(ⅩⅩⅧ)切り開く突破口
目眩の後に場所は城の入り口へと到着を無事に果たす。正面に放つ大きな城が僕らを出迎えているかのようにどっしりと建っている。見た感じはそれぞれの王国の代表する城のような物だけど城の上には空の色が紫という邪悪な色を解き放っている為、なんだか非常に入りたくない雰囲気を帯びている。
だけどここの奥には恐らくイスカリアとシモンによって心を操られたスノウが今か今かと待ち構えている筈。
「使徒の本丸。まるで魔王の城だな」
城を見上げるザインは圧巻のスケールに興奮していると同時にベルは腕をポキポキと鳴らして底はかと無いやる気を出している。
「ここには俺達が倒すべき相手が待ち構えている。奴等を殺せば世界は取り戻せるぜ」
「簡単に言ってくるな」
一方のレグナスは至って冷静に悟るとベルは負けじと返す。
「やらなきゃ分からねえ」
「そうかよ……まぁ、この戦いに負ければどうなるかは想像に固くないからな。今回限りで使徒の連中には計画共々舞台から降りてもらう」
「怖いわ。エイジ助けて!」
とか言いつつ僕の肩に寄るのは止めよう!今はそういう状況に浸っている場合じゃないからさ!
「レーナ、もう少し真面目に」
僕の注意を全く聞いてくれないんだけど……
「マスター、そういうのは終わってからでも出来ます」
レーナの行為に目を背けられないと感じたクレインは大剣の状態で横槍を入れるもレーナはそのまま実行する。
「今離れたらしばらく会えない感じがするから嫌だわ」
もう無理かもと思ったその時。隣で見ていたレグナスはレーナに向けて一言言い放つ。
「レーナ、今は俺の隣に居ろ。いざというときに頼れないからな」
「……はぁ、仕方無いわね」
レグナスの言葉に若干溜め息を漏らしつつ僕の肩に寄るのを諦めるレーナ。さて何とかレグナスのお陰で切り抜けられた所でいよいよ城への入り口の扉を開けるとしよう。
「皆、行くよ。必ず全員生き残って無事に帰るんだ!」
僕が敵地に突入する前に決意表明のような言葉を大声を上げたら同時に皆の視線は城の入り口を見つめる。さぁ、いよいよを持って……
「突入!この戦いで終わらせよう、全てを!」
全員入り口へと突入すると最初は明かりの無い玄関にたどり着く。なんでこんなに真っ暗なんだろう?これじゃあ何も見えない。そんな真っ暗闇の状態で声が響く。
「ようこそ我が城ディストピアへ。ここでは君達に極上のおもてなしを差し上げよう」
「イスカリア!」
「エイジ、君は私の部屋にたどり着く前に力尽きないでくれよ。私の楽しみが減るのだから」
必ず倒す。世界を自分の欲望のままに支配しミナト兄さんを弄んだイスカリアを!
「良いからその顔を俺達に見せやがれ!全員で血祭りにしてやるよら!」
「ふっ、野蛮なる劣等種風情が……偉大なる私がおめおめと姿を現すわけがなかろう。だが、この舞台劇に無事に突破出来たら相手をしてあげる権利をやろう!無論、エイジには直接私と対峙する権利を差し上げよう!」
一斉に真っ暗闇の部屋に明かりが灯ると、周りにはこの前まで地上で戦いを繰り広げていた犬型の召還獣が吐息を垂らしてこちらをじっくりと見つめている。
僕達は一同に得意とする武器を構えて戦闘態勢に入るとどこから眺めているのかは定かでは無いが甲高くイスカリアは笑う。
「ふはははっ!確か、召還獣は古来私が生まれる古き年に昔の人々が狩りやあるいは使役していたとされる名前だったな。だが、残念ながら我々のコントロール化に置かれている。そして、この城には大陸全ての召還獣を根こそぎかき集めている!さぁ、君達の覚悟とやらを是非とも……我々に見せつけてくれたまえ!」
イスカリアの合図によって動き出す召還獣。僕が先陣を突破しようと試みるもザインに遮られる。
「こんな茶番に付き合うのは俺だけで充分だ。お前達はお先にーー」
ザインは押し寄せてくる召還獣を自前の2丁拳銃で片付けるも余りの多勢にやはり押される形になる。そこにベルがザインの前に出て雷を浴びさせた大剣で一網打尽に振り払う。
「台詞だけは一丁前だが、その調子だとお前さんも簡単にやられるぜ」
「うぐっ、確かに」
「俺が火力係で一網打尽に片付ける!2丁拳銃のお前はサポート係に徹しろ!」
「ベル!」
「エイジとレグナスそしてそこの胡散臭い女はこの場は俺達に任せてイスカリアとかいう源に向かえ!」
ベルがそこまで言うなら……ここは任せる。僕はベルとザインに感謝を述べてから一気に前方へ突入。
それでも立ちはだかる召還獣に痺れを切らしたレグナスは対抗しようとレーナに手を伸ばす。
「手を出せ!こいつらを潰す!」
「たくっ、人使いが荒いわね!無表情かつ無愛想なレグナスの癖に!」
ぶつぶつと文句を言いながらもレグナスと手を繋いで黒い剣へと姿を変えて力を与えるレーナ。
黒い剣を構えたレグナスは僕よりも先に前方へと跳躍して物の見事に跡形も無く一瞬で消し去る。
「ちっ、雑魚は寝てろ」
レーナの力もあるとはいえ、やはりレグナスは相当の実力を持っている。魔法を使っている姿を見た事が無いけど剣などの物理に対してはかなりの実力者だと言って良い。
「ちょっと!もうちょっと丁寧に扱いなさい!」
乱暴な扱いに我慢出来ないレーナは怒りの声を表に出すもレグナスは聞いていないのか進む先に現れる召還獣を無表情で乱暴に切り裂く。
対して僕はレグナスの後についていく形で残りの残っている召還獣に手加減無しでぶった切りながらしばらく走っていくと、途中で戦いの舞台らしき部屋に突き当たる。
部屋は透明なガラスに月が綺麗に照らされており、なにかと広い構造をしている。
そしてそこには一人の十字架を着飾る薄い青髪の男が今か今かと待ち構えており僕達を発見するや否や自前の変わった形をしている大剣を突き出す。
「待っていたぞ。エイジ・ブレイン……そして力を無くしたお前を」
「残念だが俺にはこの力でリベンジ出来る力が今ここにある。こいつでお前を断罪する!」
いつになく無表情だったレグナスが感情を剥き出しにして黒い剣を構えると薄い青髪の男は興奮冷めやらぬ表情を浮かべて高らかに笑い出す。
「ははっ、私を倒す為に再び武器を取ったか。全く持ってお前には飽きないな!」
不思議な形をした大剣を自由自在に振り回し、髪を逆なでて高速で僕の存在を無視して獲物を捉えた表情でレグナスに突っ込む。一方のレグナスは一瞬だけ後ろに下がって一気に突進する。
互いが互いを殺し合う戦いに僕は助太刀する事さえ出来ない。ならば、この場もレグナスに任せるべきだ。
「ボヤボヤしている暇はねえぞ。お前はさっさと奥に待ち構えているイスカリアを倒せ!俺は俺でやるべきを事を成し遂げてから跡を追う!」
「無事に居てね。じゃないと、たっぷり甘えられないから」
レグナス、レーナ。ありがとう……僕はレグナスと薄い青髪の人物の斬り合いを上手く掻き分けて奥の部屋へと進む。
※※※※
「喰らえよ、ライトニング・ボルト!」
ベルの両手から凄まじく帯びた稲妻を多勢に無勢の召還獣に放ち一気に倒していく。
一方のザインはあちこちに銃弾を予め待機させておき、準備が出来た段階で待機を解除させると銃弾が一斉に空からの射撃を実行する事でベルのお陰で痺れて動かなくなっている犬型の召還獣の数は順調に減らされていく。
数が減っていく事に危機感を覚えた鳥型の召還獣や肉食型の召還獣はそれぞれ特有の鳴き声でザインとベルの鼓膜に攻撃するも、ザインは更に手に保持している2丁拳銃で満面の笑みで自由自在に軌道が変わる弾丸を盛大に放ちベルは負けじと背中に背負っている大剣に大量の稲妻を帯びさせた状態で襲い掛かる敵を簡単にそして容赦無くはたき落とす。
そんな中、生物ながらに怯えを知った召還獣が背後を振り向いて逃げ出そうと試みるも一人の人物が呟いた一言で簡単に弾け飛ぶ。
この一瞬の攻撃にはさすがのザインも黙る結果となってしまう。
「なんつう力だ。マジ物の強さだわ」
「あいつ、簡単に消し去りやがったな」
名前を名乗らない人物は盛大に両手で拍手する。
「お見事お見事!さすがは下の地上を上手く切り抜けた連中というだけはありますね」
「お前さんは?見た感じ、さっきまで俺達にアナウンスしていた野郎には思えないが」
「シモン。劣等種に名付けられた忌々しき名前ではありますが無ければ色々と不便なので仕方無く、この名前を名乗る事にしています」
名前を名乗った直後にシモンの手から武器が召喚される。武器はザインの扱っている銃とは大分形が違う禍々しい銃と紫色の鋭利な鋭い剣を手に交差して身構える。
「では、君達には想像に難くない程の死に至らしめる地獄を味わっていただきましょう。目的物のエイジ以外は不要なるゴミなのでね」
「俺達がゴミ?ふざけんなよ……お前達の存在こそがゴミ以下の存在なんだよ!」
シモンの言葉に怒りを露にするザイン。一方の隣でシモンの言動に落ち着いていた表情で見つめていたベルもザインの言葉に便乗する。
「シモン、お前には即刻消えてもらうぞ。この世の中の為にもな!」
二人の言葉を聞いても非常に清々しい態度で話を聞いているシモンは鼻で笑う。
シモンは現時点で負ける筈が無いと確信しているからだ……自分は二人よりも実力を遥かに越える存在。そんな自分がこんな奴等に負ける事は絶対的に無いと。
「二人まとめて来なさい。どちらも私が丁寧にその未熟な精神を粉々に捻り潰して差し上げましょう」
灰色の長く伸ばした髪を横に振り上げて、手で軽く挑発するシモンにザインは両手に構えた2丁拳銃の照準をシモンの顔面に捉える。
「上等だ!後でお前の泣き顔をたっぷりと眺めさせてもらうぜ!」
意気揚々とやる気を出すザイン。それに対しベルは稲妻を浴びさせた大剣を更に自身のルナの力で浴びさせて強化してから矛先をシモンに突き出す。
「覚悟しろ!俺達二人がまとめてお前を倒す!」
「ふっ、そういうのは負けのフラグなんですよ!」
シモンは交差している銃と剣を両手に下ろして合図を送ると今まで後ろにじっと待機していた召還獣が一斉に群れをなして動き出すとベルとザインも覚悟を決めた表情で群れに突撃していく。
全てはこの世の中を狂わしている使徒の存在を終わらせる為に。




