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卑怯で狡猾な三等兵の日常  作者: 堕罪惡醒夢
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第1話 「異世界ものはもううんざり」

「……ここは、どこだ?」

気づくと私は見渡す限りの周囲を青い草原のど真ん中にいた。


自分が元いた世界とは別の場にいることに気づき、膝をついて上半身を倒しながら地面を叩く。

「ああ!わかった!ここは異世界だ!!ちくしょう!!!」

「もう異世界ものなんてありふれてるのに!まさかこんな陳腐な展開になるなんて!」


何度も何度も地面を叩いた後で、少し冷静になり体を起こす。

「そもそも…なんで異世界なんかに……うっ!」

突如として嫌な記憶が蘇り、手を額に当てて苦痛で顔を歪ませる。

「そうだ…確か、幼なじみに告白して振られて、5時間くらい公園で泣きじゃくってたんだった……よく考えたら、こんな世界はもう嫌だぁ!って心の中で200回くらい叫んだかもしれない…」


とすると、私がこうして異世界にいるのは神様が願いを叶えてくれたからだろうか?

そこまで思ったところで、再び屈み込み、地面を叩く。

「なんで…なんでそっちの願いを叶えちゃったんだよ…恋愛成就の方叶えてよ……!」

行き場のない憤りを地面にぶつける。

幼馴染みは負けフラグってのは本当だったのか...


私の名前は「滝山たきやま 富世とみよ」、どこにでもいる普通の高校生....を名乗るのはあまりにもおこがましい底辺のような男だ。

身体は小さく、頭は悪く、プライドもない劣悪で醜悪な地を這う屑であり、性格は歪んでいて性根は捻じ曲がっている下衆で外道な息をする生ゴミ、それが私だ。


「まさかこの私が、異世界に行くことになるとは……」

痛くなってきたので地面を叩く手を止める。

こういう異世界転移とか転生はもっと優れた人間に与えられる試練だとばかり思っていた。

異様にメンタルの強い女子高生とか、引きこもりのくせに身体は鍛えてる男子高校生とか。


「底辺は滅多に異世界に行けないのか、行ってもすぐ死ぬから物語にならないかのどっちだ……?」

自嘲気味に疑問を口にしたところで、答えはどこからも帰って来ず、そよ風が通り過ぎるばかりだ。


「それにしても… 」

膝をつけたまま体制を立て直して自分の手の掌を見つめる。「この体のままか……」

低身長、虚弱、不細工etc....欠点を挙げたらきりがない。


「これがせめて美少女だったり、魔王だったり、スライムだったり、蜘蛛だったりしたら幾分生きる気力も湧いてくるのに……」つぶやきながら深い深いため息をつく。


「ああ…もうなんか生きるのが嫌になってきた……私みたいな人間の屑が異世界でやっていけるわけがないじゃないか……ああ…もう嫌だ……」

「絶望した!!」叫びながら天へと両手を突き上げる。

「もう嫌だぁ!何もかも!死にたい!死んでしまいたい!あぁ!!!」


ある程度吐き出したあと、背後に人の気配してゆっくりと振り向くと、すぐそばに大柄の厳つい顔をした山賊風の男が2人、にやにやと笑いながら見下ろすように立っていた。手には武器のようなものを持っている。


(ああ……)

私は実感していた。どうやら神様は、叶えて欲しくない願いの方を現実にしてくれるようだ。

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