花が風によって揺れる耳に心地良い音と周辺に溢れんばかりに咲いている色お花が綺麗に並んでいる。今の僕はスノウとクレインの真ん中に寝転がって青い空を見上げている。クレインには戦いの終わりに君は剣として一生使わないとキツく言ったら、納得した表情で了承してくれた。断るかなと一応の覚悟を決めていたけど。とにかく自分は二度と戦場に立つつもるは決して無い。それだけは確か。
そして僕に力を貸してくれた仲間達はそれぞれ自由に気ままに別の道を歩んでいる。
ベルは自分をありとあらゆる視点から修行したい為に武器屋さんを開いてまだ見ぬ強き剣を作成しているらしい。ザインはすぐさま依頼屋に戻って急ピッチで依頼を片付けているみたいだ。
「今日もポカポカして良い日だね」
スノウは野原を枕にしている状態でポツリと呟く。自分の王国が失ったと同時にスノウはマリア姫と共にただの一般人になってしまった訳だけど……本人達は至って自由気ままに過ごしている。
マリア姫は亡くなった時には自分が無能だったという責任から大きなショックを受けていたみたいだけど、その部分はスノウが慰めた事で少なからずは吹っ切れているようだ。
今やマリア姫をよく知る人物から姫と呼ばれなくなったマリア・ローゼンはアグニカ帝国の南部でのんびりと過ごしているらしい。
「あと何分で来るのですか?」
母さんと父が結ばれ後に僕とミナト兄さんが激突しあったバラーズヤードに訪れたのはようやく調子を取り戻したと言われている母にスノウを会わせる為。確か約束した時間は10時40分辺りだった筈だけど……念のために時間を見ておこう。クレインに言われたから。
「今何分くらいかな?」
上半身を起こしてポケットからタブレットを取り出して画面の時計を見てみるが視界が酷くぼやけていて余りよく見えない。瞬きを繰り返した所で結果は同じ。
「どうしたの?」
そうか。僕の身体は……なら、悔いを残さないように余生をしっかりと過ごしていこう。それが僕に与えられた人生なんだ。
覚悟を悟った僕は身体全体を起こし、何故か正面に悠々とした背中が特徴的な人物に声を掛ける。
「ご苦労。これで俺の悔やみはエイジのお陰で果たせたな」
「ミナト兄さん。あなたの仇は討ちました。僕と母さんは無事に生きています」
「そうか……結果的に俺は最後の最後まで奴に遊ばれていたのか。全く俺はとんでもない戦争を仕掛けたもんだ。お前で良かったよ……生きていたのが」
本当はあの戦いの時点でミナト兄さんを力では無く言葉だけで精一杯説得するべき所を僕は力でミナト兄さんから真意を聞かされた。だから、僕はやっぱり後悔している。
僕の憧れるミナト兄さんとは仲の良い兄弟として居たかったから。
「そろそろ、時間だな。お前はお前が居るべき居場所へ行ってこい。ここはお前が居座る場所では無い」
冷たく良い放つのはこの場所にいつまでもしがみつかないで欲しいから。照れ屋なのかは分からないけど絶対に真意を敢えて教えないミナト兄さんは僕の肩を軽く叩く。
「ありがとう、お前は俺とは違う生活を送っていけ」
振り向くとミナト兄さんは一度も見せた事の無い安らかな表情を見せると視界は再び元の場所に舞い戻る。
「エイジ、ぼうっとしているみたいだけど……大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だよ!それよりも!」
今だけは前を向いて生きていこう。他の事は頼れる仲間に後を託せば良い。僕は僕のやりたいように自由に過ごしていけば良い。
でも僕のやり方は端から見れば無責任過ぎると言う意見すら出てくるかもしれない。だけど、そうだとしても……
「エイジ!」
母さんは僕の姿を見えた瞬間に僕の身体を抱き締める。しばらくして落ち着くと母さんは僕から離れて、スノウの顔を見るや否やニコニコと微笑んだ表情で挨拶をする。
「初めまして、エイジの母マリー・ブレインです。あなたが確か……」
「ス、ス、スノウ・ローゼンです!今日は宜しくお願いします!」
「エイジ兄さん。スノウさんは随分と緊張なされていますけど……大丈夫でしょうか?」
「腹減りました。なんか食べたいです」
「あら、それなら私がさっき作ったサンドイッチを食べましょう!私が作ったからかなり美味しいわよ!」
これからはこの光景をしっかりと覚えていこう。それが僕の残していく記録だから。
※※※※
「はぁ、あの輪の中には入れないわね」
今のアイツはあの中で生きていくのが一番だ。地上に帰ってお互いに健闘を祈って別れる際には奴の脚は妙におぼついていない様子だったからな。
だからアイツが軍に入らずのんびりと過ごしていくのは予想が出来た。しかし、予想外だったのはレーナ。
こいつはすぐにエイジにピッタリとくっついてしつこいくらいに追いかけ回すと送呈していた……が予想を大きく裏切りやがって俺に付いていくと言い出しやがった!
確かに武器が無い俺には好都合と言えるが、それでもこうなったのはおかしい。一体どういう了見で俺に付いていこうと思ったのか。時間と隙さえあれば聞いてやる。
「残念だな。お前の愛しいエイジはお前以外の女にゾッコンだ。さっさとエイジ・ブレインを忘れて自由気ままにお一人で気楽に生きていけ。その方が楽になれるだろうな」
皮肉混じりに言ってみたが当のレーナは聞いていない様子だな。こいつは上手い具合に人の話を無視しやがる。もうちょっと念を押しておくか。
「しかし、今なら間に合うぞ。お前がこのコソコソと隠れている大きな木から飛び出て無理矢理にエイジの中に飛び込めば……お前にとっては楽しくエイジが苦しむ日々を過ごせる事だろう」
「やらないわよ。私に対するエイジの好感度は斜め下の急降下なんだから、いくらあがいてもエイジはあの糞女にすがり付くわ」
偉く素直な意見を述べたな。当初はエイジとやらにご熱心の様子だった筈なのに……いつからこんなに前向きな姿勢をしている女になったんだ?
「さてと。そろそろ行きましょうか。私がこんな場所でコソコソと見ていたらエイジにばれてしまいそうだわ」
木の影から慎重にエイジの様子を伺って勝手に満足した様子で歩いていくレーナに俺は黙って歩き出すとしばらくしてレーナは笑顔で振り返って指を指す。
「今度からは無表情かつ無愛想なあなたを落とすわ。覚悟しておきなさい♪」
やれやれ、エイジを諦めたものの次の目標は俺になったのかよ。こうなったらレーナに殺されないように身構えておく必要が出てきたな。精々背中には気を付けて関係を保ってやるか。
「無表情と無愛想は余計だ!」
エイジ、これからはお前の好きなように生きていけ。俺は俺で好きに生きてやる。もしアグニカ帝国とやらに不穏な空気が訪れようが俺がぶったぎる。
「なに考えてんの?」
「別に。ちょっと考え事をしていただけだ」
「ふっ、そんな事は後からゆっくり考えれば良いのよ。今は今で楽しみましょう♪」
気楽な奴。まぁ、深く考えて頭を悩ますよりは良いかもしれないな。俺とレーナは互いに隣に立って歩き出す。これから先……どうなるか分からない未来に背を向けて。
FIN
全31話。これにてエイジ・ブレインの物語は終了となります。
実はどうしてもエイジの事については終わらせておきたい部分があり尚且つイスカリアだけは絶対に倒さねばという個人の思いで今回の作品を執筆しました。
ミナト・ブレインの弟として兄が為し遂げる事が出来なかった復讐を果たすという作品。
決着は目に見えている形で終わらせましたが、次回の作品はもう少し展開が斜め上にいく作品に出来れば嬉しいですね。
という事で今回の作品はどちらかというと自分だけの作品になりましたが、いつの日か評価を沢山頂けるような作品を描けたらなと思います。
最後まで拝読ありがとうございます。




